新型コロナウイルス感染症の影響により「医療機関への定期通院がとだえがち」といった話があります。そこで、電話での診療やビデオ通話などによる診療(オンライン診療)が注目されています。従来は再診の患者さんだけでしたが、2020年4月13日以降は、初めての診療でも時限的・特例的に健康保険で電話診療やオンライン診療を受けられます。スリーワンクリニック名誉院長の板倉弘重先生に解説していただきました。
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「いまは通院をひかえぎみ」、「待合室や街中での二次感染が心配」といった話が聞かれます。しかし、受診を控えて薬を飲むことを中断してしまうと、病気がますます悪化する可能性があることを忘れてはいけません。
新型コロナウイルス感染症は持病(基礎疾患)を持つ患者さんは感染・重症化リスクが高いといわれています(関連記事:新型コロナで運動不足と肥満・メタボに注意しよう!)。
そこで、患者さんが安心して受診できる環境を整えるために、電話やビデオ通話(スマートフォン、カメラ付きのタブレットやパソコンなど)を介したオンラインで医師の診察を受ける方法が注目されています。
従来、初めての診療(初回診療、初診といいます)は対面の受診が原則で、オンライン診療は通院歴3ヵ月以上など一定要件がありましたが*1、2020年4月13日から変わりました。
医師の判断のもと、初診や再診を問わず、時限的・特例的な対応として、さまざまな病気に対して電話やオンラインにより健康保険で診療を受けられるようになりました。
つまり、わざわざ医療機関まで出向かずに受診が可能になりました。薬に関しても、薬局に出向かずに自宅に送ってもらえます(自宅に配送できない薬もあるので、後ほど説明します)。
電話やオンラインで健康保険の診療を受けたいときは、まずはかかりつけ医などに相談しましょう。かかりつけ医で対応できない場合や初めて受診する場合には、以下の厚生労働省ホームページの医療機関リストから最寄りのクリニックや病院などに連絡します。
最近、オンラインに関わる手続きで詐欺が横行しているようです。引っかからないためにも、まずは「かかりつけ医」、次に「厚生労働省のホームページ」などの順に医療機関を選ぶこと、スマホやパソコンでオンライン診療アプリを使うときは医療機関のホームページを確認することを心がけましょう。患者さんは、厚生労働省のサイトを確認するほか、受診先の医師に対して資格証のHPKIカード(厚生労働省で認められている電子証明書)を確認することもできます。
医療機関にとっては、受診歴がない患者さんの診療は、患者さんの症状を把握しにくいケースや、患者さんをしっかり診察するために対面診療が必要なケースがあり、オンライン診療の可否は医師の判断が必須となります。
また、受診歴がない人の初回診療では、電話だけでは本人確認ができず、薬を受けとるために他人のふりをする「なりすまし診療」や診療代未払いを被る可能性があります。
そのため、初回診療(初診)は、医師の判断が必須で電話やオンラインによる時限的・特例的に可能という制限的なニュアンスが用いられているのです。
医療機関からは、保険証やマイナンバーカード、免許証などの提示が求められることがあります。
診療予約で医療機関に電話するときは保険証の情報などを医療機関に伝えます。ほかに、医療機関のホームページからオンライン診療アプリを介して手続きをするケースもあります。
診察料以外に、保険外のオンライン診療アプリの情報通信システムの利用料やサービス料、薬の配送料などがかかります。予約時に支払い内容も確認しましょう。
受診して支払い手続きが終わると薬が処方されますが、薬についてはどうなるのでしょうか。
院内処方の場合、医療機関から宅配便などにより配送されます。院外処方は、患者さんが薬局に取りに行く、あるいは薬局から配送してもらう方法があります。
薬の配送に関しては患者さんが指定した薬局に医療機関が代理で処方せん情報をFAXなどで送信してくれます。
薬を配送してもらったときに、電話などを介した薬剤師の服薬指導も受けられます。
ただし薬の処方日数に制限があることや処方できない薬があることなど、知っておきましょう。
患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は7日間を上限とするとともに、麻薬及び向精神薬に加え、特に安全管理が必要な医薬品(いわゆる「ハイリスク薬」)として、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤等)の処方をしてはならない*。
出典:「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」
(令和2年4月10日事務連絡)(PDF)
出典:診療報酬情報提供サービス
(厚生労働省保険局運営、特定薬剤管理指導加算及び薬剤管理指導料「1」の算定対象となる薬剤の一覧に関する情報が掲載されています)
薬に関しては、電子お薬手帳を活用するのもおすすめです。
最近では電子お薬手帳の普及もあり、スマホやパソコン、タブレットで薬の情報が得られるので、複数の医療機関に通院している場合は薬の飲みあわせに関する情報や、家族で薬関連の情報を共有するのに役立ちます。
電子お薬手帳のアプリによっては、薬を取りに行くときは、スマートフォンで処方箋を撮影して画像を送るなど、薬局で待つ時間を少なくして薬を受け取ることも可能です。
通院を中断すると病気が悪化する可能性があるため、通院が困難な人はオンライン診療を活用することも考えましょう。受診を考えている人は、まずはかかりつけ医などに相談、あるいは厚生労働省の医療機関リストを参考に受診先を選びましょう。