疾患・特集

眼のまぶたが開きにくい、まぶしくて目が開きにくい、もしかして眼瞼けいれん? 眼瞼・顔面けいれん友の会講演会から

目のまぶた(眼瞼:がんけん)が開きにくい、太陽や照明がまぶしすぎる、目がショボショボ・ゴロゴロといった症状があるなら、眼瞼痙攣(以下、眼瞼けいれん)かもしれません。しかし、病名の「けいれん」のイメージと実際の症状が異なることに問題があります。患者会の「眼瞼・顔面けいれん友の会」の講演会*で、井上眼科病院の若倉雅登先生は、障害年金を受給できるようにしたいと強調しています。

ドライアイと混同しやすく治療が遅れて眼瞼けいれんが悪化するケースも

若倉先生の講演によると、けいれんは「ぴくぴくする」など震えるような症状が思い出されますが、眼瞼けいれんはそういった一般のイメージと違います。太陽や照明がまぶしくて目を開けられない、まばたきしにくいといった症状があります。重症になると、目を開けようと努力してもどうしても開かない状態になります。
また、目の乾燥感や痛みなども出ます。ドライアイや眼精疲労と診断され、治療を受けてもよくならず、症状が悪化して生活するのが困難になるケースが実際に多くあります。
眼瞼けいれんは、視力や視野は問題なく、眼で見た情報は脳に伝達できるのに、眼球をうまく使うことができない状態です。交通事故や転倒などにより怪我や骨折を負うことや、日常生活が不自由になることがあるので、視覚障害といえるのです。

現状では障害一時金、眼球使用困難症という視覚障害として障害年金を受給すべき

若倉先生は、2020年発行予定の眼瞼けいれんの診療ガイドライン(医師が診療の際に参考にするもの)の中で、眼瞼けいれんの「眼球使用困難症」としての特徴を強調したいと考えています
というのは、眼球をうまく動かすことが困難なことにより日常生活が不自由になる状態は、視覚障害として社会保障の障害年金の対象となるべきだからです。
ただ、社会保障の現状を見ると、障害者福祉法は昭和24年に制定された法律で、視力や視野のみが評価対象になっていますが、眼球をうまく使えない状態は想定されていません。
平成25年(2013年)に、眼瞼けいれんが障害年金法の障害一時金に認定されましたが、課題があります。障害一時金というのは障害手当金のことをいいます。
障害手当金は、厚生年金と共済年金にのみある等級で、国民年金は該当していません。現状では症状固定の病気に該当する一時支給の障害手当金にとどまっています。
眼瞼けいれんは進行する病気ですので、引き続き治療を受ける必要性があるのなら、障害年金を受給できるはずです。

ものにぶつかりやすい経験や転倒の経験が多く日常生活が不自由になる病気

若倉先生は、患者さんが困っている状態を、2018年春に患者会「眼瞼・顔面けいれん友の会」会員142人を対象に調査しています。
その結果からは、眼瞼けいれんの病名のイメージと実際の症状がかけ離れていること、患者さんは日常生活が不自由になっていることが明らかになっています
まず、調査の結果を見ると、過去3年間に事故による衝突や転倒などの経験を聞いたところ、142人中88人が経験ありで、そのうち何度も経験ありとの回答したのは39人と半数近く、1~2回は49人でした。
事故による衝突や転倒などの経験がある88人にケガの有無を聞くと、ケガありと回答したのは38人、骨折の経験があったのは8人でした。
日常生活については、「やや不自由」あるいは「困難・危険」との回答は7~8割でした。視覚障害者と思うかどうかについて聞くと、「かなり思う」と「非常に思う」の回答をあわせて29%、眼球使用困難症と思うかどうかについては42%でした。

以上から、眼瞼けいれんの患者さんは、ものにぶつかることや、転倒すること、ケガすることが多いのですが、視覚障害とは認められず、つらい思いをしているのに、一見すると病気と気づかれないこともあって、そのつらさが理解されていないことが問題です。
国、社会一般に広く知ってもらい、サポートできる体制をつくってあげたいと、若倉先生は願っています

  • *:患者会の眼瞼・顔面けいれん友の会の主催による第16回「眼瞼・顔面けいれん友の会」例会(2019年3月23日)の講演内容です。
公開日:2019/05/29
監修:井上眼科病院名誉院長 若倉雅登先生、眼瞼・顔面けいれん友の会