脳梗塞は再発しやすく、後遺症の影響で寝たきりや要介護の原因になりやすいので、治療を受けている人は自分の判断で薬をやめず、毎日飲み続けましょう。最近は、不整脈のひとつである心房細動になる人が増えていますが、脳梗塞リスクも高まっている可能性があります。心房細動と脳梗塞との関わりも含めて、(公財)心臓血管研究所 所長の山下武志先生に解説していただきました。
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冬は脳梗塞に注意すべきといわれます。寒くなると、血管を収縮させるなどして体温調節が行われますが、一方で血の流れが悪くなって動脈硬化により血液がつまりやすくなります。
血のかたまりができやすい動脈硬化や心房細動などが原因で起こる脳梗塞に注意が必要になります。
長嶋茂雄さんやサッカー・元日本代表監督のオシムさんは、心房細動を起こして不整脈により心臓がふるえて血液がよどみやすくなった結果、心臓内に血のかたまり(血栓といいます)が作られ、血流にのって流れて脳の血管をつまらせたことで心原性脳塞栓症(脳梗塞のひとつです)を発症しました。一命をとりとめても、いまだに後遺症と闘っています。
1970年代は脳卒中(脳梗塞は脳卒中の一種です)が死亡原因の第1位でしたが、最近は低くなっています。とはいえ超高齢社会なので、「麻痺やしびれで動けなくなった」、「会話できていたのに、ろれつが回らない」といった後遺症により、介護が必要な人が増えている可能性があります*1。
厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」によると、要介護度別の介護が必要となった原因で、脳卒中が第2位(18.4%)ですが、 寝たきりと考えられる要介護度5を見ると、脳卒中は第1位で3割を占めていました(表1)。
要介護度 | 第1位 | 第2位 | 第3位 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
総数 | 認知症 | 18 | 脳血管疾患(脳卒中) | 16.6 | 高齢による衰弱 | 13.3 |
要支援者 | 関節疾患 | 17.2 | 高齢による衰弱 | 16.2 | 骨折・転倒 | 15.2 |
要支援1 | 関節疾患 | 20 | 高齢による衰弱 | 18.4 | 脳血管疾患(脳卒中) | 11.5 |
要支援2 | 骨折・転倒 | 18.4 | 関節疾患 | 14.7 | 脳血管疾患(脳卒中) | 14.6 |
要介護者 | 認知症 | 24.8 | 脳血管疾患(脳卒中) | 18.4 | 高齢による衰弱 | 12.1 |
要介護1 | 認知症 | 24.8 | 高齢による衰弱 | 13.6 | 脳血管疾患(脳卒中) | 11.9 |
要介護2 | 認知症 | 22.8 | 脳血管疾患(脳卒中) | 17.9 | 高齢による衰弱 | 13.3 |
要介護3 | 認知症 | 30.3 | 脳血管疾患(脳卒中) | 19.8 | 高齢による衰弱 | 12.8 |
要介護4 | 認知症 | 25.4 | 脳血管疾患(脳卒中) | 23.1 | 骨折・転倒 | 12 |
要介護5 | 脳血管疾患(脳卒中) | 30.8 | 認知症 | 20.4 | 骨折・転倒 | 10.2 |
出典:厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査の概況」(注:熊本県を除く)
さらに、厚生労働省平成29年患者調査によると、脳卒中患者さんの入院期間が平均80日弱と他の病気に比べて長いことが指摘されています(図1)。患者さんの医療費負担だけでなく、家族が介護する負担が大きくなることも問題です。
図1:病気別に見た入院日数の平均
出典:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」
不整脈のひとつ、心房細動がある人では、そうでない人に比べて脳梗塞になるリスクが約5倍になるとの研究結果があるので、脳梗塞になる前に心房細動と診断されていた患者さんは多いともいわれています*2。
心房細動の患者数は推定100万人で、最近は増加傾向といわれています*3。
普段から、下記のような症状をチェックしましょう。
脳梗塞は、血の固まりが脳の血管をつまらせる病気です。心房細動による脳梗塞予防に関しては、血のかたまりをできにくくするための抗凝固薬(凝固は血液が固まるという意味)があります(表2)。
製品名 | 一般名 |
---|---|
ワーファリン | ワルファリン |
プラザキサ | ダビガトラン |
イグザレルト | リバーロキサバン |
エリキュース | アピキサバン |
リクシアナ | エドキサバン |
脳梗塞は血のかたまりが脳の血管をつまらせる病気です。だからこそ、治療を受けていて血のかたまりをできにくくする薬を飲んでいる人は、自分の体調がよい、あるいは症状や後遺症が改善しないからといって、自分の判断で薬をやめてはいけません。毎日飲み続けましょう。
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