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夏の不調もスッキリ!お役立ち薬味カタログ

もともと医学用語の薬味には、食欲を増進させるほか、冷えた体を温めたり、殺菌効果などさまざまな作用がある。代表的な日本の夏の薬味について、その役割をご紹介。

夏の定番料理には、なぜ薬味がついてくる!?

暑くて食欲があまりないからと、そうめんなど、つい冷たくてあっさりした食事に偏ってしまいがちな季節。そんなときこそ薬味の出番だ。もともと、薬味は医学用語であり、中国最古(1~2世紀)の書物「神農本草経」にもその記述がある。さまざまな薬味の使い方には、先祖の知恵がたくさん隠されているのだ。

日本は、世界の中でも珍しくスパイスが発達しなかったかわりに、生で食べてもおなかを壊さないよう薬味を使ってきた。食欲を増進させる、水分の摂り過ぎで冷えた体を温める、食べ物の腐敗や、食あたりを防ぐ殺菌作用などがある。薬味は、夏を乗り切るスタミナをつけるためには欠かせない、小さな主役。代表的な日本の薬味の役割を紹介しよう。

夏にはコレ!薬味カタログ

わさび

わさび<

日本の深山の清流に自生していたアブラナ科の植物で、古くは奈良時代から食用として利用されてきた。江戸時代に栽培が始まり、握り寿司の必需品となる。直射日光の当たらない、山間の清流に育つ。チューブ入りわさびの香りが、生のわさびの爽やかな芳香にかなわないのは、ほとんどが西洋わさびを使っているため。ちなみに、西洋わさびはローストビーフの薬味の定番。

薬効:
辛味成分のアリルからし油が、抗菌、虫除け、抗カビ効果を発揮。食中毒を引き起こすO-157、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌などの増殖を抑える作用もある。6-メチルスルフィニルヘキシルからし油という成分は、抗がん作用があるとの報告も。そのほか、わさびには、食欲増進作用、血栓予防作用、鎮痛、止痢作用、骨増強作用などがある。

料理マメ知識:
握り寿司や刺身にわさびを使うのは、強い防腐・殺菌作用を利用したもの。 わさびは金気を嫌うので、生のわさびをすりおろすときは、できれば目の細かいサメ肌のおろしを使い、茎のほうから練るようにする。金属のおろし金を使うときは、すった後にすぐ別の容器に移すこと。保存するときは、ぬらした新聞紙に包みラップして、冷蔵庫に入れておけば1ヵ月はもつ。

みょうが

みょうが

熱帯アジアが原産で、本州以西の日本各地で自生するショウガ科の多年草。初夏から秋にかけて地下茎の先端から伸びる花穂の開花前のものを食用とする。若い茎を、光を当てずに栽培したものは、「みょうがたけ」と呼ばれる。野菜として栽培しているのは、日本だけ。東京の地下鉄丸の内線にある「茗荷谷」駅は、江戸時代にこの辺りがみょうが畑だったことからくる。

薬効:
α-ピネンという精油が、胃のはたらきを活発にするため、食欲増進に役立つ。大脳皮質を刺激し、頭をしゃきっとさせる。血行をよくする作用もあるので、風邪のひき始め、リウマチ、肩こり、腰痛、神経痛にもよい。 また、ホルモンのバランスを整えるので、生理不順、更年期障害、生理痛などに有効。熱を冷まし解毒効果があるので、夏バテによい。ちなみに、みょうがを食べると物忘れがひどくなるというのは迷信。

料理マメ知識:
香りがきつすぎると感じたら、刻んでからさっと水にさらすとよい。肉と一緒に炒めて付け合せにすると、脂っこさが和らぎ食べやすくなる。漬物に刻んだみょうがを混ぜると風味がよくなる。

しょうが

しょうが

熱帯アジア原産で、中国では紀元前500年頃から薬用にされ、日本には縄文時代の後期に、稲作とともに伝えられたらしい。厄除けや魔除けとして使われることもあり、江戸時代には神社の祭りに、ショウガ飴やショウガ湯を売る店が出た。

薬効:
辛味成分のショウガオールは健胃、発汗、解熱、保温作用があり、風邪のひきはじめや消化器疾患、呼吸器疾患に有効。唾液のジアスターゼの作用を促して消化を助け、細菌の活動を抑える。血行をよくするはたらきがあるので、発汗を促し代謝をよくする。

料理マメ知識:
親指大くらいの量をすりおろし、湯のみ1杯の熱湯に入れ、ガーゼで漉して飲めば、吐き気やむかつき、げっぷが治まる。強い辛味で味覚と臭覚を麻痺させるわさびに対し、臭みそのものを消すしょうがは、臭みの強い青魚の刺身や寿司に使われる。

葉ネギ

葉ネギ

日本へは奈良時代に中国から伝来し、食用として栽培されてきたと言われる。ネギにはさまざまな種類があるが、夏の主役はやはり青い部分を食べる葉ネギ。関西で主流の青ネギ、埼玉県で作られる岩槻ネギなど。九州特産の万能ネギも、よく出回っている。

薬効:
独特の香りと味の元となる硫化アリルは、血行をよくし、解毒作用、消化促進作用がある。白ネギと比べ、粘膜を丈夫にするカロテンは5倍以上、抵抗力をつけ美容によいビタミンCは2倍以上も含む。B1、B2、E、カルシウム、リンなども豊富。疲労回復、不眠などにもよい。

料理マメ知識:
体を温め辛味の元となるアリシンは、長時間置くと揮発してしまうため、なるべく切ってすぐ使うことを心がけよう。

実山椒

実山椒

柚子と並んで日本料理の二大香辛料とされる。縄文時代から使われてきたらしく、古くは「ハジカミ」と呼ばれていた。柚子もそうだが、庭木としてよく植えられているのは、昔から頻繁に使われてきた証といえるだろう。若葉は「木の芽」として使われ、ちりめん山椒などに用いる実山椒は6月に出回る。

薬効:
実には精油が含まれており、その香り成分のシトロネラールや辛味成分のサンショオールなどが、中枢神経を刺激し内臓のはたらきを活発にする。実山椒には、健胃、解毒、消炎、整腸などの作用もある。

料理マメ知識:
ぬか床に混ぜると、漬物の風味がよくなりぬかの保存性も高まる。辛味が非常に強いため、摂り過ぎには注意。

そのほか、青じそもこの季節に活躍する薬味の代表的存在だ。爽やかな香りで食欲を高め、殺菌、防腐、解熱などの作用がある。くわしくは、「今が旬!シソこそ現代人の強い味方」を。

公開日:2005年7月4日