疾患・特集

通院を中断する患者の特徴は?

患者さんが医療機関への受診が続かず、治療を中断することが問題になっています。国立がん研究センターの後藤温先生は、糖尿病患者さんにおいて通院中断の理由を明らかにして、治療を継続してもらう支援策を探るために行われた研究の結果や文献などについて、第13回横浜生活習慣病フォーラムで紹介しました。

治療を中断する糖尿病患者さんの特徴は男性、会社員、喫煙など

治療を中断する糖尿病患者さんの特徴は男性、会社員、喫煙など

国立がん研究センター社会と健康研究センター疫学研究部・代謝疫学研究室長/中央病院総合内科の後藤温先生は、治療を中断する患者さんの特徴を検討した研究や文献などについて考察した結果を2018年6月に開催された第13回横浜生活習慣病フォーラム「30-50歳代の治療中断しないためのマネジメント」で報告しました。 後藤先生は、糖尿病患者が治療を中断せずに継続してもらうための支援策を探るために行われた研究(J-DOIT2)などをもとに作成された文献の「糖尿病受診中断対策包括ガイド*1」について紹介し、受診を中断する人の特徴について以下を挙げました。

  • 男性
  • 初診時年齢が低い
  • 薬剤が処方されていない
  • 来院時のヘモグロビンA1c値は高い(血糖コントロールが悪い人)
  • 来院時のヘモグロビンA1c値はそれほど高くない
  • 会社員
  • 喫煙習慣

血糖値が高くても症状を自覚できないことも治療中断に関係

後藤先生は、糖尿病受診中断対策包括ガイド作成のもとになった研究のJ-DOIT2*1も紹介しました。J-DOIT2は、糖尿病患者さんを対象に通常の診療と診療支援を行い、それぞれの診療を受けた患者さんのグループにおいて1年間で受診を中断する率を比較して分析したものです。
後藤先生によると、研究では受診を中断した人の理由を聞いており、「忙しい」、「体調が良い」、「医療費の負担」などが挙げられました。「体調が良い」との理由に関しては、血糖値が上昇しても、かなり上昇していないと症状を自覚できないことが関係していることが考えられたとのことでした。
また、J-DOIT2では受診中断の予防策としての診療支援として以下を実施しました。

  • 受診促進:受診予定日前や受診しなかった場合の連絡
  • 療養支援:電話や対面による運動や食事に関する指導
  • その他:希望者に体重計や歩数計の貸し出しや年2回の健診測定を促す

後藤先生は診療支援に関する研究結果を紹介し、通常診療を受けた患者さんでは1年間における受診中断率は約8%、診療支援を受けた人では約3%と、患者さんへの診療支援は有用な可能性があることを指摘しました。

糖尿病の合併症が悪化する可能性も指摘

後藤先生は、治療を中断する患者さんの特徴を検討した研究をいくつか紹介しました。そのなかで、糖尿病治療を開始後1年以内に受診中断の有無で各グループの経過を検討した研究*2では、糖尿病の三大合併症(網膜症、腎障害、神経障害)の発症率は受診を中断した人で多く、中断していない人に比べて2倍高いことが推察されたことを報告しました。
後藤先生は、講演のまとめとして受診中断を防ぐためには糖尿病患者さんに継続的な受診の必要性を伝え、可能な範囲で受診時間の融通性を高くすることが有効であろうと述べました。

【参考文献】

  • *1:厚生労働科学研究「患者データベースに基づく糖尿病の新規合併症マーカーの探索と 均てん化に関する研究―合併症予防と受診中断抑止の視点から(研究代表者:野田光彦先生)」。「かかりつけ医による2型糖尿病診療を支援するシステムの有効性に関する研究(J-DOIT2)をはじめとした研究の成果を踏まえて作成されました。
  • *2:Diabetes Res Clin Pract 2017;123:55-62. 糖尿病治療を開始してから1年以内に受診を中断した患者さん1,784人と受診を継続した9,547人を対象に治療後の経過を検討した研究
公開日:2018/10/02