2人に1人ががんになる時代ですが、10年生存率は6割近く、がんと共に暮らす日々の生活を少しでもよくすることが課題です。そのために、まずはがん検診で病気を早く発見し、がんと診断されたら、さまざまな診療科の医師や看護師などがフォローするサポーティブケア(緩和ケア)を受けることが重要です。2019年9月に東京都練馬区で開催されたがん啓発イベントから、順天堂大学練馬病院と練馬区との協働で一般向けに開催された交流イベントなど*1を紹介します。
目次
毎年9月は「がん征圧月間」です。2019年9月、東京都練馬区で「がんを知る」、「がんと生きる」をテーマに、さまざまながん啓発イベントが催されました。
その1つ、9月7日の交流イベントでは現在(いま)の緩和ケアの取り組み、がん予防のための生活習慣の見直しやがん検診の意義を学ぶためのシンポジウム、順天堂大学練馬病院の緩和ケアチーム(がん医療チーム)との交流会、子どもが体のことに興味を持つための催しがありました。
緩和ケアについては、かつては終末期医療のイメージでしたが、現在は全く違います。
がんと診断された時点から始まる治療のひとつです。患者本人はもとより、家族、希望をすれば周囲の人々も支援の対象になります。
療養生活をしやすくなってもらうために、また治療に前向きに取り組んでもらうために、さまざまなケアが行われます。
順天堂大学練馬病院の緩和ケアチーム(がん医療チーム)は、がん専門医、麻酔科(体の痛み)やメンタルの専門医、看護師やソーシャルワーカーなどがサポートをして、体の苦痛だけでなく、不安や医療費の悩みなど、さまざまな心の痛みなどを和らげています。
練馬区が制作したパネルが展示されており、わかりやすく説明されています。
病気のこと、カラダのこと、緩和ケアなどを学べる展示パネル
今回のイベントで展示されたパネルについて詳しくはこちら(PDF)
提供:練馬区健康部健康推進課健康づくり係
写真1:「現在(いま)の緩和ケア」などについて説明する順天堂大学練馬病院の緩和ケアチーム
写真2:写真展「がんと生きる日々から」
写真展は順天堂大学練馬病院で行われている緩和ケア交流会で展示されているもので、がん経験者の方や家族などがその瞬間に感じた想いを写真とストーリーで綴った作品となっています(写真2は練馬区役所で撮影したものです)。
がん検診については、交流イベントに参加した人から、どこで受診できるのかわからないとの質問がありました。実は、がん検診の受診率は高くなく、その普及が課題です*22。
そこで、がん医療チームと練馬区から、5つのがん検診は「自治体に相談してもらえれば、近所の医療機関で安い費用もしくは無料で受診できる」とのアドバイスがありました。
具体的には、国の指針〔がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(厚生労働省)〕で推奨されている5つのがん(胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん)について、検診の方法、受診の間隔、対象年齢などが推奨されています(表)。
対象者 | 実施回数 | 検査方法 | |
---|---|---|---|
胃がん検診 | 50歳以上(※) | 2年に1回 (※) | 問診、胃部エックス線検査 |
問診、胃部内視鏡検査 | |||
肺がん検診 | 40歳以上 | 年1回 | 質問(問診)、胸部エックス線検査 喀痰細胞診(50歳以上、喫煙指数600以上) |
大腸がん検診 | 40歳以上 | 年1回 | 問診、免疫便潜血検査2日法 |
子宮頸がん検診 | 20歳以上の女性 | 2年に1回 | 問診、視診、細胞診 |
乳がん検診 | 40歳以上の女性 | 2年に1回 | 問診、乳房エックス線検査(マンモグラフィ) |
※胃がんについては、当分の間、胃部エックス線検査を40歳以上の方に年1回実施しても差支えないとしています。
出典:厚生労働省
県や市は、がん検診の費用負担を助成しています。負担が軽くなる検診や無料検診チケットもあります(自治体により助成内容は違います。在住地域で確認してください)。
下記は練馬区のホームページです。近隣の医療機関も参照できます。
「がんと診断されて今後が不安」、「がんになったらどうしょう」。そんなときには、がんを経験したことや関わった経験をもとに、患者さんやご家族を支えている人の前向きな姿を見ると、病気とともに生きることや将来の見通しに希望を抱かせてくれます。
がん啓発イベントでは交流イベントのほか、患者さんや家族への支援活動をする5人に、「がんと生きる」をテーマにインタビューした内容がパネル展で紹介される催しがありました。
写真3:インタビューパネル展示『がんと生きる・暮らす』を支える人たちのおはなし」と
提供:がんフォト*がんストーリー代表・木口マリさん
インタビューを受けたのは、肺がん患者会を設立したがん経験者のかた、支援団体を設立した看護師、「がんになる前に知っておきたかった!」を啓発する「グリーンルーペ」(https://greenloupe.org/)のプロジェクトメンバー*3など、自身の経験を活かして患者さんやご家族を支える活動をしている5人です。
5人のうちの1人、がんフォト*がんストーリー(https://ganphotostory.wixsite.com/ganphoto)(関連記事1:がんに関わる人の想いを写真で展示 がんフォト*がんストーリー、関連記事2:がん経験者だからこそ届けられる情報 絵本と写真、音楽が奏でるストーリー(1))代表の木口マリさん(がん経験者)は、順天堂大学練馬病院の緩和ケア交流会のボランティアとして活動していました(写真2:写真展「がんと生きる日々から」参照)。
インタビューパネル展示では、インタビュワーと記事の編集、写真のフォトグラファーも担当されていました(木口さんのインタビュワーは練馬区の職員が担当しました)。
木口さんのインタビュー内容は、診断されて初めて治療を受けた当時のこと、患者さんやご家族などを支える活動をはじめたきっかけ、現在の活動状況、今後の見通しなどでした。
木口さんは、がんを経験したことを活かして、「人生、嫌なことが起こっても、悪いことは起こらない。起こることはすべて、さらに良い自分になるための要素」という前向きな姿勢で活動しています。
インタビューパネル展の一部
木口マリさんのインタビューパネルはこちら(PDF)
*インタビューパネル展の出典は練馬区役所健康部健康推進課〔ウェブサイト「日本人の2人に1人はがんになる時代 9月はがん征圧月間」を参照〕。
インタビューパネルの閲覧希望は練馬区役所の健康推進課にお問い合わせください。
がんは進行しないうちに早く発見することが大切です。そして、もし病気になってしまったら、病気や治療のこと、療養生活やお金のことなどは医療機関や在住の自治体、患者会や支援団体などに相談しましょう。また、サポーティブケア(緩和ケア)についても相談していきましょう。
がんを経験した方や、患者さんやご家族を支援している方が、がんと向き合ってどう暮らしているのか、その先にはどんな生き方があるのかを知ると、前向きになって勇気と希望が湧く機会になるはずです。
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