乾癬は皮膚のほかに関節にも症状がみられます。関節症状が見られる患者さんは、乾癬性関節炎または関節症性乾癬といわれます。関節の症状を起こしやすい患者さんの特徴は何でしょうか。帝京大学の多田弥生先生に聞きました。
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乾癬患者さんで、皮膚の症状(皮疹)の面積が広い患者さんや、爪乾癬がある患者さんでは関節の症状(関節炎といいます)も起こしやすいといわれています。なお、関節炎というのは、関節のある部分で火事やぼやに例えて「炎」が出ているような状態(赤く腫れて痛くなる状態)をいいます。
皮膚症状を有する乾癬患者で乾癬性関節炎(関節症性乾癬ともいいます)を起こす特徴について、帝京大学皮膚科学講座主任教授の多田弥生先生に聞きました(第62回日本リウマチ学会学術集会の講演内容をもとに本記事を作成しました)。
乾癬に伴う関節炎は、腱やじん帯が骨に付着する部位で起こった炎症です。これは付着部炎と呼ばれています。関節リウマチのような滑膜の炎症で起こる病気とは違います。
乾癬患者で関節炎を合併する割合は、海外を含めた過去の報告からは5~30%、国内では14.3%といわれています※1。
米国ミネソタ州で疫学調査から乾癬に伴う関節炎の発症年齢と性別を検討した報告によると、発症のピークは男女ともに中年以降にあるほか、男性では30~40歳にもピークがあります。つまり男性では、働きざかりの世代で乾癬と診断された方は関節症状にはより注意が必要です。
乾癬に伴う関節炎と、関節リウマチを含むほかの関節炎と鑑別するために分類基準が用いられています。
関節、脊椎または付着部の炎症があり、さらに以下の5項目で3点以上を満たす場合、乾癬性関節炎に分類する
CASPAR分類基準で注目されるのは現在乾癬の皮疹があるかどうかです。乾癬性関節炎の分類基準を満たすには合計3点必要ですが、乾癬の皮膚症状(皮疹)があるだけで2点はあることになりますので、乾癬の皮膚症状を有しているかどうかが診断に重要な要素といえます。
乾癬の皮膚症状ならびに関節炎も有する患者さんに関して、皮疹の程度との関連を検討した報告によると、皮疹の面積が広ければ広いほど関節炎の有病率が高く、皮疹が手のひら10個分以上の乾癬患者では関節炎の有病率は50%以上になるとされています。
皮膚乾癬の程度 | 乾癬性関節炎の有病率 |
---|---|
すべての乾癬患者 | 11% |
皮疹がない、またはわずか | 6% |
皮疹が手のひら1~2個分 | 14% |
皮疹が手のひら3~10個分 | 18% |
皮疹が手のひら10個分以上 | 56% |
また、乾癬に伴う関節炎を有する可能性が高まる皮疹の出現部位の特徴については、(1)爪症状(2)頭皮症状(3)臀裂部、肛門周囲の症状が言われています※2。
爪乾癬に関しては、CASPAR分類基準にもあり、重要な予測因子と考えられます。爪は解剖学的に近傍にある付着部と近接しているため、付着部の炎症が爪に及んで爪乾癬の症状を生じる人が多いため、両者が合併しやすいのではないかと考えられています。
乾癬に伴う関節炎が疑われるような腫れた関節をレントゲン(X線)やMRIで検査すると、X線では骨びらんや、毛ばだち状の骨増殖、MRIでは骨髄浮腫が見られたりします。
脂漏性皮膚炎と診断されていた場合、頭皮の乾癬の皮膚症状と似ているので注意が必要です。
30歳代後半の男性で、脂漏性皮膚炎と診断されていた患者さんが頭部の皮疹と手指の関節痛を訴え来院したケースがあります。
患者さんは15歳頃から頭部に皮疹が出現しており、脂漏性皮膚炎と診断されていました。20歳頃から足の指の付け根や膝、手指に関節の痛みが起こり、30歳代に関節の痛みが悪化して医療機関を受診すると乾癬が疑われました。
脂漏性皮膚炎と似ていましたが、乾癬と診断する決め手になったのは、好発部位の頭部における耳、髪の生え際、後頭部と臀部の皮疹や、手の爪における爪甲剥離が認められたことでした(参考記事:乾癬と爪の水虫を区別しましょう)。
このように、乾癬の頭皮症状と頭部の脂漏性皮膚炎は専門家であっても区別するのは難しいことが多いので、脂漏性皮膚炎と診断されたことがある人で手指などに関節炎がでてきた場合には注意が必要です。
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