ネガティブな考え方がグルグル回っていると健康によくありません。どうすればよいのでしょうか。がん患者さんの健康づくりをサポートするキャンサーフィットネスが開催する専⾨医による健康講座のヘルスケアアカデミーから、がん経験者さんはもちろん、病気になっていない人にも役立つ情報として、ネガティブ思考を打破する方法や、心を支えるソーシャル・サポートなど、心のリハビリテーション(以下リハビリ)について紹介します。
目次
キャンサーフィットネス・ヘルスケアアカデミー
(2019年12月14日開催)のセミナー風景
一般社団法人キャンサーフィットネス*1が2019年12月14日に開催したヘルスケアアカデミーで、保坂サイコオンコロジー・クリニック(https://psycho-oncology-clinic.com/)/聖路加国際病院診療教育アドバイザー保坂隆先生が講演した心のリハビリ講座を紹介します*2。
ネガティブ思考が勝手にグルグル回り続ける堂々巡りを打破する対処法として、まず「客観的に自分を眺めるようにすること」がコツです。
というのは、脳はネクラで過去の後悔ネタを探し続けやすく、未来のありもしない心配や不安の種を探しやすいのですが、脳は1つのことしか考えられないという特徴と、臓器の一部なので自分自身ではないことを意識するという2つのポイントがあるとのことです。
まず、脳は1つのことしか考えられないことですが、応用すると、何かに夢中になっていると、その時間帯だけでも堂々巡りから脱却できるのです。
下記は、保坂先生が診療時にアドバイスしている脱却方法となる生活習慣の例です。
・料理
・アイロンがけ
・お風呂のタイル磨き
・引き出しの整理
上記のなかでお風呂のタイル磨きがあります。保坂先生によると、患者さんが「今日は、30㎝四方のタイル磨きだけでもやろう」といった無理のない目標をたてると、意外と夢中になれるとのことです。
診療では、市販の揺らめくキャンドルなどを見つめて、ゆったりした感じで腹式呼吸をするようなマインドフル瞑想を組み合わせた方法も取り入れています。
ネガティブ思考からの脱却方法として、脳というのは心臓や肝臓と同じように自分でコントロールできない臓器の一部として考えることも重要です。そうすることで、脳は決して自分自身ではなく「考える臓器の1つ」と思えると、脳を自分から切り離せます。
客観的に眺めるよう俯瞰して見る、他人事のように自分を見て、「また、こんなことを考えている!ダメねー」と思えるように心がけましょう*3。
心のリハビリとして、患者さん同士が支えあうことやソーシャル・サポートがあります。
ソーシャル・サポートの意味は、身近に寄り添って支援してくれる存在、助けてくれる存在のことをいいます。配偶者、親、子供、兄弟姉妹といった近親者、主治医、職場の同僚、親友、近所の方、趣味の会、患者会や支援団体などが当てはまります。
多くの研究論文から、ソーシャル・サポートがある人のほうが病気になりにくく,病気の経過が良い可能性があり、がん患者さんではソーシャル・サポートがあり、主治医とフランクに話せるほうが長生きする可能性があることが指摘されています。
乳がんに関しては、社会的に孤立している患者さんは、ソーシャル・サポートがある患者さんに比べてあらゆる原因による死亡は1.6倍、乳がん由来の死亡は2.1倍になるとの指摘があります(Kroenke CH, et al. J Clin Oncol2006;24:1105-1111)
保坂先生によると、以下の3つのサポートをしてくれる人が,それぞれ2~3人いることが理想的といいます。さらに、多くの患者さんからは以下のような話があります。
↓
「先生も、看護師さんも、私たちの気持ちを分かってくれようとしているのはよくわかるけど、やはり限度があるみたい」
「やはり、同じ病気や同じ状況を体験した仲間同士のほうが分かり合える。こういったサポートが、病院内や地域で作れないのか?」
現在は、病院内あるいは地域で同じ境遇にある人たちが集まる機会となるサロンを設けているところがあります。ヘルスケアアカデミーを開催しているキャンサーフィットネスもイベントやセミナーでサロンを用意しています。
保坂先生は、ソーシャル・サポートやサロンを取り入れるべきと考え、乳がん患者さんを対象にグループ療法「Smile Ring ALUMNA(ALUMNAは同窓会という意味です)」を聖路加国際病院で実施していました。
引き続き、保坂先生のクリニックでは,乳がんのグループ、子宮・卵巣がんのグループ、ステージ4のグループなど、グループ療法の場を保険診療で,毎月1回ずつのペースで実施しているそうです。
グループ療法の効果は予想以上に広がってきました。というのは、あるグループの新メンバーが深刻な患者さんだったので、保坂先生が「みなさん、今日は新メンバーをサポートしましょう」と言ったところ、グループメンバーは新しいメンバーのためにアドバイスし始め,新メンバーは仲間の言葉に救われたのです。
つまり、患者さんが,別の患者さんのために親身になってサポートする側に回るという,グループ療法による新たな効果がわかったのです。
このように、つらい経験をした患者さんが同じ境遇にいる人を支えて救ってあげたいという思いをもって寄り添うのはピア・カウンセリングといいますが、ピア・カウンセリングすることによって、自分自身も,さらに健康的な心を持つようになるといわれます。
心のリハビリは、自分で工夫することだけではなく、仲間とつながることなど、さまざまな方法があるので、活用しましょう。
次回は、ステージ4をぶっ飛ばすくらい前向きになるためのコツを紹介します。
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