疾患・特集

若者のおなかが大ピンチ!?潰瘍性大腸炎&クローン病

「なんだかこの頃、お腹の調子が…」というあなた。ただの下痢とたかをくくらないでほしい。最近、増えている「潰瘍性大腸炎」の可能性もあるからだ。潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜がただれたり、潰瘍ができたりする病気。最悪の場合は死に至ることもあり、侮れない病気だ。とくに若年層に多いという、謎の現代病に迫ってみよう。

潰瘍性大腸炎が現代病として、現在急増中!

1970年代に特定疾患(難病)として指定された潰瘍性大腸炎は、かつてかなりめずらしい病気とされてきた。ところが最近、どういうわけか患者数は急増中。1985年には1万人超だったが、2002年には、なんと7万7000人以上(平成14年度 特定疾患医療受給者証交付件数より)となっている。特定疾患のうちでも、最も発病者が多い。しかも、発症しやすいのは若年層。男性では20代前半、女性は20代後半が目立つ。


厚生労働省医療受給者証交付件数より


厚生労働省特定疾患難治性炎症腸管障害調査研究班 平成4年度研究報告書より

詳しい原因は今もって不明だ。有力なのは「免疫異常説」。細菌などの外敵から細胞を守るはずの免疫機能が反乱を起こし、自ら腸を攻撃してしまうのである。おかげで粘膜に炎症が起こり、さらに白血球が異物を排除しようと、粘膜にはたらきかける。こうして、炎症がますますひどくなっていくのだ。

背景には、近頃多くなっている「肉食」傾向が影を落としている、との指摘も。脂肪の摂り過ぎが、腸の過敏な反応を招いている、というのだ。このほか、心身のストレスが一因になっているという説もある。

発病しているのに気づかないケースも多い

この病気の怖いところは、発病を見過ごされがちな点。おもな症状が、下痢や血便、腹痛など、ありふれた胃腸病と似ているため、診断が遅れる可能性があるのだ。

見過ごされて重症化すると、発熱、貧血、急激な体重減少が起こるようになる。腎結石、膵炎、皮膚や目の異常などの合併症を繰り返し、やがては大腸がんを発症することも。もっと重症の場合は、手術で大腸をすべて切除してしまうケースも少なくない。以下のような初期症状が見られる場合は、早めに専門医を受診しよう。

こんな症状があれば専門医を受診しよう

  • ●便がだんだんゆるくなってきた
  • ●血便がある
  • ●けいれん性の腹痛がある

よく似た病気「クローン病」

同じく、厚労省の特定疾患に指定された病気に「クローン病」がある。この病気の症状も、潰瘍性大腸炎によく似ているが、潰瘍性大腸炎が大腸のみに起こるのに対し、クローン病は小腸にも発生する点で異なっている。

クローン病の おもな症状は、腹痛や発熱、体重の減少、貧血、皮膚や目の異常、痔など。悪化すると大出血につながりかねない。長期化するにつれ、腸壁が厚くなって柔軟性が失われ、10年で手術することもある。患者数は全国で2万人超。毎年、400人近く増えており、やはり20~30代で多い

いずれにせよ、若者の腸に今、なんらかの異変が起きつつあるのだ。

潰瘍性大腸炎やクローン病にならないために

いずれも「予防法の決定打はない」とされる病気だが、普段の心がけ次第でリスクは減らせる。生活習慣や食習慣のうえで、気をつけてほしいのは以下の2点だ。

その1:動物性たんぱく質や脂肪の摂り過ぎに注意!

肉や乳製品などを食べ過ぎないようにしよう。アルコールや刺激物はほどほどに。ファーストフードやスナックばかり食べず、魚や野菜を中心とした食生活に切り替えて。

その2:心身のストレスはためこまない

規則正しいライフスタイルを心がけ、習慣的にスポーツを。ムリを続けると、心身の疲労から免疫機能も狂いがちになる。

早めにきちんと治療を受ければ、手術をしなくても改善する可能性は高い。健康診断などでこまめに体調チェックを行い、早期発見をめざすようにしよう!

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公開日:2005年3月22日