肥満や高血糖、高中性脂肪、高コレステロール、高血圧…。これらの危険因子が重なった状態が「メタボリックシンドローム」です。危険度が高まるとさまざまな生活習慣病が発症し、場合によっては死につながることもあります。恐ろしいシンドロームの真相に迫ってみましょう。
高血糖症、高血圧症、脂質異常症――いずれも中高年がかかりやすい生活習慣病です。ところで、これら3つの病気は、共通の根っこから発症すると考えられています。すなわち、脂質代謝異常、糖代謝異常、血圧異常、内臓肥満などです。
こうした根っこがひとつならまだしも、複数持ち合わせている場合は、病気のリスクは高くなります。最悪の場合は、いくつかの病気が同時多発する可能性もあります。メタボリックシンドローム、すなわち「代謝異常症候群」は、まさにこうした複数の危険因子を抱えている状態を指します。
WHO(世界保健機構)によれば、このシンドロームにかかっている人は、現在、世界的に増え続けているといいます。米国では、実に成人の4人に1人が該当するほどとか。食事が欧米化している日本人も、けして無縁ではありません。 診断のめやすは、次のようになります。
■必須項目
ウエスト周り 男性85cm以上、女性90cm以上
■選択項目
※次の3項目のうち2項目以上該当
もし該当する場合、糖尿病を発症するリスクは通常の9倍。心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクは3倍です。また、それぞれの異常度はさほど高くない、という人も含まれるので警戒が必要です。
それでは、メタボリックシンドロームはどうして起こるのでしょうか。はっきりとはわかっていませんが、大きな要因は主にふたつあります。体質と生活習慣です。
体質については不明な点が多いようです。今のところ有力とされているのは、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの抵抗性や、脂肪細胞の機能異常が関わっているのでは、という説です。
では、肥満がメタボリックシンドロームの原因となるしくみを説明しましょう。まず、肥満になると、脂肪組織や筋組織における糖の取り込み能力が低下してしまいます。このため、糖を代謝するときに必要なインスリンがうまくはたらかなくなるのです。さらに、肥満は筋肉や肝臓でのグリコーゲン合成酵素の活性も低下させます。結果的に、血糖値が高くなり、ますますインスリンのはたらきが阻害されてしまいます。インスリンがうまく機能しないと、糖尿病や高血圧、脂質異常症の危険が高まります。動脈硬化が促進され、冠動脈疾患にかかる可能性も出てきます。
ごく最近まで、人類は太古の昔からずっと飢餓の歴史に耐えてきました。おかげで、エネルギーが枯渇した場合の身体システムは発達しましたが、近代の飽食により、エネルギーがあふれた状態を解消する仕組みができていないのです。
肥満には大きく分けてふたつのタイプがあります。女性に多い洋ナシ型と、男性に多いタル型です。洋ナシ型は、おしりや下腹部など皮下に脂肪がつきますが、タル型では、内臓周りに脂肪が蓄積されます。メタボリックシンドロームになりやすいのは後者のほうです。自分の危険度を知るには、体重やお腹の周りをチェックするとよいでしょう。
BMI (体格指数:body mass index)の算定方法
体重(kg) ÷ {身長(m)}2=25以上
腹囲=男性…85cm以上、女性…90cm以上
※日本肥満学会1999年ガイドラインによる
メタボリックシンドロームの原因は、高カロリー・高脂肪食の摂り過ぎと、運動不足に尽きます。日ごろから規則正しい食事と適切なカロリー摂取を心がけ、こまめに体を動かすようにしたいもの。外食やファーストフードはほどほどに、できれば出勤前にジョギングするなどして、肥満防止に努めましょう。