疾患・特集

ちまたで話題の、「ジェネリック医薬品」って?

近年、テレビコマーシャルなどで頻繁にとりあげられ、よく耳にする「ジェネリック医薬品」。「低価格」「新薬と同じ効き目」などと紹介され、気になる存在だ。しかしその実体については今ひとつ分からないというのが現状だろう。「ジェネリック医薬品」とはいったいどんなくすりなのか、今のうちに理解しておこう!

「ジェネリック医薬品」って、どういうくすりなの?

医薬品は、大きく2つに分類できることをご存知だろうか?
ひとつは、「一般用医薬品」といって、駅前などにある薬局で、薬剤師と相談しながら買い求めることができるくすりのこと。もうひとつは「医療用医薬品」といい、医療機関で診察を受けるときに医師から処方されるものだ。

この「医療用医薬品」は、さらに2種類に分類される。まずは、たいへんな時間とコストをかけて研究・開発される「新薬」。そして「新薬」の特許が切れた後、開発メーカー以外にも製造・販売が認められるくすり。これが「ジェネリック医薬品」だ。
医療機関でおくすりをもらうと、最近は「おくすりのしおり」といった説明書がついてくる。そこにはくすりの効きめや飲むタイミングが書かれているが、そのくすりが「新薬」か「ジェネリック医薬品」かまでは書かれていない。そのため、私たちが日常的にジェネリック医薬品を意識する機会は、これまでなかったと思われる。

なぜ「ジェネリック医薬品」は低価格なの?

種類によって異なるものの、「ジェネリック医薬品」の薬価(国が定めている医療用医薬品の価格)は、新薬の約4~8割といわれる。その低価格はどうやって実現しているのだろうか?

通常、新薬を世に出すには150~200億円といわれる開発費と、10~15年という開発期間がかかる。新しい物質を見つけるところからはじめ、動物での非臨床試験、ヒトでの臨床試験など、さまざまな研究・実験、承認審査が必要だ。
これに対しジェネリック医薬品は、その成分・品質が新薬と同等であることを証明するテストをクリアすればよい。かかる費用は数千万円。この開発費用の差が、薬価の差となるのである。

「価格が低い分、品質が悪いのでは?」そんな心配は無用だ。
「ジェネリック医薬品」も新薬と同じように、薬事法によって有効性・安全性を確保するよう厳しく規制されている。さらに1998年から「品質再評価」という制度がスタートし、いったん販売が認められたあとも承認時と変わらず品質が維持されているかがチェックされる。そのチェック結果は「医療用医薬品品質情報集(通称「オレンジブック」)」に掲載され、私たちも書店で入手することができる。

あまり普及していないのはなぜ?

私たちが医療機関でもらうくすりには、どれくらい「ジェネリック医薬品」が含まれているのだろう。 日本におけるジェネリック医薬品のシェアは2003年時点で、約16%(医薬工業協議会調べ)。アメリカ、ドイツ、イギリスのシェアが50%前後であることと比較すると、その普及率は低い。背景には「ジェネリック医薬品」のかかえる、次のような問題点があると指摘されている。

日本人のブランド志向

医師も患者もくすりのブランド志向が強いといわれる。同じ成分のくすりでも、一流(新薬)メーカーのものが好まれる。

供給体制が整ってない

これまでの供給量が少なかったため大量の発注に対応できず、欠品を起こす恐れがある。

情報量に限界がある

新薬メーカーで医師に情報を伝えるMR(営業職)が1,000人規模なのにくらべ、10分の1程度の規模しかない。そのため肝心の医薬品情報が医師に伝わらない。

しかし、2002年に国の方針として「ジェネリック医薬品」の使用促進が掲げられたのを機に、国立病院や大学病院などで採用が相次ぐようになった。また、2006年4月からは、医師が処方せんに合意のチェックを入れれば、患者の希望によって「ジェネリック医薬品」を手渡してもらうことができるなど、状況は大きく変わりつつある。年々増えつづける医療費を抑えるためにも、国は価格の低い「ジェネリック医薬品」を推進していく姿勢にあるのだ。
もちろん、世の中にある病気を克服するためには、これまでにない効き目の新薬を開発することは必要だ。ただし、すでに一定の効果が認められ、多くの患者にもちいられているくすりであれば、患者負担の少ない「ジェネリック医薬品」が使用されることに、意義があるだろう。

新薬と「ジェネリック医薬品」、この2つのくすりがケースバイケースで使い分けられていく、それが今後の医療の姿となりそうだ。

ジェネリック豆知識

「ジェネリック(generic)」とは、「一般的な」あるいは「普及した」という意味。欧米では、商品名ではなく、薬の有効成分である一般名(ジェネリックネーム)で処方することから、「ジェネリック医薬品」と呼ばれている。

公開日:2006年4月17日