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子供も親も運動不足、緊急事態宣言中の幼児の歩数調査結果で明らかに

子供の運動不足は、心身の発育・発達に影響するので注意が必要です。というのは、乳幼児の時期の身体活動量は、大人になったときに意欲的な心をもつことや社会への適応力などにも影響するからです。そこで、順天堂大学と花王株式会社はコロナ渦の影響として、緊急事態宣言中の2020年5月に幼児と母親の1日当たりの歩数について実態を調査しました。その結果を紹介します*1

緊急事態宣言中の幼児の歩数は平常時より2~6割減

順天堂大学と花王株式会社は、就学前の幼児(1~5歳)と保護者(母親、27~47歳)を対象に、緊急事態宣言中に当たる2020年5月1日~14日における幼児と母親の1日の歩数、その影響(保護者のストレスなど)、家庭内の過ごし方の工夫などについて調査しました。
母親41人、幼児53人の調査結果を見ると、1日の歩数は1~2歳の幼児(30人)は平均7600歩、3~5歳(23人)の幼児は平均6702歩(1~5歳は平均6938歩)で、平日と休日との差は見られませんでした。
本調査の結果における3~5歳の平均歩数は、過去の研究結果(平常時)に比べておおよそ平日は6割、休日は2割少ないことが明らかになりました(図1)。

図1:コロナ・緊急事態宣言下と平常時(過去研究)における幼児(3~5歳)の1日平均歩数の比較 図1:コロナ・緊急事態宣言下と平常時(過去研究)における幼児(3~5歳)の1日平均歩数の比較

出典:順天堂大学・花王株式会社の記者会見(2020年9月2日)の資料「歩数調査からみた、緊急事態宣言下の幼児の活動実態」

保護者に関しても、緊急事態宣言中の調査結果のほうが平均歩数は1~2割ほど少なくなっていました。外出制限や通園自粛の影響により子供が外で遊べず(運動不足)、生活リズムが崩れやすくなり、ストレスを感じる傾向にあることもわかりました(図2)。

図2:緊急事態宣言前と比べて子供の様子について困っていること保護者のストレス 図2:緊急事態宣言前と比べて子供の様子について困っていること保護者のストレス

出典:順天堂大学・花王株式会社の記者会見(2020年9月2日)の資料「歩数調査からみた、緊急事態宣言下の幼児の活動実態」

工夫次第で幼児の歩数が1日1万歩以上の家庭あり

一方で、「おうちでお子さんと過ごすときに工夫している」と回答した保護者の平均歩数は多い傾向にあり、幼児も同様の傾向を示していました。
家庭内の工夫として子供が片付けを手伝うことや、室内の跳躍器具で遊ぶことが歩数増につながった事例があり、幼児の1日当たりの歩数が1万歩以上の家庭もありました(図3)。
工夫していた保護者と子供(1歳8ヵ月)の14日間の推移が参考になります(図4)。

図3:体を動かす工夫をしている人の平均歩数と具体的な工夫例 図3:体を動かす工夫をしている人の平均歩数と具体的な工夫例

図4:家のなかで活動を工夫していた保護者と子供(1歳8ヵ月)の14日間の歩数の推移 図4:家のなかで活動を工夫していた保護者と子供(1歳8ヵ月)の14日間の歩数の推移

出典:順天堂大学・花王株式会社の記者会見(2020年9月2日)の資料「歩数調査からみた、緊急事態宣言下の幼児の活動実態」

幼児期から体を動かすことは意欲や気力、社会適応力や状況判断力などに影響

今回の調査結果から、緊急事態宣言中の1日当たりの歩数が少ないことが明らかになりました。外出自粛の影響がある一方、家庭内でも工夫次第で身体活動量を増やすのは可能で、子供の歩数が1日1万歩を超えていた家庭がありました。
文部科学省の幼児期運動指針によると、幼児の時期から体を動かすことは運動能力だけでなく、意欲や気力、社会への適応能力や状況を判断する認知的能力などにも影響することが記載されています(参考:幼児期運動指針:文部科学省)。
例えば、幼児期になると友達と群れて遊ぶようになり、そのなかでルールを守ってコミュニケーションを図っていくことで、協調性ある社会適応力を養うことにつながります。
遊びかたの工夫については役立つサイト*2があるので参考にしましょう。

公開日:2020/10/21