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ストレスと自分との関わりを知ることが対処法の第一歩!キャンサーフィットネス・ストレスケアの6つの覚書(1)

みなさんは、ストレスとどのようにつき合っていますか?今の世の中には、ストレスになるものがあちこちにあります。がんの罹患や治療は大きなストレスとなりますし、その後にも大小さまざまなストレスが波のように押し寄せてきているかもしれません。こうしたストレスと上手につき合うには、どうしたらいいのでしょうか。そこで、キャンサーフィットネスのストレスマネジメント+ケア講座から6つの覚書を紹介します。

ストレスマネジメント+ケアのための6つの覚書とは

一般社団法人キャンサーフィットネス(http://cancerfitness.jp/)は、がん患者さん向けに、健康講座のヘルスケアアカデミー*1を定期的に開催しています。
がん患者さんのアンケートをもとに、必要とされるテーマからセミナーの内容を考えているので、治療でつらい思いをしている人、治療が終わっても生活に悩んでいる人に役立ちます。もちろん、健康な人がより健康になる耳寄り情報も満載です。

2020年1月18日開催のヘルスケアアカデミーでは、がん・感染症センター都立駒込病院緩和ケア科の栗原幸江先生(マギーズ東京*2でも活動をしています)が「ストレスマネジメント+ケアのための6つの覚書」をテーマに講演しました。

■ストレスマネジメント+ケアのための~6つの覚書~

  • 覚書1:まずはストレスと自分について知る
  • 覚書2:「自分なりの対処法」を知る
  • 覚書3:「ストレスと上手につきあう力」をつける
  • 覚書4:時々、立ち止まり、振り返ってみる
  • 覚書5:「サポート」を見える化する
  • 覚書6:「できていること」を見つける+続ける

6つの覚書から、1~3を中心に、自分なりの対処法を知るコツを紹介します。

ストレスサインとストレスから解放される自分を眺めて俯瞰(ふかん)してみよう

栗原先生は、まずストレスがかかったときに自分がどのように感じて、ストレスから解放されるまでにどのような変化があるのかについて気づいてみましょうとしています。
ストレスとは「圧」です。球形のボールにストレス(圧)がかかるとへこみます。そして圧をかけていたものが離れると、元の球形に戻っていきます。
こころやからだに及ぶ「圧(ストレス)も同じようなこと。自分のこころに、どのようなストレスがかかっているか、そのストレスがどのようにすると軽くなるか、ストレスがかかっているときにはどのような感じがあり、ストレスが軽くなるとどのような感じになるか――こうした一連の流れを俯瞰(ふかん)して、いまの自分はどの状態なのかを理解するようにしましょう。
ストレス反応は個人により違います。自身が客観的な観察者になって、ストレスサインをモニターして「見える化」してみましょう。
「見える化」するために、日常生活における自分のストレスサインを書き出してみたり、たとえば今の気分を色で表してみたり、体の感覚に注意を向けてみたり、いろいろあります。 いろいろやってみて、自分に合った「見える化」を見つけてみてください。俯瞰するまなざしをもつこと、それが大切です。

ストレスと関わるときの自分の状態をありのまま知ることが対処法を見つける鍵

物事の「とらえかた」には自分の心の奥にある信念やそのときの思考が影響することを覚えておきましょう。
例えばコップ半分の水を見た際、「水が半分しかない」と感じる人もいるし、「まだ半分もある」と感じる人もいるでしょう。病院に対するイメージはどうでしょう?「不安が大きくなるネガティブな場所」と感じる人もいるでしょうし、「病気がよくなって、力を取り戻す場所。誰かに役に立てるポジティブな場所」と感じる人もいるでしょう。その時その時の自分の状態によって(気分が落ち込んでいるのか、それとも気分がよくなっているのか)、ものごとに対する解釈も変わってくるものです。
以下は「ニーバーの祈り」です。平静になっているとき、ポジティブで勇気を持てるとき、そして自分の状態をありのままとらえたうえで見極める知恵について示しています。

■ニーバーの祈り(ラインホルド・ニーバー)

神よ、私にお与え下さい。
変えることの出来ない物事を受け入れる平静を。
変えることの出来る物事を変える勇気を。
そして、その違いを知る知恵を。

出典:日本キリスト教団会津若松協会 信徒のブログ
https://aizuwakamatuch.seesaa.net/article/425116141.html

ガーデニング、自然を感じること、つながっている人を考えることもストレス対策

ストレスと上手につきあうためには、心地よい、すっきりする、ほっこりするといった「体の感覚」を目安にしながら、自分にとっての滋養や充電になるような「今の生活を大切にする工夫」が役に立つでしょう。
例えば、しんどいときこそ決まった時間に起床して着替えて生活リズムを整えることや、ゆったり風呂に入る、手触りのよいものを触る、良い香りをかぐ、しっくりする音楽を聴く、心が落ち着くところに訪れる(広い海を見る、浜辺を歩いてみる、山の頂上から眺める、大木にさわってみるなど)といったこともいいでしょう。
セルフケアの工夫として、深呼吸、緊張をほぐす、気分転換、軽い運動、活動と休息のバランスをとることなどが挙げられます。下記は、キャンサーフィットネスのヘルスケアアカデミーの参加者(50人以上)に、実際の生活上の工夫について聞いた結果の一部です。

■キャンサーフィットネス・ヘルスケアアカデミーのセミナー参加者が実践しているストレス対策

  • 思いっきり運動をして汗をかく。ダンスをする。ウォーキングする。ドッグラン
  • 好きな場所、リラックスできるところに行く(落語、演劇、映画、バレエ、美術館に行く、神社や寺の散歩)
  • 土いじり、植物を育てて世話する
  • 自然と親しむ:エネルギーを感じる(光、風、雨、雪、鳥や虫の声)
    自然のなかに身をませてみる
    朝日を浴びて太陽のパワーを感じる
    空を眺め、空の青さに感動する
  • 笑顔になってみる。自分に優しくなる。1日1回、深呼吸をする
  • 好きな音楽を聴く。お風呂にゆっくり入る、肩の力を抜く!(力を入れすぎない)。寝る
  • 料理する。美味しいもの(甘いものなど)を食べる。自分にごほうび!(好きなものを買う)
  • 花を飾る。花のアレンジを週に1度する。アロマテラピー
  • 自分のために時間を先に確保する
  • つながっている人のことを考える。感謝する。ありがとうメッセージを書きまくる
  • ストレスを自覚したら、家族や友人などに伝える(話すことが重要)
  • ストレスに感じることを書いてみる:感情を吐き出す:日記やLINEに文章にする。独り言を言う
    ネガティブなことを自分の目で見てみる
    自分に対して手紙を書く(今の自分をホメる。グチを書く)
    後に読み返して、「観察者」として気づくことを考える
  • もうこれ以上は考えないとストップをかける。判断しない:白か黒か、よい・悪い、好き・嫌い
  • スマホを見る時間を減らす(ネガティブな情報などに振り回らされない)

自分なりに日を決めたとしても、できない日があってもOKにしましょう。がんばりすぎず、自然体を意識して、自分自身に優しく穏やかに接してあげましょう。
ちょうど、マインドフルネスという言葉があてはまります。マインドフルネスの基本として、呼吸を整えること。呼吸をていねいに意識してみましょう。
次回は、マインドフルネスについて、そしてマインドフルネスを意識した呼吸⽅法の⼯夫についてご紹介します。

  • *1:⼀般社団法⼈キャンサーフィットネス(代表理事:広瀬眞奈美さん)は、術後、化学療法中や何年も経過した治療後のかたまで、⾃分に合った運動ができるよう、リハビリ、ヨガ、ダンス、ジムなどさまざまな運動教室を開催しています。インストラクター養成コースを卒業した認定インストラクターが地域密着型で精⼒的にサポートしています。
    さらに、がん患者さんが⽣活習慣を改善する⽅法を習得できる健康管理講座のヘルスケアアカデミーなどもあるので、運動も勉強もできる総合アカデミーとして活動しています。
    2019年は、運動教室は128回、ヘルスケアアカデミーは34講座、⼿先の作業療法となるワークショップ(⾊鮮やかなウィッグスタンドを手作りで製作するワークショップなど)は10回にわたり開催しました。
    2020年は、新たにリンパ浮腫患者スクールを開催しました(第1回は4月18日)。第2回は「リンパ浮腫の基礎知識 解剖と生理」をテーマに、 5月23日(土)13時~16時で開催を予定しています。セミナー予定の詳細→https://coubic.com/cancerfitness21/859131#pageContent
  • *2:マギーズ東京(https://maggiestokyo.org/)
    マギーズ東京は自然を感じられる小さな庭やキッチンがあり、気楽にくつろげる第2のわが家のようなところです。がんの疑いを言われた時、診断を知った時、治療中ならびに治療終了後の生活をどのようにすればよいのか、家族や友人がどのように接するのか悩んでいる時は気軽に立ち寄ってください。予約不要で看護師や心理士などがお迎えして気軽に話ができます。
    今回、講演した栗原幸江先生は、マギーズ東京のヒューマンサポートチームで活動しています。
    住所:〒135‐0061 東京都江東区豊洲6-4-18
    開館時間:月曜日~金曜日の午前10時~午後4時まで、土日・祝日はイベント時のみオープン
公開日:2020/05/13
監修:がん・感染症センター都立駒込病院緩和ケア科/マギーズ東京ヒューマンサポートチーム 栗原幸江先生、一般社団法人キャンサーフィットネス