若い女性の愛好家が増えるなど、気軽に楽しめるようになった夏山登山ですが、山を甘く見たり準備不足から、道に迷った、病気になったという事故も多く報告されています。ここでは初心者が陥りやすいトラブルについて紹介します。
ほかの季節には登れない山の山開きがあり、長期休暇もとりやすいため、夏は登山者が集中するシーズンとなります。ひと昔前と比べ、カラフルでおしゃれなウェアや靴、登山用具も増え、若い女性の登山者が「山ガール」としてメディアで紹介されるなど、愛好家の裾野も広がっています。しかし、いくら気軽に楽しめるようになったとはいえ、山には危険がつきものということは、忘れてはいけません。
夏におおぜいの登山者が訪れる、ある県が公表した統計によると、「道に迷った」「(登山中に)病気になった」「疲労」などのほか、「バランスを失っての転倒」「踏みはずしやスリップなどによる転倒」といった事故も起きやすくなります。特に夏山登山の初心者が陥りやすいトラブルとして、「軽装での登山」「体力・技術・装備の不足」などがあります。これらは山を甘く見たことによる、準備不足や計画性のなさが招いた結果だと考えられます。
山の天候が驚くほど急激に変化するということも、初心者は想定していないことが多いようです。ついさっきまで晴れていたのが、あっという間に雷が鳴り響くという状況も、決して珍しくはありません。特に雷雲や夕立が発生しやすくなる夕方は、注意が必要となります。
さらに、山は高度が100m上がるごとに気温が0.6度下がると言われています。体感温度は、秒速1mの風が吹くと1度下がり、秒速20mの場合は2度下がります。標高2,000mの山であれば、平野部の気温が30度のとき、山頂で秒速20mの風が吹けば、体感温度は約半分の16度くらいまで一気に下がることになります。疲労が激しい場合、低体温症となってしまうケースもあります。
登山におけるトラブルを避けるには、事前の準備や計画が何よりも重要となります。それぞれの山の天気をピンポイントで予報する登山者向けのサイトもあるので、チェックすると良いでしょう。
登りたい山が、現在の自分の経験・体力・技術などに見合っているか、じっくりと考えます。
コースについての情報を事前に集め、十分な休憩がとれるような計画を立てます。山の夜は早いので、活動時間は夜明けから午後3時までとします。
暑さ・寒さ対策も考慮して、入念に準備すること。綿製品の衣服は、濡れると急激に体温が奪われるため避けるようにします。
悪天候の予報が出ているときは、その時点での天気が良くても、計画の中止や延期を第一に考えましょう。
道に迷ったら、位置の分かる場所まですぐに引き返すこと。場合によっては、出発地まで戻ることもありえます。山の電波状態は不確かなうえ、バッテリー切れなどの問題もあるため、携帯電話は万能ではないと心得ましょう。
複数人のパーティーで参加しましょう。「少しだけ経験のある人」ではなく、「その山に精通した達人」と行動をともにするのが望ましいです。
登山届は、もしものときの命綱です。入山前に、必ず登山口の提出箱や警察署などへ届け出ましょう。