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ランニングの効用と楽しみ方!メンタルヘルスにも効果あり

新緑の季節などに自然の中で行うランニングは想像しただけでいい気分になりますし、実際に健康増進に役立つとされています。実際、自然の中でのランニングにはどのような効果があるのか、そのような効果は室内では得られないのか、このような疑問に答える研究が行われていますので紹介したいと思います。

ランニングはメンタルヘルスにも効果がある

写真:ランニング

5kmの距離を好きなスピードで走る「パークラン」がランナーの主観的な幸福感にどのような影響を与えるか、という研究がオーストラリアで行われました。96の会場で15万人以上のランナーが参加した研究です。その結果、参加者全員がメンタルヘルスに対する効果に満足していました。性別で比較したところ、パークランによる健康満足度は女性よりも男性で高いこと、男性がパークランには社会との繋がりを高めるベネフィットがあると考えるのに対し、女性はそのことよりもメンタルヘルスへの効果の方にベネフィットを感じることがわかりました*1。このように、性差はあるものの、パークランがランナーの主観的な幸福感を高めることは間違いないようです。

また、難治性の気分障害患者さんに、最初は0.5kmから始め12週間かけて5kmまで距離を延ばす週2回のランニングを行ってもらい、その効果を検討した研究では、健康に関係する生活の質が改善しただけでなく、認知機能にも明らかな向上を認めたと報告されています*2。うつ病患者さんを対象に6ヵ月間、週2回のランニングセラピーの効果を検討した研究では、呼吸機能やBMIに加え、ランニングを始めて3ヵ月後にはうつ病の状態も改善したと報告されています*3

このように、ランニングは体の健康だけでなくメンタルヘルスにとっても有効と言えそうです。

バーチャルリアリティを活用した室内でのランニングの効果とは

今ではさまざまな分野で活躍するバーチャルリアリティですが、この技術を導入したトレッドミルではランナーが目の前に現れる走路の景色を選べるようになっています。この点に着目し、選んだ画像によってランナーへの影響がどのように違うかを検討した研究があるので紹介します。
この研究では自然の景色の静止画、自然の景色の動画、音楽や映画など好きなエンターテインメントの3種類の画像を選び、それを見ながら1回20分のトレッドミルランニングを3回行い、走行距離、心拍数、幸福、不安、落胆、怒り、興奮、5つの感情の状態を評価しています。その結果、好きなエンターテインメントを選んだグループは、他の2つのグループよりも走行距離が長く、心拍数が多いという結果が得られました。感情の状態については3つのグループとも怒り、落胆、不安が低下する一方、興奮が上昇していましたが、幸福については自然の景色を選んだ2グループの方が好きなエンターテインメントを選んだグループよりも上昇していました。このように、同じ時間量のトレッドミルランニングを行っても眼前の景色によって現れる効果に違いがあるようです。
幸福感を求めるなら自然の景色を、体を鍛えるなら好きなエンターテインメントの画像を選んで走るのがよさそうです*4

板倉先生ワンポイントアドバイス

運動が健康の維持・増進に大切であることがわかっていますが、走るのは苦手だという人も多く、歩くことがすすめられています。体力があればランニングも良い効果が知られています。パークランの研究で明らかにされてきましたが、多くの人が集まって自分のペースで思い思いに走ったり、歩いたりする行動が、精神的健康に良い効果のあることが確かめられてきました。運動強度と筋力の向上とは関連がみられますが、運動する環境によっても身体に及ぼす効果には違いがみられます。楽しい気持ちで、美しい景色を見ながら、何人かと一緒にできるといいですね。

■参考文献

  • *1:Grunseit A, et al. BMC Public Health 2018; 18: 59
  • *2:Keating LE, et al. BMJ Open Sp Ex Med 2019; 5: e000521
  • *3:Krusdijk F, et al. BMC Psychiatry 2019; 19: 170
  • *4:Yeh HP, et al. Int J Environ Public Health 2017; 14: 752
公開日:2021/03/15
監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生