疾患・特集

あなたの動脈硬化のリスクをチェックしよう!

脂質異常症は、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患になりやすい生活習慣病です。動脈硬化性疾患を予防するために、医師が診療の際に参考にする「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」が日本動脈硬化学会から公表されています。そのなかで、リスクの程度を評価して脂質異常症を改善するための治療指針が提示されています。

脂質異常症の改善目標となる低リスク、中リスク、高リスクを判定

医師が診療の際に参考にする「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(日本動脈硬化学会)では、動脈硬化性疾患を予防するための脂質異常症を診断する基準として、血液検査の総コレステロール値に含まれる悪玉のLDLコレステロール、善玉のHDLコレステロール、および中性脂肪(トリグリセライド)、non-HDLコレステロールのうち、1つでも異常値があれば治療を受けることが推奨されています(「リスク指標が刷新! 脂質異常を再確認」参照)。

10年以内に冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症など心臓に関わる病気です)を発症する確率がわかる評価ツールがあります。
そこで、脂質異常症を改善するための管理目標を設定するために、LDLコレステロールとHDLコレステロール、病歴や家族歴から低リスク、中リスク、高リスクを判定するフローチャートがあります(図1)。

図1:冠動脈疾患予防からみたLDLコレステロール管理目標設定のためのフローチャート(危険因子を用いた簡易版)

■脂質異常症のスクリーニング
(LDLコレステロール120mg/dL以上)

冠動脈疾患の既往があるか?

  • 「あり」の場合

    二次予防
  • 「なし」の場合


以下のいずれかがあるか?

  • 糖尿病(耐糖能異常は含まない)
  • 慢性腎臓病(CKD)
  • 非心原性脳梗塞
  • 末梢動脈疾患(PAD)
  • 「あり」の場合

    高リスク
  • 「なし」の場合


以下の危険因子の個数をカウントする

  • 喫煙
  • 高血圧
  • 低HDLコレステロール血症
  • 耐糖能異常
  • 早発性冠動脈疾患家族歴(第1度近親者かつ発症時の年齢が男性55歳未満、女性65歳未満 中:家族歴など不明の場合は0個としてカウントする)
性別 年齢 危険因子の個数 分類
男性 40~59歳 0個 低リスク
1個 中リスク
2個以上 高リスク
60~74歳 0個 中リスク
1個 高リスク
2個以上 高リスク
女性 40~59歳 0個 低リスク
1個 低リスク
2個以上 中リスク
60~74歳 0個 中リスク
1個 中リスク
2個以上 高リスク

出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017

糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患があれば高リスク

図1のフローチャートでは、まずLDLコレステロール値120mg/dL以上なのかどうか、冠動脈疾患の既往があるかどうかを評価します。
冠動脈疾患がある場合は、生活習慣の是正とともに薬物療法を実施する再発予防(二次予防といいます)の治療が行われます。
次に、糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、および末梢動脈疾患の有無があるかどうかを評価します。ある場合は「高リスク」になります。 上記の病気がない場合、喫煙、高血圧、低HDLコレステロール血症、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴のうち危険因子がいくつあるかを評価します。危険因子の数と年齢層別のリスク分類に照らし合わせて、生活習慣の改善を行ったうえで薬物療法の適用を考慮する初発予防(一次予防といいます)という治療管理が行われます。
下記は、低リスク、中リスク、高リスクにもとづいて初発予防(一次予防)ならびに再発予防(二次予防)の治療を行うための脂質管理目標値です(図2)。

図2:リスク区分別脂質管理目標値

治療方針の原則 管理区分 脂質管理目標値(mg/dL)
LDLコレステロール non-HDLコレステロール 中性脂肪(トリグリセライド) HDLコレステロール
一次予防
まず生活習慣の改善を行った後、薬物療法の適用を考慮する
低リスク 160未満 190未満 150未満 40以上
中リスク 140未満 170未満
高リスク 120未満 150未満
二次予防
生活習慣の是正とともに薬物治療を考慮する
冠動脈疾患の既往 100未満
(70未満)*
130未満
(100未満)*
  • *家族性高コレステロール血症、急性冠症候群の時に考慮する。糖尿病でも他のリスク病態(非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、主要危険因子の重複、喫煙)を合併するときはこれに準ずる。
  • 一次予防における管理目標達成の手段は非薬物療法が基本であるが、低リスクにおいてもLDL-Cが180mg/dL以上の場合は薬物療法を考慮するとともに、家族性高コレステロール血症の可能性を念頭においておくこと。
  • まずLDL-Cの管理目標値を達成し、その後non-HDLの達成を目指す。
  • これらの値はあくまでも到達努力目標値であり、一次予防(低・中リスク)においてはLDL-C低下率20~30%、二次予防においてはLDL-C低下率50%以上も目標値となり得る。
  • 高齢者(75歳以上)については、ガイドライン第7章を参照。

出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017

板倉弘重先生のワンポイントアドバイス

高リスクのかたはLDLコレステロールとnon-HDLコレステロールの改善が必須です

LDLコレステロールとHDLコレステロールの検査値と、病歴や家族歴を加味して危険因子の数と年齢層に照らし合わせて、動脈硬化によって病気になるリスクを判定できるツールです。

60~74歳でLDLコレステロール値が120mg/dL以上のかたは中リスク以上となります。まずLDLコレステロールの改善目標となる検査値を達成すること、次にnon-HDLコレステロールの管理目標値を目指すことがガイドラインで推奨されています。

また、LDLコレステロール値が120mg/dL以上で冠動脈疾患の既往(病歴という意味です)があるかたは、LDLコレステロールの改善目標値は100mg/dL未満、non-HDLコレステロールの目標値は130mg/dL未満ですが、さらに高リスク病態の糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、および末梢動脈疾患がある場合は、LDLコレステロールは70mg/dL未満、non-HDLコレステロールは100mg/dL未満と厳格な改善目標が推奨されました。

公開日:2018/11/19
監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生