咽頭がんは大腸がんや乳がんなどのようながん検診はないため、早期発見には初期症状に気づいた時に早めに医療機関で検査を受けることが大切。咽頭がんの初期症状や予防について解説します。
テレビやインターネットなどで、咽頭(いんとう)がんのニュースを見聞きしたことがある方は少なくないはずです。しかし、この病気について、どれくらいの方々が理解できているでしょうか。
人間ののどは、鼻の奥から食道までつながり、食べ物と空気の通り道となっている「咽頭」と、俗に「のどぼとけ」と呼ばれる甲状軟骨(こうじょうなんこつ)に囲まれ、舌の付け根から気管までつながっている「喉頭」(こうとう)の2つに分かれます。咽頭は場所に応じて、上から「上(じょう)咽頭」「中(ちゅう)咽頭」「下(か)咽頭」の3つに分けられ、のどの一番下の前面(腹側)が喉頭、後面(背中側)が下咽頭という位置関係になります。
咽頭のがんは、できた位置ごとに「上咽頭がん」「中咽頭がん」「下咽頭がん」に分類され、それらの総称として「咽頭がん」という表現が用いられます。中咽頭がんと下咽頭がんは、口の中や食道にがんができている場合もあります。喉頭にがんができた場合は「喉頭がん」と呼ばれ、咽頭がんとは区別されます。
咽頭がんには、大腸がんや乳がんなどのようながん検診はありません。そのため早期発見には、のどや鼻の違和感や軽い痛みなどの初期症状に気づいたとき、医療機関で検査を受けることが大切です。咽頭がんの検査は、次のような方法で行われます。
視診 | 鼻や耳の穴に光を当てて直接観察する、あるいは小さな鏡が付いた医療器具を用いて、口から鼻やのどの奥を観察する検査。 |
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触診 | 口の中に指を入れて、がんがあると思われる部位を触ったり、首のまわりを触ってリンパ節の転移がないかを調べる検査。 |
内視鏡検査 | 鼻の穴や口から内視鏡を入れて、鼻やのどの奥をモニターで観察する検査。 |
生検(せいけん) | がんの疑いがある部位の組織の一部を内視鏡で切り取り、顕微鏡で調べる検査。 |
超音波(エコー)検査 | センサーを首に当てて、モニターに映る波形でリンパ節の転移や周囲の臓器との関係性などを調べる検査。 |
CT、MRI検査 | CTはX線を、MRIは磁気を利用して、首周辺を輪切りにした状態の画像を撮影することで、がんの広がりを観察する検査。 |
上咽頭がんは、40~70歳代の男性に多いがんですが、若い世代で発見されることもあります。はっきりとした原因はまだよく分かっていませんが、遺伝やEBウイルスという種類のウイルスに感染することなどが、発症と関係していると考えられています。
中咽頭がんと下咽頭がんは、50~60歳代の男性で多くみられます。発症リスクを高めると考えられているのは、長期にわたる喫煙や過度の飲酒、熱い食べ物や飲み物などです。中咽頭がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)という種類のウイルスが、発症に関連していると考えられています。下咽頭がんは、鉄欠乏性貧血で発症リスクが高まります。特に女性は鉄欠乏性貧血になりやすいので、注意が必要です。
咽頭がんを予防するには、野菜や果物をバランスよく食べることが大切です。栄養素の中では、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンに、予防効果があると言われています。咽頭がんに限らず、ほかの部位のがんの予防でも言えることですが、喫煙や飲酒を避け、バランスの良い食事を心がけましょう。
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