ウィズコロナ時代、社会が激変するなかで「がん治療と仕事の両立」という課題をどう解決すべきでしょうか?「意外にも、がん治療・仕事との両立支援は企業にもプラス作用をもたらします。コロナ時代の企業生き残りのヒントさえ与えてくれます」と卵巣がんサバイバーの大塚美絵子さん。広島県が平成24年度の企業調査結果をもとに就労支援による経済効果を検討したシミュレーションが現在も参考になると言います。どういうことでしょうか?
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医療の進歩でがん患者の5年生存率は65%にのぼり、現在は人生の充実、とりわけ仕事と治療の両立が大きな話題となっています。では、ここ数年で大きく前進したのでしょうか?
「シンポジウムなどが盛んな割には、成果がもう一つ」と大塚さんは辛口です。
広島県は、全国に先駆けて企業と連携し、予防啓発、検診受診率の向上、治療と仕事の両立支援、患者会や支援団体の県民向けイベント支援など総合的がん対策支援事業に取り組んでいます。平成26年からは「Team(チーム)がん対策ひろしま」を立ち上げて活動しています。
支援事業の1つとして、がん就労支援やがん予防検診対策において優秀な成果をあげた企業には、知事の表彰を行っています。
広島県は平成24年度に企業への調査を実施し、その結果をもとに治療と仕事の両立支援がもたらす経済的メリットをシミュレーションにより数値化して示しています。当時のシミュレーション結果は現在でも参考になるので、さっそく見ていきましょう。
まず、がん患者さんは休職や時短勤務、フレックス勤務を活用することや、朝の通勤ラッシュを避けて出社することが必要な時期があります。
そこで、患者さんにヒアリングして、企業が患者さんの病気を理解して、就労環境を整えてあげれば、がん患者さんは治療を受けながら働くことで、会社に貢献することが可能な治療・勤務スケジュール例を作成しました(図1)。
図1:治療を受けながら働くことで会社への貢献が可能な治療・勤務スケジュール例
出典:経営者の皆様だからこそできること~がんになった従業員に対する“就労支援”のすすめ~(平成26年2月、発行:広島県健康福祉局がん対策課)
*シミュレーション結果は、広島県が平成24年度調査結果をふまえて、がん治療と仕事の両立支援の経済的効果を検討した当時の資料です。
「がん患者さんが働くと労働効率が落ちる」、あるいは「生産性が下がって、企業に経済的な負担がかかる」といったイメージがありますが、本当にそうなのでしょうか。
そこで、広島県は企業の経済面への影響について、平成24年度調査結果をもとにシミュレーションして数字で示しています。当時のシミュレーション結果を概説します。
例えば、会社の課長さんががんになったと仮定し、企業が就労支援をする場合、しない場合で課全体の1年間における経済的影響を数値化してシミュレーションしました。
就労支援の有無により、課全体が1年間に生み出す付加価値の総額を見ると、就労支援をするほうが、しなかった場合に比べて約82万円のコスト削減ができます。
就労支援については、本人の体調を考えて療養のための休職期間や短時間勤務、フレックス勤務などを段階的に導入するなど、柔軟に働く環境を整えることが重要です。
会社が就労支援を推進することで休職などは短期間で済み、しばらくすると通常勤務に戻ることができる可能性があります。下記の図2を参照してください。
図2:企業の就労支援の有無による経済的影響を数値化したシミュレーション結果
出典:経営者の皆様だからこそできること~がんになった従業員に対する“就労支援”のすすめ~(平成26年2月、発行:広島県健康福祉局がん対策課)
*シミュレーション結果は、広島県が平成24年度調査結果をふまえてがん治療と仕事の両立支援の経済的効果を検討した当時の資料です。
広島県が平成24年度調査結果をもとに実施した当時のシミュレーション結果をふまえて、ウィズコロナ時代の働き方改革について大塚さんに聞きました。
ウィズコロナ時代のがん就労支援について大塚さんからのメッセージです。
広島県が平成24年度調査結果をもとにシミュレーションから明確に数値で示した当時の結果を見ると、会社がサポートするほど患者も企業もWin Winになることが一目瞭然です。 ウィズコロナ時代において、企業は両立支援がどのようなメリットをもたらすのかを今一度考えることが重要ではないでしょうか。
2012年に卵巣がんを発症したサバイバーさんです。ご自身は、がんと闘った経験から、リンパ浮腫(むくみ)対策などの弾性ストッキングやスリーブなどを販売するお店をしています。
がん患者さんを支えるために相談会や講演といった、さまざまな活動に励んでいます。
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