水虫といえば、足の水虫が思い浮かびますが、爪の水虫にも注意が必要です。靴を履く時間が長い働き盛りの30歳以降から水虫になる人が増えていくことや、足の水虫が良くなったといって爪の水虫を放置すると家族全員が水虫になるケースに要注意です。2020年2月5日に都内で開催されたNPO医師と団塊シニアの会主催のメディアセミナー*1から、埼玉医科大学の福田知雄先生の講演内容を紹介します。
目次
福田先生の講演によると、水虫は医学用語で白癬(はくせん)といわれ、水虫菌(白癬菌)という皮膚糸状菌(カビの1種で真菌といいます)による皮膚感染症(皮膚真菌症)です(図1)。
患者数については、1999~2000年に足の水虫(爪の水虫も含む)で医療機関に受診した患者さんの調査結果では、足の水虫は国内では5人に1人(人数は2,500万人)、爪の水虫は10人に1人、人数は1,100万人と推定されています*2(図2)。
図1、2の出典:2020年2月5日のNPO医師と団塊シニアの会主催のセミナー「肌寒い季節でも油断禁物、身近な感染症‘’爪水虫‘’」~皮膚真菌症診療ガイドライン解説~、福田知雄先生の講演資料
では、水虫はどの年代に多いのでしょうか。1999~2000年に外来受診した患者さんの調査結果によりますと、30歳以降から発症頻度が高く、高齢になるほど爪の水虫になる人が増えていきます。70歳以降では爪の水虫のほうが多くなります*3。
30歳以降というのは、仕事関係で長時間にわたり靴を履いている世代です。働き盛りの世代に発症しやすく、高齢になっても引き続き悩まされるので早期発見と治療が重要です。
爪の水虫を放っておくと、どうなるのでしょうか。
水虫は日常生活やQOLによくない影響を及ぼします。QOLに関しては、爪の水虫の患者さん93人(平均年齢54歳、男性65人、女性23人)を対象にした調査結果は以下の通りです。
「爪が厚くなるなど変形するので(厚くなるのは肥厚といいます)、爪を切るのが難しい」 | 75% |
「爪の水虫により活動性が低下している」 | 44% |
「痛みや不快感」 | 41% |
「爪を見せたくないので、ジムや温泉に行くのを避けたことがある」 | 18% |
「特別な靴やパッドが必要」 | 10% |
出典:Int J Dermatol.1997:36 754‐6(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9372349)
在宅医療の患者さんや高齢者施設の入居者を調査では、7割が何らかの皮膚の病気を持っており、湿疹や皮膚炎を上回って最も多いのが水虫などの皮膚真菌症という結果でした*4。
高齢者を対象に、足に問題を抱えていることと転倒経験との関係を検討した調査では、爪の肥厚(厚くなることです)や変形がある人では、ない人に比べて過去1年間の転倒経験が多く、転倒への不安が高まり、日常生活の活動性が低下する可能性が示唆されています*5。
また、他の病気を持つ人は要注意です。例えば、糖尿病性の神経/循環障害を基礎疾患に持つ人が爪の水虫を放置すると、そこから二次感染を起こし、一気に壊疽が進み、足の切断に至る可能性があります。
家族に水虫が伝染することも大きな問題です。水虫の皮膚、爪はポロポロと剥がれ落ちやすく、皮膚や爪に潜伏する水虫菌(白癬菌、カビの1種)も一緒に散らばります。
家の中はもちろん、公衆浴場やサウナ、スポーツジムなども感染エリアになります。感染源になりやすいのは、バスマット、スリッパ、床です。室内に散らばった菌は、少なくとも月単位、場合によっては1年以上も生存して潜伏している場合もあります。
水虫菌はずっと居残っているうえ、最短24時間(付着部に傷があれば12時間)で感染が成立する可能性があるのです(図3)。
図3の出典:2020年2月5日のNPO医師と団塊シニアの会主催のセミナー「肌寒い季節でも油断禁物、身近な感染症‘’爪水虫‘’」~皮膚真菌症診療ガイドライン解説~、福田知雄先生の講演資料
前述の1999~2000年に足や爪の水虫で受診した患者さんの調査結果では、水虫になる危険度は水泳だと1.3倍、靴を履くのが8時間以上、ゴルフはそれぞれ1.4倍ほどです。
それに対して「家族に水虫がいる」は、なんと約22倍になり、危険度が高くなると指摘しています*2。
働き盛りの30歳以降、特に爪の水虫の罹患率は右肩上がりに増えていきます。もしお父さんやお母さんが感染源になると、子供も含めた家族みんなが水虫になる可能性があるわけです。
家の中で家族全員が水虫にならないようにするためには、どうしたらいいのでしょうか。自分でできるセルフケアとしては、おもに以下が挙げられます。
水虫は、再発やQOLの低下による日常生活への影響、家族への感染伝播といった問題がありますが、治療により問題は解決します。爪の水虫の治療は自力では改善しにくい場合が多いので、医療機関への受診をおすすめします。
次回は、市販薬がなぜ難しいのか、民間療法の真贋もふまえて紹介します。
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