最近は、オンラインで交流を深める機会が増えています。医師や患者会、支援団体が全国の患者さんをサポートするために、YouTube公開ライブなどの活動が活発になってきました。そこで、がんを経験したかたへ有益なオンラインサポートの取り組みを紹介します。
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ネットで蔓延するフェイク情報や都市伝説を見極めて正確な知識を持ってもらうために、宮崎善仁会病院消化器内科・腫瘍内科の押川勝太郎先生(NPO宮崎がん共同勉強会理事長)がYouTube動画「がん治療の虚実」で連日にわたり配信しています。
押川先生は、医療者と患者さんとの間に生じるギャップを埋めて、よりよい環境にしたいと考えてYouTuber活動に取り組んでいます。ネット情報の真贋をテーマにした解説のほか、公開ライブではリアルタイムに相談を受けて回答してくれるようにしています。
たとえば、慶應義塾大学医学部腫瘍センター/胃がん患者会・認定NPO法人希望の会/NPO法人宮崎がん共同勉強会の3組織の共催による「慶應義塾大学医学部市民講座&NPO法人宮崎がん共同勉強会東京支部会)」でQ&A「公開セカンドオピニオン」が開催されています。
毎週日曜日20時からは、飲み会の気軽な雰囲気で、がんについてのあらゆる疑問に回答する「がん相談飲み会」も開催しています。
グリーンルーペは、「知るのは、こわい。知らないのは、もっとこわい」をコンセプトに、まだ病気になっていないかたへの啓発活動を積極的に取り組んでいます。
YouTubeチャンネルでは、2019年11月3日のイベントでのコラボライブから、「体温が高いとがんになりにくい?」、「子宮頸がんはワクチン以外で防げるがんはありますか?」など17項目のQ&Aを閲覧できます(関連記事:食道がん公開セカンドオピニオンで悩み解決、専門医・薬剤師・患者会がコラボライブ)。
最近では、2020年9月26日に「食道がんスペシャル 食道がん患者支援団体設立記念」のテーマで、公開セカンドオピニオンをオンラインで開催しました(一般社団法人食道がんサバイバーズシェアリングスが設立。ウェブサイト「食がんリングス」)。YouTubeチャンネル「がん治療の虚実」などでも閲覧できます。
また、専門医による「がんと心のケア」や、アイドルグループとのコラボライブ「今だから考える『がん』のことon the web:What We Can Do Now for the FUTURE !!」、美容ジャーナリスト・山崎多賀子さんとのコラボライブなども閲覧できます。
グリーンルーペ・プロジェクトは、さまざまな活動を展開しています。
2020年10月以降は、現役の大学生を交えてオンラインのワークショップを開催する予定です。ワークショップは、思春期~若年成人のがん経験者さんが抱える課題を共有して、病気への理解につながることを目的としたものです。〔15~39歳くらいの世代をAYA世代といいます(AYA:Adolescent&Young Adult)〕。
また、がんになることへの不安がある人や、がんと告知された直後の人は、根拠の乏しい情報に辿り着くという事例が多いのが問題です。
そこで、正しい知識を持ってもらうための冊子や動画を作成しているところです。監修として、国立がん研究センターがん対策情報センター長・若尾文彦先生、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授・勝俣範之先生にご協力いただいて作成しています。
胃がんの分野では、日本胃癌学会との協同で「動画で知る胃がんの全て」を制作しています。
オンライン交流会も随時開催しています。がんであっても、がんではなくても、境界線を越えて語り合って理解が深まることをコンセプトにしているもので、医療者も多く参加している会合「GANNOMI」などです。
いずれも、コロナ禍による生活や活動の変容を考えた取り組みです。がんへの不安をなかなか相談しづらいコロナ禍の状況だからこそ、発信こそ必要と感じたことが活動の起点です。
ウェブ公開生放送番組がんノート*は、「『あなた』か『わたし』のがんの話をしよう」をコンセプトに、がんと共に生きる人たちのトークライブを配信しています。
家族や友達、仕事やお金、恋愛や結婚といった日常にフォーカスしたリアルな体験談を届けています(これまでの開催は100回以上です)。
2020年春からは、みなさんに少しでも有意義な時間を提供できるよう、YouTubeチャンネルでSTAY HOME企画「今だからこそ がんノート」を配信してきました。
現在は、トークライブのショートバージョン「がんノートmini」を録画公開の形で行い、毎週木曜日21時からは生配信のトークライブ「がんノートnight」を行なっています。
がんノートnightでは、テーマ別にゲストや視聴者との「ゆる~いトーク」が展開されますが、病気と診断されたとき、闘病中、治療後それぞれの時点でどのように感じていたのかや、その他の生活面でのリアルな情報を知ることができます。また、放送中に疑問に思ったことやキーワードなどもその場で検索し放送されるので、よりリアルタイムな情報を得ることができます。
がんノートnightは、患者さんや家族のかただけでなく、友人のかた、がんのことを知りたいと思うすべての人に有意義な情報が満載です。
がんフォト*がんストーリーは、がん患者さんや体験者さん、家族や友人、そして医療者が応募した写真と言葉で、「がんの奥にあるあたたかい心」を届けるサイトです。
これまでは、ウェブサイトやイベントで写真を公開していましたが、YouTubeでみなさんの作品をピアノの音とともにお届けする「オトフォト・プロジェクト」で、投稿された写真をビデオで紹介されています(写真の閲覧・応募)。
オトフォト・プロジェクトは、医師・医療者の日本サルコーマ治療研究学会とのコラボ(肉腫という疾患の啓発を目的)、患者会イベント(肺がん患者の会「ワンステップ」など)のコラボも進めています。今後は、がんフォト*がんストーリー主催イベントも予定しています。
また、がんになっても安心して暮らせる社会の構築に向けて活動する全国がん患者団体連合会〔加盟は44団体(2020年7月17日現在))では、がん教育や就労関連など加盟団体を中心にオンラインのサポート情報があります。
上記以外にも、患者会や支援団体でさまざまな取り組みが行われています。
コロナ渦により通院が必要な患者さんが受診窓口が絞られたケースや、不安を感じながら通院するケース、相談する機会が少なく悩むケースが多くなりましたが、オンラインのサポートがあります。正しい情報を得られる機会、不安を和らげる機会、つながりを創る機会としてオンラインのサポートをぜひとも活用しましょう。
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