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スマートダイエットとスマートエクササイズで体重管理して病気を予防 キャンサーフィットネス・スマートライフ講座2

人生100年時代、年をとっても要介護になりたくない。そのためには、栄養バランスを考えた食事管理にプラスして、運動を習慣化することが重要です。継続するのはなかなか難しいといわれますが、キャンサーフィットネスの健康講座・ヘルスケアアカデミー*1において筑波大学名誉教授・田中喜代次先生の講演「がん患者のための体力増進法」で紹介されたスマートダイエットとスマートエクササイズは役立つものです。

まず栄養バランスを考えた食事管理、次に減量効果が現れてから運動することが重要

田中先生の講演では、まず栄養バランスを考えた食事管理、そして減量効果が現れてから筋力・体力の増強を図る運動を習慣化することが推奨されていました。
エビデンスについては、まず田中先生らが中年の肥満女性を対象に栄養バランスを確保したダイエットに運動をプラスする健康づくり教室を開催すると、開催前は459人のうちメタボ該当は67人(約15%)でしたが、3ヵ月後には442人中8人と2%に減少していました。
また、1983年に教室に参加した肥満の1014人を3グループ(運動のみ、ダイエットのみ、スマートダイエット+運動)に分け、3ヵ月後の体重や血圧、脂質の変化を比べました。
その結果、体重と血圧(血圧)、悪玉のLDLコレステロールはダイエット+運動のグループで低下度が最も大きく、次いでダイエット単独のグループでした。
体重は、ダイエット単独のグループでは7.2 kgの減少、ダイエット+運動のグループでは9.3 kgの減少、そしてHDLコレステロールには運動効果が出ました(図1)。

図1:肥満者1014人への3ヵ月間の運動、ダイエットによる介入効果
(体重、血圧、HDL・LDLコレステロール)
図1:肥満者1014人への3か月間の運動、ダイエットによる介入効果(体重、血圧)
図1:肥満者1014人への3か月間の運動、ダイエットによる介入効果(HDL・LDLコレステロール)

出典:キャンサーフィットネス・ヘルスケアケアアカデミー(2020年2月18日開催)での田中喜代次先生の講演「がん患者のための体力増進法」の講演資料

上記の結果から、体重や血圧、血液検査の結果はダイエット単独でも一定の効果は見られます。しかし、中年から高齢になると転倒・骨折リスクのロコモティブシンドロームや筋肉が少なくなるサルコペニア、認知症やうつ病などのリスクが高くなっていきます。
2020年4月からフレイル健診(フレイルは「虚弱な」という意味)が開始されたように、フレイルを予防する、あるいはフレイルから健康回復することが重要視されています。
健康診断の検査値を下回っても、全身の筋肉、骨、血管系、脳(心)まで良くならないと意味がありません。だから、食事管理にプラスして運動することが大事なのです。

スマートダイエットは目標カロリーに応じて4つのカテゴリから栄養バランスよく食品を選ぶ

筑波大学発のスマートダイエットとスマートエクササイズを以下に紹介します。 スマートダイエットは、BMI>40の人は30前後、BMI>30なら25前後、BMI<27なら22~24前後を目標にするといった、無理のない食事管理(食習慣改善)法です。 食品を4群に分けて、食品は1品目を1点80 kcalとし、1日の目標カロリー数にあわせて各群からバランスよく食品を選ぶ四群点数法(女子栄養大学方式)を取り入れています。

図2:スマートダイエット(四群点数法) 図2:スマートダイエット(四群点数法)

出典:キャンサーフィットネス・ヘルスケアケアアカデミー(2020年2月18日開催)での田中喜代次先生の講演「がん患者のための体力増進法」の講演資料

楽しんでスマートエクササイズを習慣化しよう

スマートエクササイズに関しては、まず多数の運動のなかから、自分に合ったものを選択し、4つの運動カテゴリに分けて日ごろのエクササイズメニューを考えます(図4)。

図4:スマートエクササイズの4つのカテゴリ(田中ら、2018* 図4:スマートエクササイズの4つのカテゴリ(田中ら、2018*)

出典:キャンサーフィットネス・ヘルスケアケアアカデミー(2020年2月18日開催)での田中喜代次先生の講演「がん患者のための体力増進法」の講演資料〔*:健康づくり(公益財団法人健康体力づくり事業財団)2018;486:18-19,健康づくり2018;487:40-41、「健幸華齢のためのスマートライフ」(サンライフ企画、2019)、予防医学2019;60:35-40〕

スマートエクササイズの4つのカテゴリは、食事の献立にするとわかりやすいです。
主食は4群の有酸素運動、主菜は2群のレジスタンス系、副菜①は3群のストレッチ・リラクセーション系、副菜②は1群のコーディネーション系と考えて、週当たりで献立として組み立てると、バランスよい運動習慣につながります。

スマートエクササイズを習慣化する鍵は「楽しめること」です。好きな運動を楽しみとして取り組むことは脳の神経細胞が活発に働くのでストレス緩和にもつながります。
ただし、やりすぎはご法度です。膝痛、半月板損傷、疲労骨折、運動性貧血、不整脈などが現れることがあるので、食事管理も運動もほどほどにしましょう。
次回は、過剰なダイエットや運動はかえって体に良くないこと、栄養バランスの良い食事管理にプラスして適度な運動を継続するだけで、暦上の年齢(満年齢)に比べて活力年齢や体力年齢のほうが若返る可能性があること、がん患者さんにおけるエビデンスなどを紹介します。

  • *1:一般社団法人キャンサーフィットネスは健康講座のヘルスケアアカデミーやリンパ浮腫患者スクールを定期的に開催しています〔リンパ浮腫患者スクールは年間12回・専門医15人による20講座、2020年度スケジュール(PDF)〕。
    2020年2月18日のヘルスケアアカデミーは、筑波大学名誉教授/日本介護予防・健康づくり学会会長/筑波大学発研究成果活用企業株式会社THF代表取締役・田中喜代次先生が、「がん患者のための体力増進法」のテーマで講演しました(参考書籍:日本スポーツ協会 スポーツ医・科学研究プロジェクト「健幸華齢のためのスマートライフ」)。
公開日:2020/08/19
監修:筑波大学名誉教授/日本介護予防・健康づくり学会会長/筑波大学発研究成果活用企業株式会社THF代表取締役 田中喜代次先生、
一般社団法人キャンサーフィットネス