疾患・特集

がん経験者だからこそ届けられる情報 絵本と写真、音楽が奏でるストーリー(1)

現在は、2人に1人はがんになる時代です。親子で病気のことを話しあい、子どものころから病気を理解してもらうことも大切です。そんなときに役立つのが絵本や写真です。そこで、がん経験者が作成して発行した絵本「ママのバレッタ」*と、がんに関わる人が撮影した写真が紹介されるイベントが開催されました。

「がんになる前に知っておけばよかった!」を啓発するプロジェクトとして開催

がん体験者や家族の多くが、「まさか、自分が病気になるとは」、「がんになる前に知っておきたかった!」と言います。
そこで、「もう少し近くで見るための『虫めがね』になれたら」との思いから、がん経験者だからこそ届けられる情報を発信する「グリーンルーペプロジェクト」が、患者会や支援団体を募って設立されました。
グリーンルーペプロジェクトの支援団体は、スキルス胃がん患者の会「希望の会」(https://npokibounokai.org/)、こどもをもつがん患者コミュニティ「キャンサーペアレンツ」(http://cancer-parents.org)、肺がん患者会「ワンステップ」(http://www.lung-onestep.jp/index.html)です。

絵本、写真、音楽がコラボした空間で何かきっかけを感じてくれることを願って

2019年1月27日にグリーンルーペプロジェクト主催、がんに関わる人の思いを写真で伝えるオンライン作品展「がんフォト*がんストーリー」後援で、絵本、写真、音楽のコラボレーションイベントが聖路加国際病院トイスラー記念講堂で開催されました。
グリーンルーペプロジェクトを代表して、スキルス胃がんの患者会「希望の会」理事長の轟浩美さんは開催した理由について話しました。

病気のことで毎日思いつめていて、心が固くなっていた時期がありました。そんなときに、静かな落ち着いた空間を感じること、本や写真などが固くなっていた心をとかすように和らげくれて、前向きになるきっかけとなった経験があったのです。
そこで、絵本、写真、音楽でコラボしてつながった空間で感じたことが、明日に向かって進んでいくための何かきっかけとして役に立つことができればと思い、今回のイベントを開催しました。


今回のイベントを開催した主旨について話すスキルス胃がんの患者会「希望の会」理事長の轟浩美さん(写真左)。
写真右で話している2人は、「ママのバレッタ」の制作・発行に携わったキャンサーペアレンツの絵本プロジェクトチーム。

がん経験者さんの思い、ストーリーは人を元気づけて前向きにしてくれる

イベントでは、ピアノの生演奏を聞きながら、絵本「ママのバレッタ」などの読み聞かせが行われたほか、「がんフォト*がんストーリー」から写真作品のスライドが展示されました。
写真作品を出展した団体代表の木口マリさんは、写真に込められた思いについて話しました。

写真には撮影したその瞬間に込められた人の思い、ストーリーがあります。がん経験者にとっては、過去を振り返るのはつらいことがありますが、そのときに感じた思いは、誰かを勇気付けるものにもなり得ます。
イベントでは4つのテーマ(輝く、紡ぐ、歩む、笑い)に分けて、写真65点を出展しました。
写真に込められた思いとストーリーから、「がん」という一見つらいことしかないように思える経験のなかにも、温かな瞬間があることを感じていただければ幸いです。

写真と言葉で心を届けるオンライン写真展

【輝く】

【紡ぐ】

【歩む】

【笑い】

写真作品のなかにあるのは、「がん」との関わりの中でそれぞれが見つけた小さくもあたたかな瞬間。今回、「Oto_Photo Project 2019」として、ピアノの音とともに数多くの作品が届けられました。

出典:がんフォト*がんストーリー:http://ganphotostory.wixsite.com/ganphoto

写真に込められた思いやストーリーは自分が歩んできた証、生きている証

写真を出展したがん経験者さんのトークセッションでは、自分が歩んだ証を残したい、入院した家族に外の世界を見せてあげたい、自分の手術日に子どもが生まれて以降、自分が生きている実感と子どもの成長をストーリーとして残したい思いがあるという話がありました。
以下のようなコメントが寄せられました。

「自分が歩んできたこれまでのこと、自分がいま生きている空間を、写真とそのときに感じた思いとして残したいと思った」

「入院していて外を見ることができない家族のために、風景の写真を撮影して外の世界を見せて励ましてあげたかった」

「人生のアルバムを作って、あのときのことを思い出すと、気持ちの整理ができます、何よりも、自分が生きてきた証、いま生きている証を見せることができます」

次回は、イベントで読み聞かせてもらえた絵本「ママのバレッタ」http://peoples-med.com/mamas-barrette/ について紹介します。絵本は、こどもをもつがん患者コミュニティ「キャンサーペアレンツ」が、親子で病気の話をするのに役立ててもらうために、多くの会員の思いが寄せられて制作されたものです。

  • *「ママのバレッタ」は、子育て世代などを支援する「キャンサーペアレンツ」が、親が子どもにがんについて話をすることや、子どもが病気のことを知ってもらうのに役立つために立ち上げた有志のチーム「えほんプロジェクト」が中心となって制作し、生活の医療社から発行されました。
    物語のなかで、お母さんががんを発症して抗がん剤治療の副作用で髪が抜けたことに対する娘さんの言葉、「ママは、長くてサラサラのかみの毛がじまんだったのに。バレッタ(髪留め)もつかえなくなって…」とタイトルになった台詞があります。
公開日:2019/03/13