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海外旅行・海外出張の前に予防接種を!インフルエンザ対策もお忘れなく

海外では、地域によっては感染症が流行していることもあります。海外に行く際は予防接種を受けましょう。海外でかかりやすい感染症と予防接種を受ける際のポイントをご紹介します。

出発の1ヵ月前までには、どの予防接種を受けるべきか医療機関で相談を!

海外旅行は、出発前の準備をしているときからワクワクした気持ちになるものです。しかし、海外は楽しいことばかりではありません。地域によっては、感染症が流行していることもあります。感染症にかからないようにするためには、予防接種を受けることが勧められます。国によっては入国する際に、特定の予防接種を受けたことの証明書を提示するよう求められることがあります。渡航しようとしている国で必要になるか、詳しくは在日大使館や検疫所などで事前に確認しましょう。

予防接種は複数回の注射が必要であり、また十分な免疫を獲得するには、接種後に一定の時間がかかります。そのためできれば出国の3ヵ月以上前、それが難しければ1ヵ月前までに、医療機関でどの予防接種を受けるべきか相談しましょう。受けることが勧められる予防接種は、渡航先や滞在期間によって異なります。厚生労働省検疫所のWebサイトに掲載されている「海外渡航で検討する予防接種の種類の目安」を参考にしてください。

海外でかかりやすい感染症

■黄熱

感染経路 蚊が媒介
主な症状 発熱、黄疸
生活上の注意
  • ・皮膚を露出しない
  • ・虫よけを塗る
  • ・殺虫剤を散布する
予防接種の対象者 感染リスクのある地域に渡航する人

■A型肝炎

感染経路 飲食物から感染
主な症状 発熱、黄疸、全身倦怠感
生活上の注意
  • ・水はミネラルウォーターを飲む
  • ・加熱した料理を食べる
予防接種の対象者 途上国に中・長期(1ヵ月以上)滞在する人。特に40歳以下

■B型肝炎

感染経路 性行為で感染
主な症状 発熱、黄疸、全身倦怠感
生活上の注意
  • ・行きずりの性行為を控える
予防接種の対象者 血液・体液に接触する可能性のある人

■破傷風

感染経路 傷口から感染
主な症状 口が開かない、けいれん
生活上の注意
  • ・皮膚を露出しない
予防接種の対象者 冒険旅行などでけがをする可能性の高い人

■狂犬病

感染経路 動物から感染
主な症状 恐水症(液体を飲もうとすると筋肉がけいれんするため水を恐れる)、けいれん
生活上の注意
  • ・動物に近寄らない
予防接種の対象者 イヌやキツネ、コウモリなどが多く、特に近くに医療機関がない地域へ行く人
動物研究者など、動物と直接接触する人

■ポリオ

感染経路 飲食物から感染
主な症状 発熱、手足の麻痺
生活上の注意
  • ・水はミネラルウォーターを飲む
  • ・加熱した料理を食べる
予防接種の対象者 流行地域に渡航する人

■日本脳炎

感染経路 蚊が媒介
主な症状 発熱、意識障害
生活上の注意
  • ・皮膚を露出しない
  • ・虫よけを塗る
  • ・殺虫剤を散布する
予防接種の対象者 流行地域に長期滞在する人(主に東南アジアでブタを飼っている農村部)

予防接種による重い副反応はまれだが、体質などによっては医師に相談が必要

海外でかかりやすい感染症の予防接種は、検疫所や特定の内科、「トラベルクリニック」「予防接種外来」「トラベラーズ外来」などを掲げている医療機関で受けることができます。予防接種を受けられる医療機関は、厚生労働省検疫所のWebサイトにある予防接種実施機関検索などから探すことができます。
子供も、大人と同様に予防接種を受けることができます。小さな子供は病気に対する抵抗力が大人ほど強くないため、感染症が発症しやすく、また発症した際は重症化する可能性が高くなります。感染症のリスクが高い地域へ小さな子供を連れて行くときは、予防接種の必要性について、医師と相談しましょう。

医薬品の使用によって生じる好ましくない作用は「副作用」と呼ばれますが、ワクチンの使用における好ましくない作用は「副反応」と呼びます。予防接種を受けた後に、注射をした部位の腫れや痛みなどの軽い副反応は起きることがありますが、ショック症状やけいれんなどの重い副反応はまれにしか起きません。ただし、アレルギー体質の人や、以前に予防接種で副反応が起きたことがある人は、そのことを事前に医師に伝えましょう。また、妊婦には接種できないワクチンがあるので、妊娠していることも医師に伝える必要があります。

渡航先が冬の場合は、インフルエンザの予防接種も忘れずに!

海外でかかりやすい感染症の予防は万全でも、特に日本が夏の場合はつい忘れがちなのが、渡航先がインフルエンザのシーズンであること。インフルエンザが流行する時期は北半球が12~3月、南半球が6~9月ですが、熱帯地域では年間を通して流行していることもあります。旅行中に多くの時間を過ごすバスや飛行機などの中は密閉されているため、咳やくしゃみの飛沫を通して感染するインフルエンザのリスクが高い空間だと言えます。日本では、新たなシーズン用のインフルエンザワクチンの予防接種が可能となるのは、一般的に10月以降です。海外へ行くときだけに限りませんが、予防接種や手洗い・うがいなどで、インフルエンザの対策を忘れずにしましょう。

予防接種に健康保険は適用されず、自費払いとなります。ワクチンの種類や受ける施設によって異なりますが、インフルエンザを除いた海外でかかりやすい病気の予防接種は、一般的に1回につき5,000~10,000円の接種を2回行います。予防接種は、自分の身を守るために受けるものです。わずかな手間やお金を惜しんだばかりに、取り返しのつかないことになる恐れもあります。「滞在期間は短いから大丈夫」「まわりのみんなは受けていないから、自分も受ける必要はない」などと考えずに、受けることをお勧めします。

せっかくの楽しい海外旅行。健康には万全の備えをして、安心して旅をお楽しみください。

公開日:2016/04/25