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がん治療・入院前に筋力・体力をつけよう!がんロコモ対策(2)

がん患者さんが、体を動かすことが困難になる「がんロコモ」(がんとロコモティブシンドローム:運動器症候群)にならないために、治療を受ける前や入院する前に筋力や体力をつけておくことが重要です。大阪国際がんセンターのリハビリテーションプログラムを紹介します。

がん治療により骨や関節、筋肉、神経などに障害、長期安静により体力低下

大阪国際がんセンター緩和ケア認定看護師の田平芳子さんによると、がんロコモはがんが骨に転移するケースと、がん治療により骨や関節、筋肉、神経などに障害がおこる、長期安静により体力が低下するケースがあります。
がんの治療によって起こるがんロコモに関しては、以下の例があります。

  • 乳がん患者さんで、手術を受けた側の腕が上がりにくい、動かしにくい(肩関節の可動域制限といいます)
  • 頭頸部がん患者さんで、頸部リンパ節郭清を受けた後に、肩の疼痛や痺れ、肩凝りなどの症状がある
  • 子宮がん患者さんで、化学療法や放射線療法、リンパ節郭清を受けた後に、太ももなどがむくむリンパ浮腫が起こる
  • 膵臓がん患者さんで、化学療法を受け始めてから、手足が痺れて、手袋をしなければならないほど、指先が痛い
  • 開胸手術や開腹手術で、安静状態が長いと、身体の機能が低下する廃用症候群(はいようしょうこうぐん)が起こる

がん治療を受ける前、入院する前から筋力や体力をつける

全身持久力として体力をつける運動

がん治療を受ける前、入院する前から運動をすることやリハビリテーションを受けることで、筋力や体力をつけ、治療後にスムーズに回復するためのがんロコモ対策があります。
大阪国際がんセンターのリハビリテーションプログラムには、全身持久力をつける運動、筋力・バランスを向上させる運動、効率のよい呼吸をする運動があります。

全身持久力として体力をつける運動

  • ウォーキング
  • 階段の昇り下り(ひざが痛いかたは注意しましょう)

■ポイント:無理のない距離や運動時間からはじめて、いまより10分多く体を動かしましょう。

筋力・バランスを向上させる運動

  • 筋力:
    スクワット:1セット5~6回を1日2~3セット
    かかと上げ:1セット10~20回を1日2~3セット
  • バランス:
    片脚立ち:左右1分間ずつ(休みながらで大丈夫です)を1日3回

■ポイント:イスや机を持って、安全にできる範囲で無理しないようにしましょう。

筋力・バランスを向上させる運動

提供:大阪国際がんセンター

効率よく呼吸をする運動

  • 腹式呼吸: 息を吸うときはお腹を膨らませます。 息を吐くときはお腹を凹ませます。
  • ストレッチ : 首・肩のストレッチ、大胸筋のストレッチ、腰のストレッチ

■ポイント:
手術を予定している患者さんは首、肩、腰の筋肉をリラックスさせて呼吸しやすくしておきましょう。
腹式呼吸、ストレッチあわせて週5回、15分程度行いましょう。
ストレッチは痛くない範囲で呼吸をしながらすることが肝心です。

効率よく呼吸をする運動 腹式呼吸

効率よく呼吸をする運動 ストレッチ

提供:大阪国際がんセンター

治療を受ける前は副作用がない時点から筋力や体力をつけておく

がん治療を受ける前、入院する前から運動をすることやリハビリテーションを受けることにより、治療に伴う合併症の予防や軽減(合併症の影響が少ないことをいいます)につながり、治療後に回復しやすいことも期待できます。
田平さんは「治療を受ける前は副作用がないので、その時点から筋力や体力をつけておくことが重要です。治療を受けるがん患者さんや、入院する予定のがん患者さんは、その前からがんロコモ対策に取り組みましょう」としています。

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公開日:2018/10/22
監修:大阪国際がんセンター緩和ケア認定看護師 田平芳子さん