疾患・特集

働き盛りに多い潰瘍性大腸炎・クローン病、仕事と両立する鍵は?Gコミュニティ

潰瘍性大腸炎やクローン病は、20~30代で発症することが多く、患者さんの多くが仕事と病気と両立させることに課題を抱えています。そこで、患者さんとそのご家族が、他の患者さんや専門家(医師、栄養士、キャリアアドバイザーなど)、関連団体(患者会・関連企業など)とつながることができるGコミュニティ(オンラインコミュニティ)*1に寄せられた就業に関する悩みや解決の糸口になるアドバイス内容を紹介します。

患者数は推定25万人以上、10~20歳から発症する人が多くなる病気

潰瘍性大腸炎やクローン病は、原因不明の腸の炎症を伴う疾患です(Inflammatory Bowel Disease:IBDと総称されます)。生涯にわたって治療が必要なので、国の難病に指定されています。
患者数は、現在では推定25万人以上で、最近は患者数が右肩上がりに増加し続けています。このことから、潰瘍性大腸炎の軽症患者の一部は国の医療費助成制度(医療受給証)の対象から除外され始めています。
平成28年度衛生行政報告例によると、2016年度末時点で医療受給証の交付を受けている潰瘍性大腸炎の患者さんは16万7872人、クローン病の患者さんは4万2789人です。20歳以降の患者さんが多く、働き盛りの世代に多い病気といえます(図)。

図:年代別に見た潰瘍性大腸炎とクローン病の患者数 図:年代別に見た潰瘍性大腸炎とクローン病の患者数

出典:平成28年度衛生行政報告例〔特定医療費(指定難病)受給者証所持者数,年齢階級・対象疾患別〕

IBDは腹痛、下痢、血便などの症状が悪化する活動期と、症状が落ち着く寛解期を繰り返すなど入退院を繰り返し*2、高額な薬剤や大腸の摘出などの外科手術が必要なこともあり、日常生活、仕事、そして結婚・出産などのライフイベントにも大きく影響します。
そこで、同じ境遇下にある患者さんや家族、専門家(医師、栄養士、キャリアアドバイザーなど)、関連団体(患者会・関連企業など)が集まる患者さんや家族同士が交流できるオンラインコミュニティ「Gコミュニティ」があります。
Gコミュニティは、IBDの臨床経験豊富な消化器専門医や栄養士、キャリアコンサルタントなどから最新情報が提供され、患者さんの悩みに対してアドバイスがもらえる場です。

「IBDだから、この仕事はできない」はありません

Gコミュニティ内のおしゃべり広場では、就職・就労に関して、活発なやりとりがオンラインで行われています。
例えば、「比較的、働きやすい職種、業種というのはありますでしょうか?」という患者さんから質問があり、キャリアアドバイザーから以下のようなコメントがありました。

  • 「体力を酷使しないという点で、事務系職種として働いているかたが多いです」
  • 「営業・技術系職種(自動車整備士)に関しては、事務業務にとどまらず体調とうまく両立させながら働いている人もいるので、自身のご体調を踏まえて働きやすい仕事内容・やりたいことを選んでいる印象があります」

別の患者さんからは、前向きになれるアドバイスが寄せられていました。

  • 「IBDだから、この職種はできないというのはありません。できそうな仕事ではなく、やりたい仕事じゃないと、あとあと続かないと思うので、妥協しないほうがいいかなと個人的には思っています」

働き方にはさまざまな工夫・アイデアを考えよう

また、「働き方に関して工夫していることは?」との質問が寄せられました。質問に対し、歯科に勤める患者さんから以下のような前向きになれるアドバイスがありました。

  • 「トイレの時間を考慮して、余裕を持って臨めるように協力してもらっています」
  • 「勤務先の近くに引っ越したことで、駅のトイレが混んでいて入れなかったりするストレスが軽減しました」

IBDは活動期と寛解期を繰り返す病気で、患者さんは病気と付き合いながら就職や就業をしなければならず、多くの不安を抱えています。生涯にわたって病気と付き合う患者さんに、Gコミュニティのようなサポートの取り組みが必要です。
次回は、Gコミュニティの活動の一環として、オンラインコミュニティ以外で開催されている直接交流のイベント*3から、若い患者さんの就職活動の実体験、キャリアアドバイザー、患者会からのアドバイスなどを紹介します。

  • *1:株式会社ジーケアがオンラインコミュニティプラットフォーム「G コミュニティ」を運営しています〔登録者数:736人 (2020年5月14日時点)〕。
  • *2:潰瘍性大腸炎とクローン病との違いは体内で発症するところです。潰瘍性大腸炎は大腸に炎症が起こり、肛門側から連続性に口側へ広がります。
    クローン病は,全ての消化管に炎症が起こる疾患で、特に小腸,大腸,肛門に起こりやすく、食道や胃に起こることもあります。病変と病変の間に正常な組織が存在(スキップ)することも特徴です。
  • *3:Gコミュニティの活動の一環として、オンラインだけではなくリアルに触れ合って交流を深めるイベント「IBDエキスポ」も開催しています。Gコミュニティに参加する患者さんからリアルに交流できる場が欲しいとの要望を受けて、同じ不安や悩みを持つ患者さん同士、専門家、患者団体(Tokyo IBD:http://www5a.biglobe.ne.jp/~IBD/、埼玉IBD:http://saitama-ibd.org/などがIBDエキスポでブースを出展)、栄養士、キャリアアドバイザーと直接かつ気軽に交流できるイベントで、2019年12月14日に開催されました。
公開日:2020/05/20
監修:Gコミュニティ(IBD患者さんのオンラインコミュニティ)