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ファストフードやタバコは老けやすい?悪玉のAGEsが原因

年齢の割には若く見える人、老けて見える人がいますが、どうしてでしょうか。最近の研究から、糖尿病や骨粗しょう症、がんや肝硬変などに関わる終末糖化産物(AGEs)という物質が体内にたまると、老化が進む、つまり老けやすくなることが指摘されています。アンチエイジングを推進する日本抗加齢医学会*1が2019年11月25日に開催したメディアセミナーで、昭和大学医学部教授の山岸昌一先生が講演した内容から紹介します。

AGEsが糖尿病やがん、老化や寿命に関わる

山岸先生の講演によると、AGEs(終末糖化産物)とは、たんぱく質に糖がくっついた最終産物。体内のたんぱく質に糖がくっつくと、糖尿病をはじめさまざまな病気に関わり、老化が進むといわれています。
つまり、糖化によって体内でつくられるAGEsは、老化の悪玉物質。糖化は、血管、脳、筋肉、皮膚、髪、骨など、体のいたるところで起こるので、いろんな病気や老化に関わっていくのです。

■AGEsと病気、老化との関連

  • メタボリックシンドローム、糖尿病
  • 血管が硬くなる(動脈硬化症)
  • 骨がもろくなる(骨粗鬆症)。筋肉がやせ細る(サルコペニア)
  • 卵子の老化、男性更年期
  • しわ、たるみ、薄毛、しみ
  • 認知症(老人斑:脳のシミ)
  • がん
  • メタボ、脂肪性肝炎、肝硬変

出典:抗加齢医学会2019年度第2回メディアセミナー・山岸昌一先生の講演資料から

AGEsは体内で作られるだけではなく、タバコや食事から取り込まれるので注意

AGEsは体内でつくられるだけではありません。食事やタバコからも取り込まれます。これまでの研究から、糖尿病の有無に関係なく血中のAGEs濃度が高いと直腸がんリスクが上昇することや、赤肉の摂取量増加に伴ってAGEsも体内にたまってしまい、その結果として膵臓がんの発症リスクが高くなることが報告されています*2,3。また、米国の研究では、体内にAGEsが多い人は、握力が低下し、歩行スピードが遅く、心筋梗塞や死亡のリスクが高いことが指摘されています*4

皮膚にたまったAGEsを測定すると

皮膚に蓄積しているAGEsを検査する機器(AGEsリーダー mu、セリスタ、東京)が開発されています。
機器を用いて日本人1万人以上を対象にした検討では、喫煙や運動不足、精神的ストレス、睡眠不足、朝食抜き、甘いものの過食など、生活習慣が歪んだ人ほど、皮膚にAGEsが蓄積していることがわかりました*5
また、オランダの73,000人を対象にした追跡調査では、皮膚のAGEs蓄積が高いほど、将来、糖尿病や心臓病にかかりやすく、死亡のリスクが高くなることが観察されています*6

実際の年齢よりも老けて見える人ほど、早死にしやすい可能性あり

実年齢より老けた人ほど老化が進行しやすいうえ、早死にしやすいといわれます。
皮膚のAGEsが蓄積しているヒトほど、見た目が老けていることや、握力が低下していることも報告されています*7
タバコを吸うとAGEsも取り込んでしまうといわれていますが、双子を対象にした研究では、喫煙者のほうが非喫煙者に比べて老けているとの指摘もあります*8
AGEsは、しわやたるみ、シミ、黄ぐすみなど、お肌の大敵。老化や寿命にもつながるので、若い時期からAGEs対策をすることが重要です。

AGEsレス食品やAGEsをやっつける食品を食べることで対策を

以上の研究結果から、いくらカロリー制限やダイエットをしても、AGEs制限をしないと健康長寿を全うできない可能性があります。食生活習慣の対策としては、以下が挙げられます。

■AGEsを抑える食事・生活習慣

1:食品由来のAGEsを抑える

  • 揚げもの、焼きものを避けて、煮たり、茹でたりしたスローフードを食べる
  • ファストフードと清涼飲料水は×

2:食後の血糖値を抑える

  • 早食いやまとめ食いは×、ゆっくりとよく噛む
  • 野菜、繊維質のものから先に食べる
  • 低GI食品を取り入れる
  • NEAT(non exercise activity thermogenesis: ニート)のススメ

3:食事に由来するAGEsを吸着したり、体内でのAGEs生成を抑える素材を摂取する

  • キチン・キトサン(きのこ、雪国まいたけ、桜エビ)
  • 食物繊維(雪国まいたけ、きのこ、セロリ)
  • 純炭(セルロース炭)・クレメジン(医療用)
  • スルフォラファン(ブロッコリーススーパープラウト)
  • ケルセチン(タマネギの皮)

出典:抗加齢医学会2019年度第2回メディアセミナー・山岸昌一先生の講演資料*9

山岸先生は、AGEsを包み込んで無毒化する新薬を現在、開発中です。
最後になりますが、人生100年時代といわれていますが、キーワードは「年をとっても、いつまでも若々しく」です。
アンチエイジングを達成するために、AGEsレスの食品を食べるようにする、食べかたや喫煙など食生活習慣を改める、自分の体のなかにAGEsが多いかどうかセルフチェックする、など、早めの対策が大切ではないでしょうか。

  • *1:抗加齢医学会のホームページ:https://www.anti-aging.gr.jp/
  • *2:N Engl J Med.2011;364:829-41(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21366474)、Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.2015;24:1855-63(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26404963)、J Clin Endocrinol Metab.2015;100:E739-47(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25695885)、Mol Med.2015;21:S32-40(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26605646)、Int J Cardiology.2015;185:263-8(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25814214)
  • *3:Am J Clin Nutr.2015;101:126-34(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25527756)、Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.2015;24:1855-63(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26404963)、Rejuvenation Res.2015;18:48-56(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25472493)
  • *4:Rejuvenation Res.2012;15:564-72(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22950433)
  • *5:J Int Med Res.2018;46:1043-1051(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29322837)
  • *6:Diabetologia.2019;62:269-80(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30460578)、Atherosclerosis.2018;274:47-53(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29751284)
  • *7:Pharma Medica.2015;33:91-95
  • *8:Plast Reconstr Surg.2009;123:1321-31(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19337100)
  • *9:1と2は、Nutrition.2006;32:157-65
       3は、Mol Med.2006;12:180-4(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17088950)、Nutrition.2016;32:157-65、Pharm Biol.2016;54:2329-39(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26841240)、Curr Pharm Des.2017;23:1135-41(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27774900-phytochemicals-against-advanced-glycation-end-products-ages-and-the-receptor-system/)、Evid Based Complement Alternat Med.2018;9823141(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30174716)、Diabetes Frontier.2018;5:e1-008
公開日:2020/02/19