疾患・特集

ここが違う!差が出るハブラシ選び

いつまでも自分の歯で食事を楽しみたい

ハブラシ

厚生労働省と日本歯科医師会が提唱する「8020運動」の推進や、歯の病気が全身に及ぼす影響などがメディアで取り上げられる機会が増え、ハミガキの習慣化が進んでいる。それに伴い、高齢になっても自分の歯を残せる人が増えているものの(グラフ参照)、一方では、歯周病患者の増加も指摘されている。

歯周病は、歯肉が腫れたり、出血する「歯肉炎」と、歯と歯ぐきの間に歯周ポケットができたり、歯根が埋まっている骨が溶け出してしまう「歯周炎」の2段階に大きく分けられる。歯周炎まで進行してしまうと、手術や再生療法、抜歯などの治療が必要となるが、歯肉炎の段階であれば、正しいブラッシングによるプラークコントロールだけで治すことも可能だ。「自分の歯を残す」だけでなく、自分の歯で食べる楽しみを味わえる「健康な歯を残す」ためには、ハミガキによるセルフケアが最も重要なのだ。

グラフ:1人平均現在歯数の年次推移

歯の状態によっても変わるハブラシ選び

正しいブラッシング方法と同様に、大切なのはハブラシ選びだ。その基準は「テレビコマーシャルを見た」「価格が安い」など個々に違いがあるだろう。しかし、ポイントだけは押さえておきたい。最も重要だといわれるのがヘッドの長さだ。下あごの前歯の内側に楽に入る大きさのもので、3cm以下のものを選ぶのが良いといわれている。また、植毛部が平らで、柄がまっすぐな握りやすいものがおすすめだ。奥歯の磨き残しが気になる人は、奥歯やすき間専用のハブラシも併用しよう。

ブラッシング方法別・ハブラシ選び

ブラッシング方法 ブラシの毛の長さ ブラシの硬さ、毛先の特徴
毛の脇を使って磨く 10~12mmくらい 毛の直径が太く、かためのもの
毛先を使って磨く 10mm以下 毛先が丸く、やわらかめ~ふつうの硬さ

歯ぐきに炎症があったり出血するときに、硬いハブラシで磨くと、歯肉を傷つけて細菌感染を起こしやすくなる。そんなときはいつもよりやわらかめのハブラシで磨き、炎症が治まったら元に戻すなど、歯や歯ぐきの状態に合わせて上手にハブラシを使い分けたい。また、ブラシがボロボロになるまで使い込むのも正しいブラッシングの妨げになるので、1ヵ月使ったら交換しよう。

知ってる?日本のハブラ史

江戸時代までの日本は、仏教の伝来とともに伝わったとされる楊枝を使って歯の掃除を行っていた。明治に入りハブラシが輸入されると、それを模倣して鯨のひげの柄に馬毛を植えた「鯨楊枝」と呼ばれるハブラシがつくられた。これが日本初のハブラシだという。
大正時代になると、柄はセルロイド、植毛部は馬、豚、ひつじの毛などが使われるようになってきた。この当時は、ハブラシを製造していたのが刷毛をつくる業者だったことから、「歯刷子」と呼ばれていたという。現在販売されているような樹脂とナイロン製のものがつくられはじめたのは第二次世界大戦後で、そのころから今の「ハブラシ」という呼び方が定着してきたという。

スグレものを賢く使おう!歯のセルフケアグッズ

歯や歯ぐきの状態によってグッズを使い分けよう

最近では、手動のハブラシだけでなく、高速のブラシストロークでプラーク除去を行う電動ハブラシや音波ハブラシも普及してきた。とくに音波ハブラシは、音波振動によってプラークを除去したり、口内細菌連鎖を破壊するだけでなく、歯周病予防のための歯肉マッサージにも適しているといわれ、人気となっている。

そのほかにも、歯や歯ぐきの状態によって使い分けができるさまざまなセルフケアグッズがある。とくに歯ぐきが痩せてくる中高年以降は、歯と歯のすき間の磨き残しを防ぐための歯間ブラシやデンタルフロスを利用して、歯周病の予防を徹底したい。歯間ブラシは、自分に合わないサイズのものを無理に使うと、歯ぐきからの出血の原因になるので、最初は歯科医師に相談して選ぶのがよい。またデンタルフロスは、抜けにくかったり、すぐに切れてしまうようでは、すでにむし歯になっている可能性もある。痛みがなくても、早めに病院でチェックしてもらおう。

参考文献:「歯ブラシ事典」学建書院

公開日:2007年6月4日