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事故の危険性も!まぶたの不快なピクつきに、ご用心

目のまわりが自分の意志と関係なくピクついてしまう。そんな目の異常は、“疲れ”のせいとして片づけられがち。でもそんなけいれんにも、いろいろな症状がある。それを引き起こしているのも、単なる目の疲れだけではないらしい。目のまわりがけいれんする病気から、思わぬ事故につながる可能性もあるという。これはちょっと要注意だ。

疲れが原因のピクつきには…

目を酷使することが多い現代人

パソコンやテレビ、ゲームなど、目を酷使することが多い現代人。パソコンに向かいながらの目のピクつきは、誰でも一度や二度は経験したことがあるはず。疲れた目を放っておくと、症状が回復しにくくなり、いわゆる「眼精疲労」になってしまう。まずは、軽い症状のピクつき対策を覚えておこう。

目の疲れを防ぐには、やはり休息が一番。手のひらで温めながら目をじっと閉じたり、アイマスクをするだけでも、目は癒される。長時間パソコンに向かっている場合などは、血液の循環が悪くなっていることが多い。疲れがひどい場合は、50度前後に温めた蒸しタオルでホットパックをし、さらに冷やしたタオルで引き締めると血液の循環が促される。
睡眠は最低6~7時間はとりたいもの。

食生活にも注意をしたい。目の細胞や粘膜の新陳代謝を保つビタミンAを中心に、ビタミンC、ビタミンEをバランスよく。メガネがあっているかどうかや、パソコンやテレビを見る時の姿勢に気を配るだけでも、目の疲労度は軽減される。まずは不快なピクつきのもとになりやすい、目の疲れをケアしてみよう。

目のまわりがけいれんする病気は、こんなに!

いくら疲れをケアしても、ピクつき、つまりけいれんが続くようなら、それは専門的なケアを必要とする病気かもしれない。しかし、一口にけいれんといっても、ピクつく場所や起き方は、実はさまざまだ。けいれんの特徴から、目のまわりがピクピクとけいれんしやすい病気のいろいろを探ってみよう。

下まぶたがピクつく「顔面ミオキミア」

症状 おもに下まぶたがピクつく
けいれんの
メカニズム
眼輪筋(まぶたを開閉する筋肉)の一部分に異常な興奮が生まれてけいれんが起きる
原因 ワープロやパソコンの長時間操作などによる眼精疲労、寝不足など。外傷などによる顔面神経まひの後遺症、脳幹部にできた炎症や腫瘍、多発性硬化症などの疾患による場合もある
検査方法 眼輪筋を針筋電図で検査する。特徴的な筋放電パターンが観察された場合に、この病気であると特定される。治療前にはMRI検査などで基礎的な疾患の確認をするのが普通
治療 対症療法として抗けいれん薬の内服

さざ波状の軽いけいれんが起こる「片側顔面けいれん」(片側顔面れんしゅく)

症状 片方の目のまわりでさざ波状の軽いけいれんが起こり、しだいに同じ側のほおや口元、あごへと速いけいれんが広がっていく。症状が進むと顔がゆがむほどになることも(通常は片側に症状が出るが、まれに両側に出ることもある)
けいれんの
メカニズム
顔面神経が脳幹から出たところで興奮し、眼輪筋と顔の筋肉をともにけいれんさせる
原因 脳幹から出た顔面神経を、動脈が圧迫するなどの障害によって起こると考えられている
検査方法 症状がある程度進行している場合は、問診や症状の観察で診断。なお、脳梗塞などの病気でも同じような症状を起こすことがあるため、治療前にはMRI検査などで基礎的な疾患の確認をするのがのぞましい。「片側顔面けいれん」の治療実績が多い眼科か、病院内で神経内科や脳外科と連携治療ができる眼科、あるいは神経内科での診療を受けるのが望ましい
治療 対症療法として抗けいれん薬。血管の圧迫を解除する手術療法もある。近年では「ボツリヌストキシン療法」も実施

無意識のまばたきが続く「眼瞼(がんけん)けいれん」

症状 眼瞼(がんけん)けいれん まぶしい感じにともなって、無意識のまばたきが続くような症状から進行する。はじめは下まぶたから、次第に両目の上下まぶたで同じようにけいれんするのが特徴。けいれん回数が増えさらに症状が進むと、突然まぶたが開かなくなり、機能的な失明状態になってしまう
けいれんの
メカニズム
眼輪筋が異常な、意志と関係のない収縮を起こす
原因 原因は不明。大脳基底核の機能異常と考えられている
検査方法 症状がある程度進行している場合は、問診や症状の観察で診断。なお、脳梗塞などの病気でも同じような症状を起こすことがあるため、治療前にはMRI検査などで基礎的な疾患の確認をするのがのぞましい。「眼瞼けいれん」の治療実績が多い眼科か、病院内で神経内科や脳外科と連携治療ができる眼科、あるいは神経内科での診療を受けるのが望ましい
治療 軽度の場合は、パーキンソン病治療薬や精神安定剤、筋弛緩薬、抗てんかん薬などを使用。重度の場合は、目のまわりの筋肉の一部を切除する「眼輪筋部分切除術」や、目のまわりの筋肉を支配している神経の切断手術など。近年では「ボツリヌストキシン療法」も実施

思わぬ事故につながる、眼瞼けいれん

ところで、上記の中でも「眼瞼けいれん」は、意志とは関係なく突然両まぶたが閉じてしまうことがあり、電柱や物、歩行者に衝突するなどの事故につながる恐れもあるという。その症状から近年注目されている治療法について、くわしく見てみよう。

グラフ:眼瞼けいれん患者に多い歩行中のトラブル(複数回答)

異常なまぶしさや、まばたきの増加などが「眼瞼けいれん」の初期症状。目が乾くことも多く、しばしば「ドライアイ」「過労」などと誤診される。さらに症状が進むと、けいれんが起こったり、指でまぶたを持ち上げないと目を開けていられない状態になる。単なる疲れが原因ではないため、休養をとっても自然治癒することはない。患者数は全国で推定10万人ともいわれ、40~70歳代の女性が多いという。

一方、治療法として近年注目を浴びているという「ボツリヌストキシン療法」とはどんな方法なのだろうか。これは、食中毒の原因にもなる猛毒「ボツリヌス菌」の毒素「ボツリヌストキシン」を目のまわりに注射し、軽い顔面神経麻痺を人工的に起こさせ、けいれん症状を抑えるというもの。ボツリヌストキシン自体は菌そのものではなく菌が出す毒素であるため、菌が繁殖した時に起こる中毒症状などの心配はない。ちなみに美容外科で表情ジワをなくす治療で用いられる「ボトックス®」も、このボツリヌス菌毒素製剤である。
この「ボツリヌストキシン療法」は根治治療ではなく対症治療。一回の注射で3~4ヵ月間効果が持続するが、再発したら2ヵ月以上間隔をあけて注射を繰り返す必要がある。

目のピクつきに悩まされたら、まず観察をしてみよう。どこがどのようにけいれんするのか。その前に目の不快な症状はなかったか。疲れをとるのも大切だが、思わぬ事故を引き起こさないうちに、適切な診療と検査をうけることが肝心だ。

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公開日:2005年10月31日