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がん検診で早く発見すると高い生存率、企業も経済効果 広島県のがん対策支援事業から

がん検診は、個人のためだけではなく、会社にとっても大きなメリットがあります。検査を受けてがんを早く発見できれば、発見が遅れた場合に比べて休職中の給与、休職中の代行人件費などを削減できるからです。企業と連携して総合的な支援事業を推進してきた広島県の取り組みから、平成24年度調査をもとにがんを早期発見できた場合と発見が遅れた場合における企業への経済的影響を検討した当時の結果が参考になるので紹介します。

がんを早く発見して治療を受けることで10年生存率が高い

がんが見つかって、まだ早期なのか、すでに進行しているのかどうかの目安として、病期(臨床病期ともいいます)と呼ばれる指標があります。
病期を簡単に言うと、がんが体の一部分にとどまっているのか、がんが転移して体の広い範囲に進行しているかどうかについて、進行順にステージⅠ~Ⅳと分類されます。
全国がんセンター協議会(通称:全がん協)のウェブサイトには、加盟施設の協同調査の結果として、さまざまながんに関して病期ごとの5年生存率と10年生存率が示されています。大半のがんでは、早期のステージⅠでは生存率が高い可能性があり、がんが進行しているステージⅡ、Ⅲ、Ⅳになるほど生存率が低い傾向にあることがわかります(全がん協のウェブサイト)。

がんを早く発見するために、県や市の自治体はがん検診を推進しています。胃がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がんの5つは自治体の助成制度を活用できます。詳しくは厚生労働省や自治体ホームページを参照してください。

がん検診で早く発見できた場合とできなかった場合で企業負担額は年450万円の差

広島県は全国に先駆けて企業と連携し、予防啓発、検診受診率の向上、治療と仕事の両立支援、患者会や支援団体の支援など総合的なサポート事業に取り組んできました。平成26年度から「Team(チーム)がん対策ひろしま」を立ち上げて支援事業を推進しています。
がん検診を定期的に受けて、がんを早く見つけて治療を受けることは本人のことだけではなく、会社にも有益なことです。
そこで、広島県は平成24年度に企業を対象に調査を実施した結果をもとに、がんを早く発見することがもたらす経済的メリットをシミュレーションにより数値化した資料があります。当時のシミュレーション結果は、現在も参考になるので以下に紹介します。
従業員1000人規模の会社に勤める人が大腸(結腸)がんと診断されたことを想定し、がんを早期発見できた場合、できなかった場合で企業に及ぼす経済的な影響を試算したところ、会社の年間における負担額に450万円の差が見られました(図2)。

図:がんを早期発見できた場合と発見が遅れた場合における企業への経済的影響 図2:がんを早期発見できた場合と発見が遅れた場合における企業への経済的影響1
図:がんを早期発見できた場合と発見が遅れた場合における企業への経済的影響2

図のポイント

  • がん発見後の治療費:がんを早期発見できた場合は15万円、早期発見できない場合は444万円
  • 休職中の給与:がんを早期発見できた場合は1ヵ月休職11万円、早期発見できない場合は8ヵ月休職100万円
  • 休職中に他の人が仕事を代替わりする費用:がんを早期発見できた場合は14万円、早期発見できない場合は55万円

出典:経営者の皆様だからこそできること~がんになった従業員に対する“就労支援”のすすめ~(平成26年2月、発行:広島県健康福祉局がん対策課)
*シミュレーション結果は、広島県が平成24年度調査結果をふまえて、がん早期発見がもたらす経済的効果を検討した当時の資料。

上記の図2から実質コストを見ると、会社側は検診の費用負担がありますが、早く発見することにより、がん発見後における企業の負担額は少なくなることがわかりました。

病気を理解して働きやすい環境を整えることが個人にも会社にも価値が大きい

以上から、がん検診で病気が見つかった従業員の就労を支援することや、がん検診を早く受診するよう促すことが、企業には大きな経済効果をもたらすことが推測されました。
何よりもがんを早く見つけることが重要です。検診や検査を受けてがんを早く見つけられたら、長期入院にならず通院しながら復帰できる可能性があります。
そのうえで、がんになった従業員の病気を理解して、働きやすい環境を整えてあげることが、個人にとっても、会社にとっても生み出される価値が大きくなります。
2人に1人ががんになるといわれています。個人も企業も将来の人生設計のことを、よく考える時期ではないでしょうか。

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公開日:2020/11/04