韓国・朝鮮料理がヘルシーで美容によいと言われるけれど、いったい何が健康によいのだろうか?隣国の食文化における健康のヒミツをご紹介!
健康によい知恵が詰まった韓国・朝鮮の食文化。どのようにして形成されたか歴史を辿ってみたい。
韓国・朝鮮料理といえば、ゴマ油ととうがらしをたっぷり使うのはご存知のとおり。古代、朝鮮半島では馬、牛、猪、犬など肉食も盛んだった。仏教が広まった4世紀以降は、日本と同様、肉食は表向きなくなる。北部では粟、キビなどの雑穀、南部では米、麦を中心に、野菜や山菜を組み合わせる食生活となった。栄養のバランスをとるために、ゴマ油などの植物性油が盛んに使われるようになった。野菜の和え物、ナムルにゴマ油をふんだんに使うのは、この時代の名残りといわれる。
13世紀に、狩猟民族の蒙古の支配下に入ったことが、肉食禁止のタブーがなくなる大きなきっかけとなる。李朝時代には、公式に肉食が認められ、宮廷料理にも牛、豚、鹿、羊、鶏、雉などが入る。肉料理には臭みを消す香辛料がつきものである。最初は日本から輸入したコショウが使われたが、豊臣秀吉の朝鮮出兵により輸入が中断されてしまう。代わりに使われるようになったのが、自国で栽培できるとうがらしというわけだ。
韓国・朝鮮料理の特徴は、さまざまな食材・調味料・香辛料が作り出す、複雑な味のハーモニーにある。その要が、料理に用いる薬念(ヤンニョム)にある。薬念とは、食塩、砂糖、しょうゆ、味噌、塩辛、ゴマ、ゴマ油、唐辛子、コショウ、ニンニク、ショウガ、ネギ、香菜、食酢など、調味料・香辛料の総称である。日本の薬味に近い。
薬念の薬という文字には、薬のように少量で効果を出すという意味と、使う薬念そのものが漢方材料となるという意味が含まれている。例示した食材は、いずれもさまざまな健康効果が認められているものばかり。不足しがちなビタミン・ミネラルが豊富なゴマや、脂肪を燃焼させ肥満を防ぐとうがらしは、生活習慣病予防にもよいといわれる。さらに、ニンニクは疲労回復、しょうがは風邪の予防になる。また、これらの薬念を組み合わせることで、高血圧などの原因になる塩分の摂り過ぎを防ぐこともできる。韓国・朝鮮料理のヘルシーさは、味付けにまで行き渡った漢方の概念にも現れている。
韓国・朝鮮料理の味には、食材でもあり、味付け材料ともなる発酵食品も重要な役割を果たしている。発酵という過程をたどることで、食品の栄養分は何倍にも増える。微生物がたんぱく質をアミノ酸に、炭水化物を単糖類にするなど吸収しやすい低分子に分解する。また、微生物自身が持つ栄養やミネラルも加わる。日本にも、味噌やしょうゆ、酒など、発酵を利用した食品が豊富にあることはご存知のとおり。韓国・朝鮮料理の特徴を決める代表的な発酵保存食について、その特徴と健康効果を紹介しよう。
韓国・朝鮮の味の代表的存在であり、世界でも独特な発酵食品である。日本の漬物、西洋のピクルス、中国の搾菜(ザーサイ)など。漬物類は世界各地で発達しているが、キムチのように動物性食品のほか多様な材料を利用したものはあまり例がない。
日本では、刺身にはわさび醤油が定番だが、韓国では、コチュジャンを酢で溶いたものをつけて食べるのが定番。チゲに入れたり、和え物、焼肉、混ぜご飯の味付けと、さまざまな料理の調味料として活躍する薬念のひとつ。