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慢性骨髄性白血病の患者さん今後の見通しに求めることは?いずみの会アンケート(3)

慢性骨髄性白血病は、画期的な治療薬*1が登場してから患者さんの生存率が向上しました。ただし、服薬を継続しないといけません。医療費、薬の副作用、就職や仕事、結婚・出産への困難や不安などがあります。患者さんが日ごろ、どのような想いで治療を継続して生活しているのでしょうか。患者会「いずみの会」が2018年に実施したアンケート結果(有効回答521人、患者さん約85%、男性約53%など)*2を紹介します。

女性の20~30歳代は生活への満足度は高くない

調査結果から、生活全般の満足度を10段階評価してもらった結果を見ると、10段階中9~10と満足度が高い人の割合は約27%、8~10は約50%で、平均満足度は7.10でした。前回の2013年度調査に比べると、生活全般の満足度は高い傾向にありました。
詳しく見ると、女性(6.99)より男性(平均7.14)の満足度が高く、年齢別で満足度が高いのは男性40歳代(7.25)と60歳以上(7.49)、女性では40~50歳代(7.32)でした。
しかし、女性の20~30歳代では6.52と満足度が高くありません。患者会代表の田村英人さんによると、経済面や副作用、結婚や子どものことへの不安が大きいとのことでした。

働き盛りの世代では病気の再発、仕事や学業に不安や困難を感じる

治療を続けるうえで感じている不安や困難に関する調査の結果をみると、回答が多いのは「今後の見通し」、「情報をどこから得たらいいのか」、「病気になる前のように生活ができるのか」、「新しい薬に変更したほうがいいのかわからない」などでした。
「今後の見通し」は、男性20~40歳代で「仕事や学業あるいは育児などをこれまで通り続けられるか」、女性20~30歳代で「治療に関する薬の耐性、再発」が特徴的でした(表)。

表:治療を続けるうえで困難に感じていること 表:治療を続けるうえで困難に感じていること

出典:慢性骨髄性白血病(Chronic myeloid leukemia:CML)患者・家族の会「いずみの会」の会報誌「CMLとともに生きる~それぞれの想い」第7号、特集「CML患者アンケート調査結果」(2018年10月発行)

また、男女別・年齢別に見ると、「就職」は男性20~30歳代、女性20~40歳代、「離職・失業への不安」は男性20~40歳代、女性40歳代、「病気休暇、欠勤、休業がとりにくい」は男女とも20~30歳代で回答が多いことがわかりました。
つまり、働き盛りの世代を中心に仕事関係の不安や困惑が大きいことがうかがえました。
家庭生活で感じる困難について聞いた結果を見ると、最も多い回答は「医療費の負担」(約68%)、「病気による収入の減少」(約14%)、「就職、職探し」(約9%)などでした。
男女別・年齢別に見ると、「医療費の負担」は男性40~50歳代、女性20~30歳代と50歳代、「結婚・出産」は男女とも20~30歳代、「就職、職探し」は男性20~30歳代、女性40歳代、「子供の養育」や「病気による家庭の不和」は男性40歳代で特徴的でした。

今後は病気の治療や日常的な活動に積極的に取り組みたいとの意向が強い

患者さんが、今後の活動において積極的に取り組みたい意向について10段階評価してもらった結果があります。平均点が高い順に以下でした。

第1位 病気の治療 8.77
第2位 日常的な活動 8.46
第3位 家族との関係 8.16
第4位 経済的な問題 7.86
第5位 社会的な生活 7.28
第6位 仕事・学業 7.20
第7位 結婚・出産 4.18

「病気の治療」については10段階中9~10と回答した人の割合は6割以上、「日常的な活動」や「家族との関係」は5割以上で、前回(2013年度)の調査結果を上回っていました。
田村さんによると、慢性骨髄性白血病の患者さんでは、治療を受け続けていくことにより命の心配をすることが軽減され、将来の見通しを持つ人が多いことがうかがえます。
一方で病気の再発、高額な医療費、就労関係などが問題です。治療を続けながらより良い生活ができるよう、患者さんをサポートすることが課題になるとの話でした。

次の記事では、患者さんへサポートする側の医師との関わり、患者さんが求める有益な情報はどのようなものかに関して調査した結果を紹介します。

調査結果の詳細をまとめた会報誌は、患者会代表・田村英人さんのご好意により、無償で提供していただけます。
お問い合わせ:「いずみの会」メールアドレス izumi_cml@yahoo.co.jp

  • *1:慢性骨髄性白血病で異常活性化するチロシンキナーゼという物質(分子)を標的に、活性化を抑える分子標的治療薬のイマチニブ(製品名:グリベック)が2001年に登場したことで、治療を受けた患者さんの生存率は劇的に向上しました。
    2019年9月現在、保険診療で治療を受けられるチロシンキナーゼ阻害薬は5種類あります。診療の流れは、まずイマチニブ(製品名:グリベック)、ニロチニブ(同タシグナ)、ダサチニブ(同スプリセル)の3剤から選択します。
    最初の薬で効果不十分(イマチニブ耐性になるbcr/abl遺伝子に変異が現れた場合など)や副作用の場合、上記ならびにボスチニブ(同ボシュリフ)、ポナチニブ(同アイクルシグ、bcr/abl遺伝子変異のうちT315Iという変異が検出された場合など)に変更します。
  • *2:患者会・いずみの会では、2009年、2010年、2013年、2018年に会員を対象にアンケートを実施しています。受診状況や症状、医師への評価、日常生活、医療費、就労、結婚・出産など、多岐にわたって調査しています。

■参考

  • 慢性骨髄性白血病(Chronic myeloid leukemia:CML)患者・家族の会「いずみの会」の会報誌「CMLとともに生きる~それぞれの想い」第7号、特集「CML患者アンケート調査結果」(2018年10月発行)
  • 第80回日本血液学会学術集会ポスターセッション:The actual condition of treatment and life seen from CML patients
  • 第59回日本癌治療学会がん患者・支援者プログラム/ポスター発表演題:CML患者からみた治療と生活の実態
  • Chronic Myeloid Leukemia Patient Survey Report 2018
  • 慢性骨髄性白血病患者・家族の会「いずみの会」
    http://www7b.biglobe.ne.jp/~izumi-cml/
  • NPO法人血液情報広場・つばさ(血液がんのフォーラム・セミナーを全国で随時開催しています)
    http://tsubasa-npo.org/

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公開日:2019/10/23
監修:慢性骨髄性白血病患者・家族の会「いずみの会」代表 田村英人さん