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潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さんが就職後の活躍を見据えた働き方のヒントとは?Gコミュニティ

潰瘍性大腸炎やクローン病は働き盛りに発症するケースが多く、仕事との両立が課題です。そこで、患者さんとそのご家族をサポートするGコミュニティ(IBD患者オンラインコミュニティ*1)が、2019年12月に患者さん同士や患者会、専門家などとリアルに触れ合ってもらうために開催した交流イベントから、患者さんが就職後の活躍を見据えた働き方のヒントを得ることを目的にしたセッションについて紹介します。

20歳以降の働き盛りに多い病気なので就労サポートが重要

潰瘍性大腸炎やクローン病(以下、IBD:Inflammatory Bowel Disease)は、原因不明の腸の炎症を伴う病気で、生涯にわたり治療が必要なので国の難病に指定されています*2
現状では、患者数は25万人以上と言われており、最近は右肩上がりで患者数が増加し続けています。20~30代の働き盛りの発症例が多いので、仕事と病気の両立が課題です。
そんな患者さんのサポートのために、同じ境遇にある患者さん、専門家(医師、栄養士、キャリアアドバイザーなど)、関連団体(患者会・関連企業など)が集まるGコミュニティ(IBD患者オンラインコミュニティ)があります(関連記事:働き盛りに多い潰瘍性大腸炎、クローン病、仕事と両立する鍵は?Gコミュニティ)。
Gコミュニティに参加している患者さんから、オンラインだけでなく、リアルに交流できる場が欲しいとの要望がありました。
そこで、同じ不安や悩みを持つ患者さん同士、専門家、患者団体、栄養士、キャリアアドバイザーなどがリアルに触れ合って気軽に交流を深められるイベント「IBDエキスポ*3」が2019年12月14日に開催されました。
イベントでは、患者さんが就職後の活躍を見据えた働き方のヒントを得ることを目的にしたセッションがありました。
潰瘍性大腸炎の20代の患者SOUさん(仮名)、埼玉のIBD患者会の代表の仲島雄大さん、キャリアドバイザーの加藤みつきさんが登壇し、就職活動や就業と体調を両立させるのかなどについて講演し、IBDエキスポに参加した患者さんたちとディスカッションしました。

就職活動で病気のことをうまく伝えるコツとは?

キャリアアドバイザーの加藤さんの講演によると、あるアンケート結果では潰瘍性大腸炎患者さんの約3割が、病気のことを会社に開示しないで就業していました*4
就職活動で「伝え方がわからない」、あるいは「伝えることが怖い」と考える患者さんが少なくないことが考えられます。
加藤さんからは、病気を伝えるときは、安心感を与えられる表現で、また具体的に職場がどのような配慮をしなければならないのかというイメージを企業の採用担当者に与えられることが大切とのアドバイスがありました。
就職面接のときに会社の人事担当が病気のことを詳しく知らない状況で、いきなり病名を伝えられると「このかたは、仕事は大丈夫なのか?長く続けられるのか?」といったことを疑問に思う可能性があるからです。
ストーマを装着した患者さんの転職事例も紹介されました。それによると、ストーマ装着前後の自分の状況など、次の内容を理解してもらえたことが成功の理由とのことです。

  • ストーマを装着する以前は体調が安定せず業務に影響しており、転職せざるを得ない状況になるケースがあった。
  • 面接時はストーマを装着していることにより体調が安定しており、規則正しい生活ができている。
  • 通院に関しては、仕事にはさほど影響せず、有給休暇の取得範囲内でおさまる。

企業の福利厚生などと自分の状況と照らしあわせて検討することも必要

潰瘍性大腸炎患者のSouさんは、大学生時代に就職活動をしていた経験から、当時の状況を紹介してくれました。
Souさんによると、面接時は病気のことを全面に押し出すのではなく、大学時代に取り組んできたことや志望動機を積極的に伝えたとのことです。
また、潰瘍性大腸炎に関しては詳しくは話しませんでした。もともと腸が悪く、入院歴があったことを人事担当者の面接官に伝えました。
質問に答えるだけでなく、就職先候補企業の有給休暇など、福利厚生のことを人事担当者から聞き出したとのことです。
就職活動をこれから行う患者さんに対しては、自分の状況と照らしあわせて、就職先としてマッチするのかどうかを検討することが重要とのアドバイスをいただきました。

自分の症状や体調の変化を理解したうえで会社の身近な人から伝えていくべき

長年にわたりIBD患者さんの就労支援に関わってきた患者会・埼玉IBDの代表・仲島さんは、就業と体調を両立するために、自分の病気の状態を長い時間をかけて観察し、症状が悪化する時の特徴や再発時の体調の変化を理解することが重要との話がありました。
そのうえで、就職や転職の際は自分の病気のことを隠さずに開示するほうがいいと考えているとのことでした。
というのは、就職した後に病気と付き合っていかなければならないためで、定期的な通院やトイレの回数が多いが、業務には支障がないと伝えることで、会社が配慮しなければならないことを伝えることが大事との話でした。
また、会社の全ての人に病気の理解を求めても難しいので、人事や近くで働く同僚から、少しずつ自分の病気のことを伝え、徐々に理解してもらうこともアドバイスされました。
例えば、トイレに行く際にも逆に心配してもらえるような関係性を築いていけるようにすることなどを挙げていました(詳細は、動画「IBD患者の就業に関する実態と課題」:https://gcareglobal.com/ibd-expo/を参照)。

IBDは腹痛、下痢、血便などの症状が悪化する活動期と、症状が落ち着く寛解期を繰り返えすので入退院を繰り返し、高額な薬剤や外科手術が必要なこともあり、日常生活、仕事、そして結婚・出産などのライフイベントにも大きく影響します。
生涯にわたり病気と付き合い、多くの不安を抱えている患者さんのことを理解してもらえる社会になることが求められているのではないでしょうか。

  • *1:株式会社ジーケアがオンラインコミュニティプラットフォーム「G コミュニティ」を運営しています〔登録数:736人 (2020年5月14日時点)〕。
  • *2:潰瘍性大腸炎とクローン病との違いは体内で発症するところです。潰瘍性大腸炎は大腸に炎症が起こり、肛門側から連続性に口側へ広がります。
    クローン病は,全ての消化管に炎症が起こる疾患で、特に小腸,大腸,肛門に起こりやすく、食道や胃に起こることもあります。病変と病変の間に正常な組織が存在(スキップ)することも特徴です。
  • *3:IBDエキスポは、Gコミュニティに参加する患者さんからリアルに交流できる場が欲しいとの要望を受け、患者さん同士、医療者、栄養士、キャリアアドバイザーなどと直接かつ気軽に交流できるイベントとして2019年12月14日に開催されました。患者会のTokyo IBD(http://www5a.biglobe.ne.jp/~IBD/)や埼玉IBD(http://saitama-ibd.org/)、企業も参加しました。
  • *4:ヤンセンファーマ株式会社「IBD患者の就労に関するインターネット定量調査」2018
公開日:2020/05/27
監修:Gコミュニティ(IBD患者さんのオンラインコミュニティ)