疾患・特集

「がんは怖い、知らないともっと怖い」グリーンルーペプロジェクト2019

患者さんを支える患者会、支援団体

がんになるのは2人に1人といわれる時代なので、病気と無関係と言う人は病気になる前に知っておくべきではないでしょうか。そこで、「がんのことを、もう少し近くで見ることができるよう、皆さんの虫めがね(ルーペ)になれれば」との思いから、がん経験者さんがグリーンルーペプロジェクトを立ち上げて積極的な啓発活動を展開中です。2019年11月3日に東京・渋谷で開催したイベント、さらに2020年のプロジェクト構想を紹介します。

がんのことを事前に知っているのと知らないのでは雲泥の違い

これまでのイメージとは違って、がんと共に長生きする人が多くなっていますし、2人に1人ががんになる時代といわれます。仕事や生活など多くの課題に直面しますが乗り越えて、将来を考えることが重要なので、より正確な情報を事前に知っておくべきです。
そこで、がんという病気に直面したときに不安や孤独、恐怖を感じた経験があるからこそ、「もっと前から知っておきたかった」、「あのとき、知っていなくて後悔した」「知ることこそチカラになる」を啓発したいと思う経験者さんたちがグリーンルーペ(https://greenloupe.org/)を立ち上げ、みなさんに有益な情報を発信しています。
2019年11月3日に、まだ病気になっていない人や病気のことをまだ知らない子供や学生など世間一般に広く啓発するために、人でにぎわう東京・渋谷でイベントが開催されました。

写真:グリーンルーペのイベントのオープニング

イベントのオープニングでは発起人が開催の経緯を話していました。左から、子供を持つがん経験者コミュニティ一・キャンサーペアレンツ(http://cancer-parents.org)代表理事・西口洋平さん、がん経験者インタビューWEB番組・がんノート(https://gannote.com/)代表理事・岸田徹さん、肺がん患者の会・ワンステップ(https://mail30230.wixsite.com/lung-onestep1)理事長・長谷川一男さん。

がんフォト*がんストーリー(https://ganphotostory.wixsite.com/ganphoto)の「Oto_Photo Project」。患者さんやご家族、医療者などが撮影した写真とメッセージがピアノの音楽とともに届けられました〔パネルの写真は、発起人代表の希望の会(https://npokibounokai.org/)理事長・轟浩美さん提供〕。

がんを経験した若い世代のトークセッションなどを開催

イベントのテーマは「あのとき、知っておきたかったこと」です。セッションは、医師の解説を交えた信頼できるがん情報、公開セカンドオピニオン、がん遺伝子パネル検査、妊娠・出産に関わる諸問題、緩和ケア(終末期ではなく診断直後から受けるものです)などのテーマで催されました。さらに、がん経験者さんの実体験をもとに生活上で役立つことなどをテーマにしたセッションも数多くありました(当日のイベント内容の詳細)。
たとえば、学校や就職、恋愛、結婚、妊娠・出産など多くのライフイベントに巡り合う機会が多い思春期や若年成人の時期〔15~39歳はAYA世代(AYA:Adolescent&Young Adult)〕にがんを発症した人のトークセッションがありました。
闘病しながらライフイベントを通して得られた経験や、病気と共に生きる現在などについて、若い経験者さんが発信する実体験はみなさんに役立つ情報です。
また、病気のつらさや不安を少しでも和らげて、自分らしい生活ができることを支援するアピアランスケア(アピアランスは外見という意味です)のセッションも催されました。

写真:トークセッション「AYAがんって何」

左から、がんノート・岸田徹さん、国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科科長/一般社団法人AYAがんの医療と支援のあり方研究会(https://aya-ken.jp/)副理事長の清水千佳子先生、がん経験者さん3人が登壇しました。
詳細はがんノートYou Tube動画:https://www.youtube.com/watch?v=MVLWnADhcSI〔動画はURLが編集の都合上、変更になる可能性もございます。閲覧できない場合、がんノート-YouTubeの動画一覧(https://www.youtube.com/user/gannotejapan/videos?disable_polymer=1)を参照してください〕。
また、障害を抱えるかたやLGBTの支援団体、がんノートにより、「みんなで生きていこう」をテーマにトークセッションも催されました。*1。詳細はがんノートYou Tube動画:https://www.youtube.com/watch?v=dSe0Wd9GXFc〔閲覧できない場合、がんノート-YouTubeの動画一覧(https://www.youtube.com/user/gannotejapan/videos?disable_polymer=1)を参照してください〕

写真:メイク術のイベントセッション「キレイは生きる力になる!」

がん経験者で美容ジャーナリストの山崎多賀子さん(左)のレクチャーにより綺麗に見せるメイク術のセッション。真中は、メイクモデルとして登壇してもらった、がん経験者さんです。右は司会の希望の会・轟浩美さん。

子供や大学生などとともにがん教育やがん啓発のことを考える

がんになるのは2人に1人といわれる時代、だからこそ「私には無関係」という人に啓発することが重要です。また、最近は小学校からがん教育の場が設けられています。がん教育や啓発のありかたが今後の課題となっています。
そこで、医師、がん経験者、いまはがんになっていない大学生や高校生、小学生が「がん」に対して抱かれやすいイメージについて○× 形式のクイズに答えて、会場の参加者とともに理解を深めて、がん啓発のありかたを考えるセッションがありました。
小学生もステージに登壇しました。小児がんの患児さんをサポートするレモネードスタンド活動の支援団体「レモネードスタンドジャパン」(http://www.lemonadestand.jp/about)の協力により、イベント当日にレモネードスタンド活動をがんばっていた小児がんの患児さんでした。

写真:子供や大学生とがんのことを考えるセッション

右から、司会のキャンサーペアレンツ・西口洋平さん、中央は子供と大学生、左の2人は国立がん研究センターがん対策情報センターセンター長・若尾文彦先生、慶應義塾大学病院腫瘍センター副センター長・浜本康夫先生。「がんを知ることがチカラになる」ことをクイズに答えながら共有したうえで、がん啓発をどのようにしていくべきかについて会場全員で考えていました。

禁煙したい人を応援、心と心を結ぶ「結心」プロジェクト

禁煙を皆さんと考えたい、禁煙する人を応援したいとの思いで、肺がん患者さんを中心に立ち上げられた「結心プロジェクト(https://kessin.net/)」のセッションがありました。
プロジェクトが立ち上がった経緯は、肺がん経験者さんは、本人が経験した病気の苦しみを、まだ病気になっていない人に味わってほしくないと強く切望しているからです。
また、がん経験者さんは、近くで誰かが吸われたタバコの煙を吸いこむ受動喫煙により、病気が悪化するかもしれない、再発を早めるかもしれないと怖く感じています。
ただし、禁煙を無理にすすめると人間関係が悪化するので、ゴリ押しはしたくありません。タバコを吸う人と吸わない人が対立せずに禁煙について一緒に考える、禁煙に取り組む人を応援したいとの思いがあるので、心と心を結ぶ「結心」をプロジェクトにしています。

写真:「受動喫煙NO!~結心~」のイベントセッション

右は、肺がん患者会ワンステップの長谷川さんをはじめ、肺がん経験者さんが登壇して、結心プロジェクトの活動を解説していました。

がんを知ることが生きるチカラ、将来への見通しを持つチカラに

がんと共に生きる時代だからこそ、「がんと診断されたら、どうしょう」、「ネット上にあふれる情報は正確なの?」と思う人、さらに「まだ若いから私には無関係」と思う人も、がんに関する正確な知識を持っておくことが重要です。
そのために、患者さんの経験や病気に関わった経験をもとに前向きになって、患者さんやご家族などを支援する人たちによるグリーンルーペプロジェクトが立ち上がったのです。
病気のこと、検査や治療のことなどを病気になる前から理解しておけば、もし発症したときには、病気とともに生きることや将来への希望を抱かせてくれるチカラになるはずです。

最後になりますが、2020年のプロジェクト構想に関してです。グリーンルーペプロジェクト2020は、国内のいくつかのエリアでイベントを開催することを考えています。
エリアごとに啓発するテーマを掲げて、そのテーマに沿ったイベントを企画して「がんになる前から知っておくべき」をみなさんに認識してもらいたいとしています。

  • *1:トークセッション「みんなで生きていこう」は、障害があるかたの就労を支援するNPO法人さらプロジェクト(https://www.sara-project.or.jp/)、LGBTを支援するReBit(https://rebitlgbt.org/)、がんノート・岸田さんが登壇しました。病気の枠を超えて生活や仕事などで直面する課題や解決の糸口になるきっかけを共有して、社会一般に啓発するために企画されました。
    LGBTは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)を総称しています。

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公開日:2020/02/05
監修:グリーンルーペプロジェクト