卵巣がん経験者(サバイバーともいいます)の大塚美絵子さんは、海外の国際学会に参加してきました。日本と海外では病気や治療、サポートに対する意識の違いに衝撃を受けたとのことです。学会印象記を紹介します。
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大塚さんは、2018年6月にオーストリア・ウィーンで開催された国際がんサポーティブケア学会に参加しました。さまざまながんに関する話題は目からウロコの話でした。なかでも、日本と海外との意識の違いに衝撃を受けたとのことです。おもに以下です。
今回は、「治療の目的は『治す(Cure)』だけではない!」をテーマに、大塚さんが数年前に卵巣がん治療を受けた経験を振り返ってもらったうえで話を聞きました。
大塚さんはアメリカの研究者が強調していた「がんの治療はCureだけではなく、『3C』のバランスが重要だ」という話が印象に残ったとのことです。
大塚さんは、数年前に受けた卵巣がんの治療は大変満足いくもので、医療者への感謝の念は今も変わらないと言います。
なぜなら、治療中は本人は「Cure」しか頭になかったのですが、医師や看護師が患者本人の希望や人生観をうまく聞きだして、ControlやComfortにも十分配慮してくれたからです。
しかし、治療後には脚の浮腫や、ひどい倦怠感といった予想もしなかった後遺症に悩まされました。また、セミナーやイベントで、副作用や後遺症のControlがうまくいかず、また、それを医療者にうまく伝えられずに苦しむ患者さんをたくさん見ました。
そういう経験から、今後は患者自身も「どういう状態を望むのか」を主体的に考えて医療者に伝えなければならないと痛感しました。その際に重要な指標になるのが、「Cure」「Control」「Comfort」の3要素のバランスであると思いました。
卵巣がんについては、ドイツの婦人科医師が「卵巣がん患者さんの調査結果では、多くの患者さんは維持療法としての化学療法を受けることに積極的」と発表した講演がありました。
大塚さんによると、治療として化学療法を受けた経験からは、再発したら治療を受けるかどうか迷うとのことです。失ったComfortも少なくないからです。
大塚さんにとっては、維持療法は治すための治療というよりも延命目的の治療ですので、「積極的」という話は意外だったのです。そこで、「患者さんは維持療法に積極的というのは、死亡率が高いことと関係しているのでしょうか?」と質問しました。医師の回答は以下でした。
「状況の厳しさ」というのは、卵巣がんは再発の可能性が高い病気ですので、多くの患者さんは病気と闘う一方で、「3C」のバランスを主体的に考えて、病気とともに生きていく意識も高いという社会の環境ができていることが考えられます。
会場で、イギリス人と治療を終えてから社会に戻るまでの話をしていたら、「治療後完全復帰前専門のクリニック」をロンドンで開業している看護師さんを紹介されました(日本では認められていません)。
大塚さんは、「これまで受けてきたサポートは満足いくものでした。今回、国際学会に参加して、Cure、Control、Comfortの3Cのバランスをもとに治療後のことも考えたサポートがあらためて重要だと感じました。さらに、満足した人生を送ることができるからです」と振り返っていました。
次回は、がんサポーティブケアのための副作用対策に関する話題について紹介します。
2012年に卵巣がんを発症したサバイバーさんです。ご自身は、がんと闘った経験から、リンパ浮腫対策などの弾性ストッキングなどを販売するお店をしています。
がん患者さんを支えるために相談会や講演といった、さまざまな活動に励んでいます。
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