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青信号で渡りきれず、横断歩道で立ち往生…。もしかしてサルコペニア?

高齢になるのに伴い、筋肉の量が減少していく症候群、サルコペニア。青信号の間に渡りきれず、車道の真ん中で立ち往生してしまう状態であれば、サルコペニアが疑われます。この記事ではサルコペニアの進行を抑えるための食事・運動の方法を紹介します。

高齢者に起きる、「筋肉の喪失」を意味するサルコペニアとは?

高齢者に起きる、「筋肉の喪失」を意味するサルコペニアとは?

年齢を重ねることによる体の変化は誰にでもみられますが、健康的な生活を送るうえで見逃せないものもあります。その一つに「サルコペニア」があります。サルコペニアとは、高齢になるのに伴い、筋肉の量が減少していく症候群です。広い意味では高齢だけではなく、栄養不足、手術、多発性筋炎などの病気による筋肉の減少や、筋力の低下もサルコペニアとみなされます。ギリシア語で「肉」を表す「サルコ」と、「喪失」を意味する「ペニア」を組み合わせた「筋肉の喪失」を意味する造語から名付けられ、「加齢性筋肉減弱現象症」と呼ばれることもあります。

筋肉量の減少や筋力の低下は、主に活動量の低下によって引き起こされると考えられていますが、はっきりとしたメカニズムはまだ分かっていません。この現象自体は高齢者に限らず、25~30歳頃から生涯を通して起こるものであり、ごく自然なことです。しかし、サルコペニアの進行を放置した高齢者は、歩くのがだんだんつらくなり、やがて歩けなくなったり、転倒しやすくなったりします。また、サルコペニアにより筋肉に脂肪が浸潤して、牛肉の霜降りのような状態になるのに伴って肥満化する「サルコペニア肥満」になることもあります。

サルコペニアの診断は、65歳以上という年齢のほかに、秒速0.8m以上で歩けるかどうかが基準の一つとなります。秒速0.8m以上とは、目安として「横断歩道を青信号の間に渡りきれる速さ」と考えられます。健康な成人の歩行速度は秒速1.5mほどであり、一般的に横断歩道は秒速1mであれば渡りきれるように設計されています。そのため、青信号の間に渡りきれず、車道の真ん中で立ち往生してしまう状態であれば、サルコペニアが疑われます。このほかに、握力や筋肉量が正常かどうかも測定して、サルコペニアと診断されます。

高齢者の変化を、筋肉という視点から着目したのがサルコぺニア

要支援・要介護の状態になっている、あるいはそうなる危険性が高いとして、高齢者が気を付けるよう呼びかけられている状態に「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群:通称ロコモ)があります。バランス能力の低下や骨・関節の病気のほかに、筋力の低下もロコモの要因の一つとして数えられますが、これはまさにサルコペニアのことです。そのため、サルコペニアはロコモと重複した状態だと言えます。

高齢者の変化を、筋肉という視点から着目したのがサルコぺニア

高齢者が注意すべき状態として、ほかにも「フレイル」(虚弱)があります。これは、加齢に伴う認知機能や栄養状態、持久力などのほかに、バランス能力や筋力の低下なども含まれていて、やはりサルコペニアやロコモと重複していると考えられます。

食事と運動で、サルコペニアの進行を抑えよう!

筋肉の減少や筋力の低下は加齢とともに進行するため、サルコペニアの予防や進行の抑制は、意識的に行う必要があります。その方法としてまず挙げられるのが、食事の見直しです。筋肉をつくるのには、肉や魚、卵、牛乳などに含まれるたんぱく質が必要となります。高齢になると、これらをあまり食べなくなる人が多くなりますが、バランスの良い食事をすることが大切です。たんぱく質を構成する、アミノ酸のサプリメントなどを利用しても良いでしょう。

食事とともに、運動も欠かせません。高齢者の運動といえば、かつてはウォーキングや体操など、心肺機能や柔軟性を高めることを目的としたものが中心でした。しかし、これらの運動だけでは筋肉の増強は望めないため、筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動を取り入れる必要があります。レジスタンス運動は、下表のように大きく2つの方法に分類され、それぞれ長所と短所があります。医療施設や自治体のコミュニティセンターなどには、トレーニングマシンの使用が可能なところもあるので、問い合わせてみると良いでしょう。自宅で手軽に始めるのであれば、ロコモ予防の運動としても推奨されているスクワットなどがおすすめです。

レジスタンス運動は、いずれも10~15回程度の回数を1セットとして、それを無理のない範囲内で1~3セット行います。筋肉には疲労から回復する時間が必要なので、毎日ではなく2~3日に一回程度の頻度が適切だとされています。継続することがもっとも大切なので、無理のないペースで行いましょう

レジスタンス運動の分類

方法 具体例 長所 短所
器具を用いる
  • ・ダンベル
  • ・トレーニングマシン

…など

負荷の大きさを調整しやすい 器具が必要
自分の体重を利用する
  • ・スクワット
  • ・もも上げ
  • ・つま先立ち

…など

手軽に始められる 負荷の大きさを調整しにくい
公開日:2014/12/22