患者さんが増えていることから注目されている「前立腺がん」。とくに中高年男性にとっては、他人ごとではないでしょう。自覚症状が出にくいため、積極的にPSA検査を受けて早期発見しましょう。
天皇陛下が手術を受けられたことが報道されたり、患者さんが増えていることから注目されている「前立腺がん」。とくに中高年男性にとっては、他人ごとではないでしょう。
国立がんセンターがん対策情報センターの統計によれば、その罹患率は、1975年の4.4%から、2002年にはおよそ10倍の47.1%に上昇。2001年の統計では、男性の罹患者数が多い部位の5番目となっています。
前立腺がんの主な原因には、(1)平均寿命が延びて高齢男性人口が増えた、(2)食の欧米化、(3)PSA検査の普及 などが挙げられますが、まだはっきりとわかっていない要因も多いです。
同じように中高年男性に多い前立腺の病気に「前立腺肥大症」が挙げられます。しかし、前立腺肥大症が、尿道の近くで起こるため、排尿障害などの自覚症状が出やすいのに対し、前立腺がんは、前立腺の外側に発生しやすいがんであるため、自覚症状が出にくいといわれています。
そこで、もっとも重要なのが、早期発見です。現在は、PSAと呼ばれる腫瘍マーカーによって早期発見できる可能性が高くなっています。自覚症状が出にくいがんだからこそ、積極的にPSA検査を受けたいもの。早期発見のメリットとしては、治癒できる可能性が高まることはもちろん、年齢や、本人の希望なども踏まえたうえで、治療法を選択することができるところにもあります。
前立腺の組織に対し、特別に反応するタンパク質である前立腺特異抗原のこと。血液検査によって調べることができるため、スクリーニングに使われています。
紹介したように前立腺がんには、大きく分けて3つの治療方法があります。しかし、手術の場合、ほかのがんと同様に体への負担も大きく、男性機能への影響や、尿失禁といった後遺症がしばしば問題となっています。
まずは、医師から提示された治療の選択肢のメリット、デメリットを確認し、自分が今後どのような生活を送りたいかといったことを踏まえて治療法を選びましょう。
そのほかにも、腹腔鏡(内視鏡)を使った手術や、直接前立腺に針を刺し、放射線を照射する(小線源療法)方法など、男性機能への影響が少ない治療方法も開発されており、選択肢の幅も広がっています。また、最近では、前立腺肥大症の治療に使われているHIFU(高密度焦点式超音波療法)を応用し、超音波でがんを焼く方法も開発が進んでいるといわれています。
しかし、これらの新しい治療法を選択肢に加えることができるかどうかは、発見されたときのがんの進行度によって大きく変わってきます。そのためにも年に1度はPSA検査を受け、早期発見に努めましょう。