糖尿病は症状のでにくい病気。血糖値が正常範囲内という結果が出ても、安心するにはまだ早いようです。空腹時血糖値が正常でも、食後血糖値をはかると糖尿病に該当してしまうことも…。まずは自分の血糖値を知って、かくれ糖尿病患者でないかチェックしておきましょう。
その病名から「尿のニオイが甘い」と連想されることの多い糖尿病。古代インド史にも「蜜尿」と記述されるなど、大昔から尿の状態が糖尿病のサインとして注目されていたようです。糖尿病の自覚症状は通常、「痛い」「高熱が出る」といった苦痛をともなうことはありません。しかも初期の段階ではほとんど症状に気づかないため、病気と認識できず、見過ごしてしまいがちです。
これらの症状を放置すると、しだいに次のような症状があらわれます。
※網膜症・神経障害・腎症は糖尿病の3大合併症
じつはこれらの症状が出るのは、糖尿病がかなり進行している証拠。自覚症状というより、もはや合併症の段階です。失明したり、腎臓のはたらきが悪くなって人工透析が必要になるなど、不自由な生活を余儀なくされることになります。
このように、気づかないうちに病気が進行し、いつのまにか手遅れになってしまうことから、欧米では糖尿病をサイレント・キラー(静かなる殺し屋)とも呼ばれています。
では、自覚症状の出にくい糖尿病を診断するには、どのような方法があるのでしょうか?糖尿病は、次のような状況で発見されるケースが多いようです。
糖尿病は、慢性的に血糖値の高い状態が続く病気です。したがって、血液中に含まれる血糖の量を調べることで、糖尿病であるかどうかが診断できます。
空腹時血糖値とは、糖尿病かどうかを調べる上で最も基本的なデータです。126mg/dLを超えると糖尿病と診断されます。
一方、食後血糖値とは、食事から2時間後の血糖値をはかるもので、食事でとりこんだブドウ糖がうまく利用されているかどうかを知る目安となります。200mg/dLを超えると糖尿病と診断されます。
血糖とは、血液中にふくまれるブドウ糖のこと。私たちが主食として食べている米、パン、めん類などに含まれている炭水化物の多くは、ブドウ糖になる。腸から吸収されて血液中に溶けこんだブドウ糖(=血糖)は、インスリンというホルモンのはたらきにより脳や筋肉などに送りこまれ、全身を動かすエネルギー源となります。ところが、糖尿病になるとインスリンの量が不足するため、ブドウ糖が必要なところに送られず、血液中にたまって高血糖となります。
血糖値が正常範囲内という結果が出ても、安心するにはまだ早いようです。現在、地域や職場の健康診断で調べるのはおもに「空腹時血糖値」です。朝食抜きで採血した覚えのある人は、この「空腹時血糖値」を調べたことになります。
ところが糖尿病になりはじめの人は、この「空腹時血糖値」が正常でも、「食後血糖値」をはかると糖尿病に該当してしまうことがあります。
健康な人なら食事をするとただちにインスリンが分泌され、食後30分前後をピークに血糖値は下がります。糖尿病になりはじめの人は、食後にインスリンが分泌されにくくなっているため、血糖値が上がってしまいます。しかし時間がたつと正常値に戻るため、空腹時の検査では異常が見つからないのです。
実際に、日本で多くの人々を対象に行われた調査でも、「空腹時血糖値」だけでは糖尿病患者の約半数が見逃されているという結果が出ています。つまり、かくれ糖尿病がたくさん存在するというわけです。
糖尿病はとくに症状の出にくい病気です。まずは自分の血糖値を知って、かくれ糖尿病患者でないかチェックしましょう。自分の体に関心をもつことは、あらゆる生活習慣病予防の第一歩です。
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