がんには「希少がん」と呼ばれる患者数が少なく珍しいがんもあります。例えば「眼腫瘍」「聴器がん」といったものがあり、不調を感じてもまさかがんだとは思わず治療が遅れてしまう、ということもあるかもしれません。
日本人の死因の上位を占めるがん。一口にがんと言っても、さまざまな種類があります。
がんのなかでも死因のトップを占める「大腸がん」や「肺がん」、「乳がん」など(厚生労働省「人口動態統計」2014年)はよく聞くもので、症状や治療法についてもご存知の方も多いでしょう。
一方で、がんには「希少がん」と呼ばれる患者数が少なく珍しいがんもあります。なかには、眼や耳に発症する「眼腫瘍」「聴器がん」といったものもあり、不調を感じてもまさかがんだとは思わず治療が遅れてしまう、ということもあるかもしれません。
ここでは、そのような珍しいがんについて、一部を紹介します。
眼腫瘍とは、眼部に生じる腫瘍の総称です。眼部とは、眼球のほか、眼瞼や結膜、眼窩、涙腺などを指します。
成人の眼球内に生じる悪性腫瘍である「脈絡膜悪性黒色腫」は、国内での発症は年間に50名程度とされる珍しいがんです。腫瘍の位置や大きさによって症状は異なりますが、視力低下、視野異常などが多くみられます。
治療方針もその大きさによって異なりますが、小さい場合は経過観察、中腫瘍の場合は小線源治療、大腫瘍の場合は眼球摘出が妥当な選択と言われます。
小線源治療とは、放射性同位元素を金属カプセルに密封した放射線源を用いる治療法です。脈絡膜悪性黒色腫の場合は、これを手術で眼球壁の外から腫瘍に相当する部位に固定し、一定時間経過したところで除去します。
聴器がんは、外耳、中耳、内耳に発生するもので、100万人に1人と、発生の頻度は非常にまれです。良性であっても同様の症状が出るため、判断が難しく、診断を誤りやすい疾患のひとつでもあります。
初期症状として、耳の痛みが現れます。同時にかゆみや耳だれを伴う場合もあります。腫瘍が大きくなってくると、音が聞こえにくくなる、出血するなどの症状が現れてきます。ひどくなると顔面神経麻痺やあごの関節に障害が出てくることもあります。
珍しい疾患であり報告が少数であること、病変の広がりにも個人差があることから、ほかのがんと比べると明確な治療法が定まっていませんが、現在では外科的切除を中心とした治療が一般的となっています。
悪性リンパ腫の発生は、年間に10万人あたりで10人程度と報告されています。がん細胞の形態や性質によって30種類以上に細かく分類されていますが、大きくはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分けられます。発症の多くは非ホジキンリンパ腫で、悪性リンパ腫全体の90~95%を占めます。
症状としてはリンパ節の腫れがありますが、痛みがないために気がついたときには腫れがかなり大きくなっていることもあります。全身的な症状としては、発熱や全身の倦怠感、体重減少、寝汗などが現れます。
中心的な治療法は化学療法で、抗がん剤の注射や点滴、内服を行います。通常4~5種類の抗がん剤を組み合わせて治療が行われ、入院や外来治療で3~4週間を1コースとし、数コースを行います。
ここまで紹介したほかにも、珍しいがんは多種存在します。体に何か異常を感じた場合は、「大丈夫だろう」と放っておかずに、病院で診察を受けることが大切です。
(がんの発生頻度の数字は、希少がんセンターより引用)