疾患・特集

パソコンといい関係作ってる?VDT症候群にご用心

今やパソコンのない生活など考えられない時代。文明の利器の発達は、われわれの暮らしを大きく変えつつある。しかし、そんな便利さの影に思わぬ落とし穴があった!「VDT症候群」だ。VDTとは、Visual Display Terminal(コンピュータの表示機器)の略。ディスプレイを見つめ続けたために起こる眼精疲労や、長時間のパソコン作業による、体の痛みなどがおもな症状だ。ときに深刻な眼病、ストレス障害も引き起こすことがあるため、10年ほど前から、社会問題としてクローズアップされつつある。

VDT症候群 症状ランキング

なかでも多いのはどんな症状なのだろうか?下の図は、旧労働省が平成10年に実施した調査「技術革新と労働に関する実態調査」による結果データ(複数回答)。

1位は「目の疲れ・痛み」で、なんと全体の9割とダントツ。2位は「首、肩のこり・痛み」。これも約7割と相当数の人に見られる症状であることがわかる。「腕、手、指の疲れ・痛み」「腰の疲れ・痛み」「背中の疲れ・痛み」も、それぞれ2割前後と少なくない。

それでは、トップ3の症状を詳しく見てみることにしよう。あてはまるものがあれば要チェックだ!

ドライアイ

「目が乾いた感じがする」「光がまぶしい」と感じているなら、赤信号!ドライアイの可能性が高いといえる。パソコン作業中は、目を見開いた状態でディスプレイを凝視していることが多いもの。知らず知らずのうちに、まばたきの回数も減ってしまう。そのため、目の表面を覆っている涙の量が減り、乾いた状態に。眼球に傷がつきやすくなったり、感染症にかかりがちになってしまう。さらに、ディスプレイの人工光や反射光のために、瞳孔は収縮しっぱなし。眼精疲労によるぼやけ感、視力低下が起こりやすくなる。

キーボードを叩き続けたり、長時間、同じ姿勢をとっていると筋肉疲労が起こる。血行も悪化し、首から肩にかけ痛みやこりが頻発。とくに腕を宙に浮かせたり、前かがみになっていると、頚椎や首の筋肉に痛みが生じやすい。極端な目の疲労から、これらのこり感に発展してしまうこともある。

頚肩腕症候群

首や肩が凝ると、次第に腕にも痛みが広がるように。「だるい」「しびれ感がある」といったうちはまだよいが、ほうっておくと耐え難い激痛に悩まされるように…。このようなパソコン作業による、首や肩、腕の疲れ・痛みを「頚肩腕(けいけんわん)症候群」と呼んでいる。
また、長時間、入力作業をしていると「腱鞘炎(けんしょうえん)」という手指の炎症に発展することも!筋肉と骨をつないでいる腱とそれを包む腱鞘がこすれ、炎症を起こしてしまうのだ。ひどくなると、手首の親指側や指の付け根などに激痛がはしったり、曲げた指を伸ばせなくなることも。

心の病にもつながる!?

「たかが疲れ目くらい」「肩こりなんてよくあること」などと放置しておくと、頭痛や睡眠障害、食欲不振、過食、生理不順、不安感、抑うつ状態などさまざまなストレス症状を招くこともある。ときには心の病「テクノストレス」を引き起こす場合も。

とくにパソコンにしがみついているうちに、イライラが募り、うまく対人関係が結べなくなる「テクノ依存症」は深刻。体のトラブルは、心の不調のサインでもある。気をつけよう!

VDT症候群を防ぐパソコン環境と姿勢

それでは、VDT症候群を防ぐためにはどうしたらよいのだろう?ポイントは長時間のパソコン作業を避けることと、作業環境を整えること。さっそく自分の作業スタイルを見直してみよう。

VDT症候群を防ぐパソコン環境と姿勢

  • 1時間作業したら10~15分休憩をとるようにする。その際、体を軽く動かしたり、遠くを眺めるなど、リフレッシュを。
  • ●ディスプレイの明るさは室内と同じくらいに調整する。位置は目よりやや下の位置に。作業のしにくい、小さなサイズはタブー。
  • ●キーボードを置くデスクは奥行きのあるものを。作業時に腕が浮くようなものを選ばない。
  • ●椅子にも配慮を。深く腰かけられ、背もたれ部分が十分なものがよい。高さは、足裏全体が床につくくらいがベスト。
  • ●意識的にまばたきをしよう。

このほかマウスやソフトウェア、キーボード、テンキー入力機器なども、作業しやすいように整えることが大切だ。

パソコンはよきパートナー

VDT症候群は、パソコン中心のライフスタイルが引き起こす生活習慣病のようなもの。さらに突き詰めれば、仕事至上主義や人間関係の希薄さがそもそもの原因、ともいえる。「もしかして、VDT症候群?」と思ったあなたは、一度生活そのものを見直してみよう。

公開日:2004年7月5日