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疲労と倦怠感による生活困難度をチェックしよう

レディー・ガガさんが激しい痛みで歌手活動を休む原因になった線維筋痛症は、疲れや倦怠感も訴える患者さんが多い病気です。東京リウマチ・ペインクリニック院長の岡寛先生に疲労対策について概説してもらいました(2018年9月30日の日本線維筋痛症学会第10回学術集会・市民公開講座から本記事を作成しました)。

痛みと疲労はセットの症状?

線維筋痛症は、全身にわたる激しい痛みが起こる病気ですが、多くの患者さんは疲れや倦怠感に悩まされることが多いといわれています。
2005年厚労省研究班の線維筋痛症友の会会員を対象とした調査結果によると、症状は全身の痛みが必須で90%以上が疲労を訴えていました。痛みと疲労は必須ともいえます。
疲労に関しては、慢性疲労の診断基準で患者さんの日常生活の困難度を評価するPerformance Status(PS)というものがあります(表)。

表:performance status(表)による疲労・倦怠感の程度

  • 0:倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる
  • 1:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずるときがしばしばある
  • 2:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である
  • 3:全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である*1
  • 4:全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である*2
  • 5:通常の社会生活や労働は困難である。軽労働は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である*3
  • 6:調子の良い日には軽労働は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している
  • 7:身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である*4
  • 8:身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している*5
  • 9:身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている

疲労・倦怠感の具体例

  • *1 社会生活や労働ができない「月に数日」には、土日や祭日などの休日は含まない。また、労働時間の短縮など明らかな勤務制限が必要な状態を含む。
  • *2 健康であれば週5日の勤務を希望しているのに対して、それ以下の日数しかフルタイムの勤務ができない状態。半日勤務などの場合は、週5日の勤務でも該当する。
  • *3 フルタイムの勤務は全くできない状態。 「軽労働」とは、数時間程度の事務作業などの身体的負担の軽い労働を意味しており、身の回りの作業ではない。
  • *4 1日中、ほとんど自宅にて生活をしている状態。収益につながるような短時間のアルバイトなどは全くできない。ここでの介助とは、入浴、食事摂取、調理、排泄、移動、衣服の着脱などの基本的な生活に対するものをいう。
  • *5 外出は困難で、自宅にて生活をしている状態。日中の50%以上は就床していることが重要。

出典:厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)(神経・筋疾患分野)「慢性疲労症候群の病因病態の解明と画期的診断・治療法の開発」研究班「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)臨床診断基準(案)」(2016年3月改訂)

線維筋痛症患者さんの調査結果では、上記のPSは6~9段階が大半でした。PSの6段階は「週のうち50%以上は自宅にて休息している」、7段階は「1日中、ほとんど自宅にて生活をしている状態」です。

強い疲労により仕事を続けられない患者が多い

線維筋痛症は、自宅で安静にしていないといけないぐらい強い疲労を訴えるケースが多いと言われています。疲労に対する治療管理が必要になります。岡先生は以下のような対策(治療)を実施しています。

睡眠の確保
ビタミンC点滴(保険適応外)
還元型コエンザイムQ10(保険適応外)
エルカルニチン点滴(保険適応外)
タチオン点滴(保険適応外)
タウリン内服(保険適応外)
メルスモン1A皮膚下注射/週
漢方治療(麻黄湯、補中益気湯など)

疲労に対する治療は表の順で、まずは睡眠の確保が重要となります。
ビタミンCは、抗酸化物質として体内の活性酸素を駆逐するはたらきがあります。
還元型コエンザイムQ10に関しては、コエンザイムQ10は体のなかにもともとある補酵素でエネルギー産生に関わっているもので、酸化型と還元型があります。
酸化型は、体内で還元型に変換することが必要です。加齢や病気、ストレスなどにより変換するためのエネルギーが少ないと還元型に変換する量が少なくなることがあります。
還元型コエンザイムQ10は変換の必要がないもので、慢性疲労症候群患者さんを対象としたエビデンスのある研究結果もあります。
カルニチンはほとんどが筋肉に存在しているものです。エルカルニチンは、疲労や倦怠感以外に筋肉痛やけいれん、こむら返りなどに対しても有効です。
また、更年期のほてりや発汗なども重なる患者さんが多いのが問題です(参考:痛みと疲労に苦しむ線維筋痛症、10年間にわたる患者闘病記痛み+疲れ+更年期症状で退職するも社会復帰を果たした患者さんの体験記)。
メルスモンというホルモンを調節する薬もあります。簡略更年期指数(SMI)チェック表で60点以上のかた、女性ホルモンのエストラジオール値が低いかたに使用します。

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公開日:2019/01/21
監修:東京リウマチ・ペインクリニック院長 岡寛先生