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水虫の蔵元は爪!医療機関で塗り薬の治療を受けて最低1年は継続

水虫といえば、足の水虫が思い浮かばれますが、爪の水虫はちょっとやっかいです。市販の薬や民間療法では治すのは難しいのです。医師が参考にする皮膚真菌症診療ガイドライン最新版(2019年版)では、医療機関で治療しても外用薬では少なくとも1年は継続しないと治る可能性は低いとされています。2020年2月5日に開催されたNPO医師と団塊シニアの会主催のメディアセミナー*1から、埼玉医科大学の福田知雄先生の講演を紹介します。

爪の水虫は市販薬や民間療法では完璧に直すのは難しい

水虫の蔵本は足

福田先生の講演によると、水虫(医学用語で白癬といいます)は、白癬菌というカビ(真菌といいます)による皮膚の感染症(皮膚真菌症)で、足(爪を含む)の水虫は30歳以降から増加し、特に爪の水虫は高齢になるほど多くなります。
国内では水虫は5人に1人(約2500万人)、爪の水虫は10人に1人(約1100万人)と言われています。爪の水虫を放っておくと、爪が厚くなって変形し、痛みや不快感が生じ、他人に爪を見られたくないなどの理由で外出しなくなります。
足の水虫がよくなったといって爪の水虫を放置すると再発し、顔や頭にも感染が広がります。自分だけではなく、家族全員へ伝染することになるのも大きな問題です
爪の水虫は、医療機関で適正な治療を受けるべきとガイドラインに示されています。民間療法は、以下のとおりで効果はありません。

爪の水虫に民間療法は効果があるのか?

酢に足をつける
お酢に水虫の殺菌効果は認められていません。

ニンニク、アロエ、ショウガ汁をつける
効果はありません。

炎天下の砂浜を素足で歩く
水虫菌は固い細胞壁で守られています。
足の裏の皮膚がただれて、すべて剥けるくらいの
ダメージを与えないと、殺菌できません。

ロウソクの雫をたらす
足の裏すべてやけどになるくらいロウソクを垂らさないと殺菌できません。

太陽光線にあてる
論外です。

出典:2020年2月5日のNPO医師と団塊シニアの会主催のセミナー「肌寒い季節でも油断禁物、身近な感染症‘’爪水虫‘’」~皮膚真菌症診療ガイドライン解説~、福田知雄先生の講演資料

病気の状態などによって外用薬と飲み薬を使い分ける治療法が有用です

水虫の薬と言えば、爪に塗る外用薬が思い出されますが、基本は爪の表面から薬剤を浸透させるので、爪甲の下の隠れた部分で菌が増殖している場合は外用薬が効果を発揮しにくくなります。保険適用のない薬効の劣る市販の薬ではなおさらです。
外用薬で部分的に改善しても菌が残っていると再発しやすいので、より強力な治療としては飲み薬が有用です。口から服用して、血流から爪の水虫の病変部に薬効成分を到達させるので効果が期待できます(図1)。

図1:爪の水虫はどうやって治療する?

図1:爪の水虫はどうやって治療する?

出典:2020年2月5日のNPO医師と団塊シニアの会主催のセミナー「肌寒い季節でも油断禁物、身近な感染症‘’爪水虫‘’」~皮膚真菌症診療ガイドライン解説~、福田知雄先生の講演資料

皮膚科の専門医が在籍する医療機関を受診すると、患者さんの状態や爪水虫の病型などに応じて外用薬と飲み薬を選んで処方してくれます。飲み薬と外用薬をうまく使い分けることにより、完全治癒を達成できる可能性が高まります。
医師が参考にする皮膚真菌症診療ガイドライン2019年版では、以下を推奨しています。

ガイドラインが推奨*する爪白癬に対する治療法

CQ3 爪白癬にエフィナコナゾール爪外用液は有用か B
CQ4 爪白癬にルリコナゾール爪外用液は有用か B
CQ5 爪白癬にテルビナフィンの内服は有用か A
CQ6 爪白癬にイトラコナゾールの内服は有用か A
CQ7 爪白癬にホスラブコナゾールの内服は有用か A

A:行うよう強く勧める B:行うよう勧めるC1:行ってもよい C2:行わないほうがよい D:行うべきではない

*推奨度について:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019年版では、爪白癬の治療に関する臨床上の課題〔クリニカルクエスチョン:clinical question(CQ)〕として質問を設定し、それに対するエビデンスレベルによる推奨度を示しています。医師が診療の参考にしています。

出典:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン改訂委員会、日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会雑誌.2019;129:2639‐73)

爪の治療には1年以上かかることが多いので菌が弱る寒い時期も治療を続けよう

水虫は、冬の寒い時期でも油断禁物です。春や夏に症状がひどくなり、冬は菌の活きが悪くなって症状がおさまる傾向にありますが、菌自体は潜伏しています。冬は悪化しないといって、薬を中断して春から夏の暖かくなった時期から薬を再開するのは間違いです(図2)。
爪は1日に0.1㎜のびて、爪が生え変わるまで半年以上かかります。さらに、病気の爪の多くは伸びが遅くなるので、治療は1年以上かかるケースが多いのです(図3)。

図2:肌寒い季節でも水虫には油断禁物

図2:肌寒い季節でも水虫には油断禁物

図3:きれいな爪に生え変わるまでの期間

図3:きれいな爪に生え変わるまでの期間

図2、3の出典:2020年2月5日のNPO医師と団塊シニアの会主催のセミナー「肌寒い季節でも油断禁物、身近な感染症‘’爪水虫‘’」~皮膚真菌症診療ガイドライン解説~、福田知雄先生の講演資料

完治しないまま治療を中断すると、いままで継続してきたことが無駄になります。そうすると、春や夏に再発した時に、一から治療をやり直すことになります。
見方を変えると、白癬菌が弱っている寒い時期こそ治療を積極的に開始するほうが、1年以上にわたって継続しやすいかもしれません。
最後になりますが、水虫の蔵元は爪です。足の水虫が良くなっても爪の水虫を放置しないようにしましょう。再発の原因でもあり、自分のほかの体の部分にもうつります。家族に伝染することが一番の問題です。
皮膚科専門医のいる医療機関で受診して爪の水虫の状態を診てもらい、適正な治療を受けること、春や夏だけでなく寒い時期も含めてしっかりと治療を継続するようにしましょう。

  • *1:メディアセミナーは2020年2月5日に、NPO医師と団塊シニアの会の主催で、埼玉医科大学総合医療センター皮膚科教授の福田知雄先生が、「肌寒い季節でも油断禁物、身近な感染症‘’爪水虫‘’」~~皮膚真菌症診療ガイドライン解説~のテーマで講演しました。
    NPO医師と団塊シニアの会(http://dankai-senior.tokyo/)は、超高齢社会のわが国において、団塊の世代が75歳を超える「2025年問題」を解決するために、患者と医師という立場を越え、明るく活力ある社会にしたいとの思いから設立されました。後世のためにシニア世代がQOLを保ったまま終末期を迎えられるよりよいモデルを提供できるよう活動しています。

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公開日:2020/03/18
監修:埼玉医科大学総合医療センター皮膚科教授 福田知雄先生、NPO医師と団塊シニアの会