梅雨時の悩みの種――それが「カビ」。だが、じつをいえばカビと人間は、昔から持ちつ持たれつの関係を保ってきた。
例えば青カビが産生するペニシリンは、さまざまな感染症に効く薬として広く用いられてきた。日本酒や味噌、醤油作りに必要な麹にもカビは欠かすことができない。
ところが、最近になってカビと人間の共生関係が崩れつつある。その証拠に、カビによって起こる病気が増えてきた。これは、感染症の薬が増えたために、カビが薬に対する抵抗力を備えるようになったことが大きいといわれている。なかには複数の薬にも耐え、活動を続ける「多剤耐性菌」というカビもあるほど。
また、人間の方も病気になると頻繁に抗生物質を使ったり、抗生物質を投与したトリ肉や豚肉を食べたりするため、カビに対する抵抗力を失いつつある。
空中浮遊しているカビの胞子やその代謝物が原因に。空中を漂うカビは花粉よりも飛散しやすいため、なおさらやっかいだ。鼻の中に入ったり、食べ物から口に入ったりすると、アトピー性皮膚炎やじんましん、喘息、鼻炎、結膜炎などさまざまなアレルギー性の症状を引き起こす。
「夏になると咳が出る」という人は、夏型過敏性肺炎かも!?咳と微熱が続き、やがて高熱が出るのが特徴だ。毎年、夏に発症し、涼しくなる頃に治まる。原因はトリコスポロンというカビ。胞子を吸いこむとアレルギー反応が起こり、肺炎になる。古い日本家屋などに住んでいる人はとくに要注意だ。
アスペルギルスの別名はコウジカビ。みそ、しょうゆ、酒などの発酵にも使われる。食品、畳、カーペット、衣料品、エアコンダクトなどに潜む。肺に入ると、気管支肺アスペルギルス症の原因に。過去に肺の病気を発症している人はとくに危険!重い病気があって抵抗力が落ちている人、ステロイド剤を服用している人も気をつけよう。
カンジダは口の中や便、粘膜分泌物に存在するカビの一種。健康な状態なら、とくに人体に影響はない。ただ、抵抗力が落ちていると体内で繁殖し、皮膚や口の中、膣、目、消化器官、肝臓など全身に病巣ができてしまう。
おもにハトの糞便に存在するカビ。免疫機能が低下していると、口に入った菌に体が冒され、頭痛やめまい、目の痛み、吐き気などが起こる。さらに症状が進むと、肺炎や髄膜炎を起こし、最悪のケースでは死に至る。
原因は黒色酵母。風呂場のタイルの目地、排水溝のふたの裏などに発生し、低温でも死なない。胞子が体の中に入ると、肺炎が起こることがある。
発育に必要な要素は「栄養源」「水分」「温度」、そして「酸素」の4つ。それぞれの要素を見ていくと下のようになる!
栄養源:大好物はデンプン、糖分。パン、餅、菓子などをとくに好む。このほか人の垢やフケも大好き。なんとペンキ、プラスチック、アルミニウムまで食べる!
水分:湿度60~80%が好条件。乾燥した食品にも生えることがある。
温度:10℃~30℃で大発生する。
台所 | 水や火を使う台所は、カビにとって住み心地抜群!食品くずや調味料なども彼らの巣になりやすい。調理の際の油煙が壁や床に付くと、そこも繁殖源となる。 |
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浴室 | 高温多湿状態の浴室も格好の住処。体から落ちる垢やフケ、髪の毛もカビの大好物だ。 |
洗面所、トイレ | 歯磨きの後の食べかすやフケ、抜け毛などがカビの巣窟に!またトイレも水滴や温水便器の飛沫がデッドスポットになる。換気扇や排水溝もカビが増えやすい。 |
冷蔵庫 | カビの中には低温でも生存するものがあるので、過信は禁物。また、頻繁に扉を開け閉めしていると、庫内の温度は安定しない。 |
畳、じゅうたん | ハウスダストの多い畳やじゅうたんにも、カビは潜む。ペットや小さな子どもがいる家庭の場合は、とくに汚れやすいので注意を。 |
押入れ | 人の垢や汗、フケが付着した布団が入っている押入れもカビに目をつけられやすい。風通しも悪く、繁殖には好条件だ。 |
家電製品 | 洗濯機のふたの裏やエアコンのフィルターなどもカビがつきやすい。室内を浮遊する胞子が付着し、大繁殖する可能性大。 |
カビの発生を防ぐには、こまめな掃除と風通しをよくすることが大切。また、結露を防ぐため、室温コントロールも心がけたい。そのほか、こんな知恵を備えておくと便利だ。