疾患・特集

乾癬(かんせん)は「感染」ではなく皮膚と関節の病気です

乾癬(かんせん)という病気は、「感染」とは違います。皮膚における症状(皮疹)や関節における症状が見られる病気です。帝京大学の多田弥生先生に、乾癬という病気について解説していただきました。

乾癬は人に「うつる」病気ではありません

乾癬は「うつる」病気ではない

乾癬という病気は、あまり聞きなれないかもしれません。乾癬と感染は読みかたが「かんせん」と同じですので、乾癬は「うつる」病気だと思っている人が少なくないようです。
乾癬患者さんの実話ですが、旅行した際に人から、「感染の病気がうつるのでお風呂には入らないでください」と言われたことがあったそうです。そのような誤解が生じないためにも、多くの方が乾癬についての正しい知識をもつことが必要です。そこで、帝京大学皮膚科学講座主任教授の多田弥生先生に乾癬という病気の特徴や診療について解説していただきました(2018年4月、第62回日本リウマチ学会学術集会の講演内容をもとに本記事を作成しました)。

人から人に感染する病気ではありません

乾癬という病気は、日本における有病率は約0.3%で海外に比べると10分の1程度、国内での男女比は2:1といわれています。発症年齢はおおむね20歳代から70歳代まで幅広く、中年以降に発症しやすいのが特徴です。
乾癬の原因は、まだよくわかっていません。遺伝以外に、ほかの病気を契機に発症したケースや、薬剤のうち、血圧を下げるカルシウム拮抗薬やβ阻害薬を服用して発症したケースも知られています。
ここで注意してほしいのが、乾癬は「かんせん」と呼ぶので、「感染」と勘違いする人がいるようです。インフルエンザのように人から人に感染する病気とはまったく違うのです。

皮膚症状が出やすいのは、耳、髪の生え際、後頭部、手の爪、ひじ、膝、下腿、臀部

乾癬は皮膚に皮疹というものができます。関節炎を合併することもあります。主に皮疹の特徴や全身の炎症、関節炎の有無から、次の5つに分類されます。

乾癬の病型分類

  • 尋常性乾癬:全体の9割を占めます
  • 乾癬性関節炎:関節症性乾癬ともいいます
  • 滴状乾癬(てきじょうかんせん)
  • 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
  • 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

乾癬の皮膚症状に関しては、赤い皮膚症状(皮疹としての名前は紅斑(こうはん)といいます)が特徴的です。紅斑は、毛細血管が増えて拡張することによって皮膚表面に赤みを帯びた状態です。
紅斑の上に、銀白色のフケのような「鱗屑(りんせつ)」が厚く付着すること(角化といいます)が多いです。これは、「落屑(らくせつ)」と言われる状態です。
また、表皮が厚くなっているためにまわりの皮膚から少し盛り上がっているようにみえますが、これはいわゆる「浸潤(しんじゅん)」と言われる状態です。乾癬の皮疹の重症度は後で述べるように、この紅斑、落屑、浸潤を点数化して、さらに皮疹の出現範囲の広さを加味して評価します。

乾癬の皮疹はどこにでも出現しますが、出やすいのは耳、髪のはえ際、後頭部、手の爪、ひじ、膝、下腿です。臀部(お尻)やおへそなどにも皮疹がでることがあります。乾癬かなと思った方は、出やすい部位の皮膚を確認してみると良いかもしれません

乾癬の皮疹の重症度判定

重症例は皮疹の評価やQOL評価から下記のどれかが該当する人です。

  • 1)BSAが体表面積の10%以上
    BSA:Body Surface Area
    皮疹が体表面積に占める割合を示します。手のひら1枚分を体表面積1%と考えます。
  • 2)PASIスコアが10点以上
    PASI:Psoriasis Area and Severity Index
    全身を4つの領域(頭部、体幹、上肢、下肢)に分けて、各領域の紅斑、浸潤、落屑、病巣範囲を点数化し、治療開始前のスコアに比べて改善した状態を評価します。例えば、PASI75は治療開始前のスコアに比べて75%改善した状態を評価します。
  • 3)QOLのDLQIが10点以上
    DLQI:Dermatology Life Quality Index(皮膚疾患に特異的なQOL尺度)
公開日:2018/08/27
監修:帝京大学皮膚科学講座主任教授 多田弥生先生