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血液検査で卵巣がんを早期発見、その鍵は?国立がん研究センター

卵巣がんは自覚症状に乏しいので、見つかったときには転移のケースが多く、命を落とす患者さんが多い予後が悪い病気です。最近、血液検査から卵巣がんを発見する診断モデルが開発され、卵巣がん患者、その他のがん患者、がんではない人を対象に検討した結果、高い精度で卵巣がん患者を判別できる可能性についての研究成果が報告されました(国立がん研究センタープレスリリースより)。

血液中のマイクロRNAを診断に応用

早期診断が困難で予後の悪い卵巣がんですが、血液検査により高い精度で卵巣がんを発見する診断モデルを開発するための研究が実施されています
研究は、遺伝子の機能を抑制・制御するはたらきがあるといわれるマイクロRNA(リボ核酸といいます)という分子を卵巣がん診断に応用するというものです。過去には、抗がん剤の感受性の変化、がんの転移や消失といった体内における病気に関わる変化と血液中のマイクロRNA量の変動に関連があるとの報告があります。

将来は血液検査を取り入れた卵巣がん検診システムができる可能性あり

研究の詳細を見ると、卵巣がん428例、その他のがん859例、がんを有さない2759例の血液(血清)中のマイクロRNAを解析して、卵巣がん患者さんにおいて特異的に変化するマイクロRNAが複数あることがわかりました。そのうち10種のマイクロRNAを組み合わせて診断モデルを作製しました。
診断の精度を卵巣がんの人とそうでない人で検証した結果、このモデルで卵巣がん患者さんを98.8%の割合で高い精度で判別できることがわかりました。
病期(ステージといいます)別に診断制度を見ると、ステージⅡ~Ⅳの患者さんのグループでは100%の精度で陽性、ステージⅠでは95.1%と高い精度で陽性と診断できました。
卵巣がんは予後が悪い病気で、早期発見の対策が課題でしたが、将来は血液検査で血液検査による卵巣がんを検診することができる可能性が期待されています。

  • *国立がん研究センター研究所分子細胞治療研究分野プロジェクトリーダーの落谷孝広先生(現:東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療部門教授)、横井暁先生(現:MD Anderson Cancer Center博士研究員)、松崎潤太郎先生(現:MD Anderson Cancer Center博士研究員)らによる研究です。
公開日:2018/10/31