台風が近づいたとき、梅雨どきや秋雨前線の時期は体調が悪化し、頭痛やめまい、関節の痛みなど、いわゆる「天気病」に悩まされることがあります。薬局ちぇあーくらぶのセミナー*1で東京八重洲クリニックの岡寛先生は「気圧の変化と身体症状(疼痛・めまい・疲労)の改善法」のテーマで講演しました。天気病を発症するメカニズムについて、歴史上の人物、邪馬台国の女王・卑弥呼の逸話も踏まえて紹介します。
目次
岡先生の講演によると、平均気圧は1013ヘクトパスカルですが、台風や爆弾低気圧が通過するときは気圧が急激に下がり、その前後で体調が変化することがあります(図1)。
図1:台風の接近、通過、通過後の中心気圧の変化
出典:2020年8月27日開催・薬局ちぇあーくらぶセミナーの岡寛先生の講演「気圧の変化と身体症状(疼痛・めまい・疲労)の改善法」の資料
気候変動が影響する病気や症状は「天気病」、「気象病」といわれます。気圧などによって痛みが起こる「天気痛」という呼ばれかたもします。
天気痛で代表的なのは頭痛です。頭痛以外で気圧や湿度の変化が影響して起こる病気・症状は以下のようなものがあります。
歴史上の人物には、天気痛に関するさまざまな逸話があります。たとえば、邪馬台国の女王・卑弥呼は、頭痛持ちで天候の変化を誰よりも早く察知できたといわれています。
この時代は、雨が降らずに日照りが続くと農作物は枯れてしまい、死活問題になります。そのため、豊作になるよう雨乞いをする儀式は民衆にとって重要な祭事でした。
そこで、卑弥呼は頭痛と気圧の変化を誰よりも早く感知できたので、食生活に甚大な影響を及ぼす干ばつを恐れる民衆に向かって「もうすぐ雨が降る」と予言していたとします。もしそうだといたら、女王としてあがめられていたことに納得できます。
気候変動と体内の変化はどのように起こるのでしょうか。
視覚(眼)と聴覚(内耳)で感知した気圧の変化などの情報が脳に伝わると、体内を調節する自律神経系の交感神経が興奮し、体のバランスを崩れていくメカニズムです。
頭痛や関節の痛みは、交感神経から痛み神経が刺激されて発症します。めまいは内耳のリンパ液が過剰になって内耳圧が上がり、内耳の血流が低下して発症します(図2)。
図2:気圧の変化による天気痛やめまいの発症メカニズム
出典:2020年8月27日開催・薬局ちぇあーくらぶセミナーの岡寛先生の講演「気圧の変化と身体症状(疼痛・めまい・疲労)の改善法」の資料
卑弥呼のように、低気圧が近づくと頭痛を感じる人は多いのではないでしょうか。では、台風や低気圧がやってくる前から対策はないのでしょうか。
岡先生は、線維筋痛症の患者さんは気圧の変化に敏感で台風が通過するようなときは、事前に薬を服用すること(トラベルミン®やドラマミン®など)もアドバイスします(表)。
表:低気圧に備えるための薬の服用例
出典:2020年8月27日開催・薬局ちぇあーくらぶセミナーの岡寛先生の講演「気圧の変化と身体症状(疼痛・めまい・疲労)の改善法」の資料
片頭痛やめまいなどに普段から悩まされている人は、台風や爆弾低気圧などが通過する前後はつらい思いをしていませんか。この機会に医療機関や薬局に相談しましょう。
次回は、片頭痛にスポットを当てて紹介します。
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