頻尿や尿もれなどの排尿障害やデリケートゾーンのかゆみ、においなどに悩んでいるものの、医師に相談しづらく受診しない女性が多いようです。症状をそのままにして年を重ねても、生活の質はますます損なわれていきます。本当にこれでよいのでしょうか。GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)という疾患名を提唱し、セルフケアと医療機関の受診を推進する藤田医科大学/山王メディカルセンターの太田博明先生が日本抗加齢医学会セミナー*1で講演した内容を紹介します。
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女性は40歳をこえた時期からホルモンのエストロゲンの分泌が低下します。そうすると、排尿障害(尿路症状)やデリケートゾーン(性器)の問題に悩まされることがあります。
最近、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群、GSMはGenitourinary Syndrome Menopauseの略)という疾患概念が世界に遅れること4年にて、産婦人科関連の学会(日本産科婦人科学会・女性医学学会)で提唱されています。
出典:Climacteric. published online 28 Jul 2020など*2
GSMの悩みの実態について、太田先生らは一般女性にアンケートを実施しました。
調査に関しては、医師に相談しづらいデリケートな問題なので、医療機関に受診した人を対象に限定せず、より実際の悩みを聞き出すために、顔の見えないウェブアンケート形式で40歳以上の1万人を対象に予備調査、うち約1000人に詳細な調査が実施されました。
その結果から、症状について見ると、以下のような特徴がわかりました。
また、GSM症状ありと答えた人のうち、8割が「気になる」としていましたが、対処法がわからず医療機関に受診していない人が大半だったのです。
アンケートで医療機関に受診していると回答した人について見ると、診療科は婦人科が5割程度で最も多く、次いで泌尿器科が3割弱などでした。
治療については、軟膏やクリームの外用療法や全身・局所のホルモン療法を受けていた人がほとんどでしたが、満足度は十分とはいえない回答が少なくありませんでした。
太田先生によると、デリケートゾーン(フェミニンゾーンともいいます)の治療にはホルモン治療やレーザー治療などがありますが、治療に先立って尿や体液による皮膚・粘膜への刺激を避けるようにして、清潔に保つことが重要です。
清潔にするには排尿の仕方、尿のふき取り、皮膚・粘膜を守る洗いかたなど、基本的な日常のケアを励行するだけでも、GSMの症状は軽減できるとのことでした。
排尿障害(尿路の症状)やデリケートゾーンの悩み(外陰、膣の症状)は、人には相談しにくいものです。年齢だからといって、あきらめて放置すると生活の質が悪化します。
人生100年時代といわれています。しかし、生活の質を損ねたままで長い人生を送るというのは、果たして幸せでしょうか。
また、性器症状の病名が外陰・膣萎縮症、一方で排尿障害は頻尿や切迫性尿失禁といった過活動膀胱が用語なので、それぞれ用語に限定したケアにとどまりやすいのが課題です。そこで、さまざまな症状をケアするための包括的な疾患名として「GSM」が提唱されました。
女性にとってはGSMのデリケートな症状を相談しにくく、その悩みは潜在化しがちです。
人生100年時代を謳歌するためにも、GSM症状に気付いたら、医療機関に相談することや適切なセルフケアなどに努めることが重要です。