疾患・特集

職場の熱中症に注意、建設以外の製造業などでも多く発生

暑くなると熱中症への注意が必要です。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響でマスクや防護シールドを着用する機会が増え、「マスク熱中症」なども問題になっています。近年、熱中症への意識が高まる一方、死傷者数は増加傾向にあり、建設業以外の職場でも熱中症の事例が増えている可能性があります。

熱中症への意識が高いにもかかわらず増加傾向

職場で発生した熱中症の実態として、厚生労働省の令和2年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」で2009~2019年の事例が報告されています。
それによると、職場で発生した熱中症による休業4日以上の人と死亡数(死傷者数)は、2011~2017年まで400~500人台でしたが、2018年は第1位、2019年は第2位でした。
気温35℃以上では熱中症に注意するからか、事例が多いわけではないとの指摘もあり、熱中症への意識が高いことがうかがえる一方、死傷者数の増加傾向は気になるところです(表1)。

表1:職場における熱中症の死傷者数(2009~2019年) 表1:職場における熱中症の死傷者数(2009~2019年)

※2019年に関しては2020年1月15日時点の速報値です。今後、修正の可能性があります。
出典:厚生労働省・2019年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)

建設・製造・運送・警備業などさまざまな職種で熱中症が発生

職場別に熱中症の死傷者数を見ると、過去5年間(2015~2019年)では建設業と製造業が4割を占めていました(図1)。2019年では最も多い業種は製造業でした(表2)。

図1:熱中症による死傷者数の業種別状況(2015~2019年) 図1:熱中症による死傷者数の業種別状況(2015~2019年)

表2:2015~2019年における業種別の熱中症による死傷者の内訳 表2:2015~2019年における業種別の熱中症による死傷者の内訳

図1と表2の出典:厚生労働省・2019年職場における熱中症による死傷災害の発生状況(2020年1月15日時点の速報値)

製造業の内訳は、食料品製造、造船、紙加工品製造、ガラス・同製品製造などでした。その他では、警備業の交通誘導や、通信業、公園・遊園地、ゴルフ場の事例もあります。

働く人ひとりひとりの体調をモニタリングして未然に防ぐ取り組みが必要

総務省・消防庁の報告から、2017~19年の3年間で5~9月に熱中症で救急搬送された人の発生場所を見ると、第4位は道路工事現場、工場、作業所などでした(図2)。

図2:熱中症による救急搬送状況・発生場所別(2017~2019年)

出典:総務省・消防庁:2019年(5~9月)の熱中症による救急搬送状況

職場における熱中症の発生事例をみると、以下のような原因が考えられます。

  • 暑さ指数(WBGT)の計測や把握の準備をしていないので、作業環境や作業の計画を把握や変更ができていなかった。
  • 離れたところで働いていると、熱中症になった人を発見することや救急搬送が遅れてしまった。
  • 職場において、適切な健康管理を実施していなかった。

職場の対策を啓発するために、厚生労働省は「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開しています。
環境省熱中症予防情報サイトでは、全国6都市における最高暑さ指数(WBGT)と救急搬送数との関係について随時公表しています。2020年4月22日の専門家会議で「熱中症警戒アラート」(仮称)が提案されました。
企業では最近、集団で働く労働環境と個人の体調を管理するためにデジタルセンサーとIoT(Internet of thingsの略)を駆使して、離れたところで働くひとりひとりの体調をモニタリングする取り組みが導入されています。
このような安全な労働環境をつくることが、今後もますます必要とされているのではないでしょうか。

  • *:参考として総務省・消防庁:2019年(5~9月)の熱中症による救急搬送状況の詳細
    参考として総務省・消防庁:2019年(5~9月)の熱中症による救急搬送状況の詳細

■参考

■関連記事

公開日:2020/06/03