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20~22歳の子宮頸がんワクチン有効率を検討 新潟大学・HPV感染調査

毎年11月は子宮頸がんの予防啓発月間です。子宮頸がんは、国内では20~30歳代の女性を中心に患者数も死亡率も増加し続けているのが問題です。原因の多くが性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染ですので、HPVワクチン接種による感染予防と、検診による早期発見・治療が重要です。最近、国内で20~22歳を対象にワクチン接種によるHPV感染状況を検討した研究結果が新潟大学の榎本隆之先生のグループから報告されました。

20~30歳代の若い女性で子宮頸がんが多く30歳代後半が発症のピーク

20~30歳代の若い女性で子宮頸がんが多く30歳代後半が発症のピーク

子宮頸がんの原因のほとんどはHPV感染です。HPVは性交渉により感染するウイルスですが、通常は感染しても体内で免疫の機能で異物として排除されます。しかし、ウイルスが排除されずに長期間にわたって感染が続くと、一部の人では感染した細胞ががん化します
日本産科婦人科学会の産科婦人科学会の病気の解説によると、子宮頸がんは子宮がんで約7割を占め、国内では毎年約1万人が発症して、約3,000人が死亡するといわれています。
問題は、2000年以降では患者数も死亡率も増加していることと、最近は20~30歳代の若い女性の患者さんが増えてきており、30歳代後半が発症のピークになっていることです。

新潟県で子宮頸がん検診を受けた20~22歳の女性1814人を対象に検討した研究

子宮頸がん対策は、HPV感染そのものをワクチン接種により感染をブロックすること、定期的に検診を受けて体の異変を早く発見することが重要です。
ワクチンの効果に関しては、国内で大規模な研究結果の報告はこれまでなかったのですが、2014~2016年度に新潟県の自治体検診を受けた20~22歳 1,814人を対象に検討した研究結果が、The Journal of Infectious Diseases誌2018年10月9日オンライン版に掲載されました(新潟大学産科婦人科学分野教授・榎本隆之先生らの報告)。

初交を経験する前に接種していた人ではワクチン有効率は高い

研究結果を見ると、高リスク型のHPV16型、18型の感染予防を目的としたHPV2価ワクチンを接種した1,355人のグループではHPV感染率は0.2%と、接種していない459人のグループの2.2%に比べて差があり、ワクチン有効率は91.9%と高い感染予防効果がわかりました。
また、ワクチンは初交前の接種が効果的ですので、初交を経験する前に接種していた1,459人で分析すると、ワクチン有効率は93.9%とさらに上昇していました。
さらに、HPV16型と18型以外のウイルス型への感染予防効果を検討すると、高リスク型のHPV31型、45型、52型に対するワクチン有効率が67.7%あることがわかりました。

ワクチン積極的勧奨がなくなる時期の前後でHPV感染やがん発症率の検討も視野に

榎本先生らのグループによると、研究は現在も継続しており、子宮頸部の細胞診異常や子宮頸がんの予防効果についても検証を行うとしています。
また、今回の研究対象はワクチンの積極的勧奨が2013年に中止される以前のワクチン接種率が高いと予測される世代の結果です。一方、2020年にはHPVワクチンの接種率が激減した世代が検診対象になります。
榎本先生によると、ワクチンの積極的勧奨が中止される前後の世代においてHPV感染率、がん発症率がどのような変化があるのかを検討することを視野に入れているとのことです。

  • *ワクチンについて:HPVは200種類以上あるウイルス型のなかで、子宮頸がん以外に肛門がん、口腔咽頭がん、外陰がん、膣がん及び陰茎がんの原因となる高リスク型があります。高リスク型は、HPV16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型があります。HPV16型と18型で全世界の子宮頸がんの約70%を占めています。
    ワクチンは、日本では高リスク型のHPV16型、18型の感染予防を目的としたHPV2価ワクチンと、HPV16型と18型および、いぼ(専門用語で尖圭コンジローマといいます)の原因になるHPV6型と11型の感染予防を目的としたHPV4価ワクチンがあります。
    海外では高リスク型のHPV16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、52型、58型と、HPV6型、11型の感染予防を目的としたHPV9価ワクチンの接種を受けることができます(2018年10月時点)。

新潟大学のリリース:https://www.niigata-u.ac.jp/wp-content/uploads/2018/10/301009_re.pdf

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公開日:2018/11/20更新日:2020/09/25