女性の更年期障害は有名ですが、じつは男性も無縁ではありません。おもな症状は、うつや性機能減退など。でもこれらの症状が起こっているにもかかわらず「ちょっと疲れただけかも」などと見過ごされていることも多いようです。早ければ30代で発症することもある「男性更年期障害」。なにかとストレスの多い人は要注意です。
「更年期障害は閉経期の女性に起こるもの」と思いこんではいませんか?でも、男性にも更年期障害は起こりうるものです。引き金となるのは、男性ホルモン(テストステロン)の減少です。そもそもこのホルモンの分泌量がピークとなるのは20~30歳。その後、加齢とともに低下していきます。量には個人差がありますが、減り方も人によってまちまちです。通常は女性のように急激に減ることはありません。ですが、ときどき減少のスピードが速い人がおり、こうした場合に更年期障害の症状が見られるとされます。発症時期は40代半ば~50代半ば。早ければなんと30代で発症することもあるようです。
では、男性ホルモンが低下するのは、どのような原因によるものなのでしょうか?最も大きな原因は、もちろん加齢です。年とともに性ホルモンが減っていくのはしかたのないことです。でも、もうひとつ重大な原因があります。ストレスです。
ストレスと男性ホルモンの分泌量には密接な関係があります。性ホルモンの分泌に関わっているのは、本能をつかさどる大脳辺縁系です。大脳辺縁系は、理性や思考をつかさどる大脳新皮質がはたらいている時には、活動を止めてしまいます。ストレスがかかると、大脳新皮質が酷使されるため、大脳辺縁系は休止状態となります。おかげで、性ホルモンの分泌が妨げられてしまうのです。
男性の場合、仕事で失敗したり、上司に叱られたりして「オレはダメなヤツだ」などと落ちこむと、大きなストレスにつながりやすいようです。ほかにもリストラへの不安、住宅ローンや教育費など金銭面の問題、身内の介護など、あらゆる要素がストレスの原因となります。
出典:米国・セントルイス大学のモーリー医学博士が作成、札幌医科大学医学部泌尿器科 伊藤直樹助教授の訳による
上記の症状のほか、血液検査での男性ホルモン(テストステロン)量も診断の目安となります。セルフチェックで男性更年期障害の疑いがあった人は、医療機関を受診して調べてみましょう。
男性更年期障害の治療法として有名なのが「ホルモン補充療法」。男性ホルモンを注射などで補い、症状をやわらげようというものです。ただし、テストステロンなど強力なホルモン療法の長期使用は、前立腺がんや前立腺疾患、心疾患リスクを高めるという説もあります。
抗うつ薬や抗不安薬、バイアグラなどを服用し、うつ症状や勃起障害などを改善します。もちろん、薬で根本治療ができるわけではありませんが、困った症状はある程度解決できるはずです。
薬物療法とあわせ、カウンセリングをおこないながら症状の改善を目指す医院もあります。名づけて「スローセラピー」。バランスの崩れた自律神経を整える「自律神経訓練法」や考え方、感じ方の癖を直していく「認知行動療法」も実施します。妻が同席し、話を聞く場合もあります。
ヤマイモには性ホルモンの前駆物質「DHEA」の合成に必要な栄養がたっぷり。週2~3回、半本ずつ食べるようにすると、効果があるという説もあります。
更年期だからと落ちこんだり、自分を否定したりせず、「これも体からのサイン。ここらへんで一休みして、元気を取り戻そう」と前向きにとらえるようにしましょう。
■関連記事