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カロリーアップしたレシピで息切れ対策 呼吸リハビリテーションでよりよい呼吸(4)

息切れで呼吸が苦しいと、普通の人よりも筋力、体力、エネルギーを多く使います。そうすると、体重が減少して低栄養状態に陥りやすくなります。第23回J-BREATH(日本呼吸器障害者情報センター)講演会「~よりよい呼吸のために~」(2018年10月28日)では、関東学院大学の田中弥生先生が「呼吸リハビリと栄養」のテーマで講演し、効率よくカロリーアップして栄養をとるコツについて解説しました。

自分のカロリー量を計算しよう

田中先生は講演のなかで、カロリーアップするためのコツについて紹介しました。まず、自分のカロリー量を知ることが重要です。最近3ヵ月間で体重が7kg減少した人を例として、体重1kgを増やすために必要なカロリー量を計算する方法について以下の順に紹介しました。

●最近3ヵ月間で体重が7kg減少
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・体重1kg当たり約7,000kcalに相当するので、3ヵ月で不足するカロリー量は7000kcal×7kg=4万9000kcal
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・1日に不足するカロリー量は、4万9000kcal÷90日(3ヵ月)=544kcal

●5ヵ月で体重を元に戻す!そのためには
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・1日の食事に追加すべきカロリー量は、4万9000kcal÷150日(5ヵ月)=327kcal(1食当たり100~120kcal)

食材やメニューに油脂を加えて少量でカロリーアップ

自分のカロリー量がわかったら、追加すべきカロリー量を摂取したいところですが、食事の量を多くは増やせません。
そこで、田中先生は食材やメニューに油脂を加えることにより、少量でエネルギー高めの食事や食材を積極的に食べるようにすることをアドバイスしました。

  • 食事:コーンスープ、ポタージュなど
  • 食材:卵、チーズ、バターなどの乳製品、ベーコン、ゴマ、ピーナッツ、アボガド、脂身の多い魚など
  • 調味料や栄養補助食品:マヨネーズ、ドレッシング、胡麻油、胡麻醤油、MCTオイルなど

1回の食事の量を増やすのが難しい場合があります。 そのときは、油を使った調理法を取り入れることや、MCTオイルなどを活用して見た目を変えず手軽にカロリーアップすること、食事の回数を増やすこと、間食としてアイス、クッキー、ケーキなど高脂質のおやつを食べるのも効果的です。

一般的な家庭料理を工夫したレシピ集

J-BREATHは、株式会社フィリップス・ジャパンの協力を得て、レシピ集「COPD患者さんのおうちごはん」を作成しました。普段の料理にひと工夫を加えることで、1回の食事をカロリーアップできるアイデアが紹介されています。レシピの一例は以下です。

■基本献立(通常メニュー)

■変化献立例(基本献立をアレンジしたもの)

  • (1)ごはん
    →MCTオイル入りごはん
    45kcal UP
    ごはんと一緒にMCTオイルを炊き込むだけ
  • (2)ほうれん草のお浸し
    →ほうれん草とさつま揚げのバター醤油炒め
    42lcal UP
    さつま揚げ入りのバター醤油炒めにして、コクをプラス
  • (3)厚焼き卵
    →焼き鶏入り厚焼き卵
    56kcal UP
    マヨネーズを加えることでふっくらとした仕上がりに
  • (4)白菜と麩のみそ汁
    →MCTオイル入りみそ汁
    90kcal UP
    みそ汁にMCTオイルを加えるだけ
  • (5)卯の花
    →卯の花の巾着焼き
    219kcal UP
    卯の花を小揚げに詰めて、多めの油で焼き上げ生姜醤油で

出典:フィリップス社プレスリリース「フィリップスとJ-BREATH,「世界COPDデー」に合わせた啓発活動を開始 エネルギーUPで患者さんを“食”からケアするレシピ集を発表」
http://www.innervision.co.jp/products/release/20171217

最後になりますが、呼吸が苦しくなる人では、筋力や体力が落ちてくるうえ、栄養不足になりがちです。高脂肪食と食事のカロリーアップの工夫による栄養摂取、さらに筋力や体力をつけることが重要です。

J-BREATHよりイベント情報:5月に講演会、10月にウォーキングイベント

2019年5月に患者さんや家族のかたに役立つ講演会、10月はウォーキングイベント(参考記事:「呼吸に大切な肺を守るために」ウォーキングイベントが開催)を予定しています。詳細は、J-BREATHホームページのイベント・講演会欄をご参照ください。

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公開日:2019/03/08
監修:関東学院大学 田中弥生先生